Fly Fishing Shop
Expert Advice and TOP-of-the-Line Gear Hermit フライフィッシングの世界へようこそ    TOP  
トップバー
こんなお店ですはじめの一歩フライの雑学Customers Report耳寄りな話イベント通販方法過去ログ
タックル買い取りTying TipsLinkイチローの独り言リペア&アフター世捨て丸航海日誌MailMap
 

 

腹部の赤い色が美しいゴールデントラウト
岩場を大きなバックパックを担いで登ります

大自然の証

黄金色のトラウト

プールに2匹の魚が見えます
ムースが挨拶きました

■ 恋の行方はゴールデントラウト

 今年の冬は東京でも大雪だそうですが、ここボーズマンも先週華氏−20度以下に冷え込み日中も気温が上がらずずいぶん寒い思いをしました。ちなみにウエストイエローストーンのブルーリボンフライズのニューズレターによると華氏−55度まで下がったとか。。。ウエストイエローストーンにいたころはそこまで下がらなくてもいつも華氏−20度ぐらいは当たり前で背丈の3倍はあろう雪に囲まれていたし、生まれ育った富山も雪国でしたから、ここ2,3年ボーズマンのマイルドな冬は冬の厳しさから心も体をも甘やかしてしまいました。

 SIMMS社に働く人は今では100人を超え大所帯になっていますが、前にも書いたようにみんながみんなフライフィッシングをするというわけではありません。特にモンタナ生まれでモンタナ育ちという人は、ハンティングやキャンプの合間に釣りを楽しむといった感じで「熱狂的フライフィッシング信者」ではないような雰囲気がします。むしろ「上から下までばっちり決まったフライフィッシャー」に出身をきくと、たいがい大都市のある他州だったりすることがよくあります。確かに富山もフライフィッシングを楽しめる川がたくさんありますが、川では地元ナンバーの車よりも他県ナンバーの車を多くみますし、だいたい富山にはフライ専門のショップがないのですから。

 私の部署からの発送を世話をしてくれているタリアさんもその一人。モンタナ生まれのモンタナ育ち。苗字も彼女の町の代表的な苗字で生粋のモンタナリアンです。まだ20台半ばでモンタナの女の子らしく、「明日のデートはロデオを見に行くの」とかバイクにまたがってちょっとレッドネック系だったりとか、フライフィッシングなど目もくれない様子でした。ところがある日突然、私にロッドを選んでほしいと相談にきました。いったい何事?? と聞くと新しいボーイフレンドがフライフィッシャーマンだそうで。。。まあよくある話だと笑いながら中古でいい状態のウィンストンのジョアンウルフ フェイバリットがあったのでそれを薦めました。むかしSIMMS社が女性用のベストでジョアンウルフさんデザインのモデルがあったことや偉大なフライフィッシャーのリーウルフさんの奥さんで女性ながらトーナメントキャスターとして有名だということ、日本でキャスティングをジョアンウルフさんから教わったことなど私がその竿の考案者ジョアンウルフさんにまつわる話をすると、彼女は納得したようにその竿を手に入れました。「これで彼と釣りにいける!!」とうれしそうな彼女をみているとこちらまでうれしくなります。先日「休憩室の掲示板に釣りシーンの写真を掲示してください」とメールが来て、早速翌日見てみると、美しいゴールデントラウトの写真が張ってありました。「わー!!ゴールデントラウトだ。いったい誰の写真??」と大騒ぎする私に、「タリアさんだよ。彼女も写っているでしょ」とみんなが教えてくれました。もう一人前のフライフィッシャーのいでたちのタリアさんが私の夢の魚であるゴールデントラウトを持ってニコっと笑った写真も張ってあったのです。

 ゴールデントラウトはカリフォルニアのSouth Fork Kern RiverやGolden troutcreek周辺がオリジナルで、真っ赤な腹部を黄金色に輝く体が印象的な美しい鱒です。大きさは15cmから30cmぐらいだそうですから、日本のやまめ岩魚サイズなのでしょうか。以前佐藤成史さんがフライフィッシャー誌にモンタナのギャラティンレンジにあるトラウトレイクにすむゴールデントラウトの話をお書きになっていますが、それを読んでから一度は釣ってみたい夢の魚になっています。トラウトレイクは、ボーズマンから1時間ほどのギャラティン川沿いの山間部にあるのですが、車止めからずいぶん歩かなければならないのとグリズリーベアが生息する場所でもあるのでなかなか行く機会に恵まれません。もちろんゴールデントラウトはモンタナのネイティブではなく、いつのころかだれかがカリフォルニアのゴールデントラウトを放流した子孫です。ちなみに虹鱒もカリフォルニアシエラネバダがオリジナルですから、もしかしたら虹鱒がロッキーに放たれたころと同時期にゴールデントラウトはやってきたのかもしれません。モンタナのネイティブではないので本来ならモンタナでは存在をゆるされないゴールデントラウトですが、人がなかなかいけない山上湖でひっそりと生きる小さなトラウトはレッドロックレフジーなどに生きるグレーリングやカットスロートと同じようにいとしい気持ちにさせられます。

 あと何度の夏釣りができるのだろうと考えると、自分の中でやり残したことや自分の釣りの目的が見えてくるようになりました。「パーミットやターポンを釣る」、「スティールヘッドを釣る」など人によって目的は異なると思いますが、私はトラウトフライフィッシャーとして美しい鱒を釣るというのが自分の最後の目的だと自覚しています。モンタナのブルトラウト 、カリフォルニアのゴールデントラウトと挑戦したいのですが、まとまった時間とお金そして運といった現実がなかなか夢をかなえさせてくれません。そんな私の夢のひとつををあっさりとかなえてしまったタリアさん。彼女の話によると、釣ったのはギャラティンレンジにあるトラウトレイクではなく、モンタナ南東部のワイオミングとの境界から入ったワイオミングにある山上湖。滝を登り岩場を越え数日間テント生活をしながらゴールデントラウトのすむ湖やクリークで釣りをしたそうで、ときおりムースがテント近くに現れたり、プールにはゴールデントラウトが泳いでいるのが見えたりととても楽しい数日間だったといっていました。「あなたもいけるわよ。15マイルくらい平気よ。今度地図をかいてあげるから」といってくれたのでそれを夫に話すと、「君が彼女ぐらい若かったらいけるかも。それにしても恋の力は偉大だね。」とあっさりといわれ妙に納得してしまう私でした。

 モンタナ、ワイオミング、アイダホには車ではいけない釣り場がたくさんありますが、なんといっても熊やマウンテンライオンなど生息地ですし、3000m級の高地でもありますので天候や地形の厳しいところです。バックカントリーに興味がある方もいらっしゃるとは思いますがそういう方はインターネットや本だけの情報だけではなくぜひ地元の経験豊かなガイドやアウトフィッターを利用してください。老婆心ながら。。。