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フライフィッシングの雑誌に載った イエローラブの子犬
フォート ベントンを流れるミズーリー リバー

忠犬「シェップ」のお墓

忠犬「シェップ」と「グランドユニオンホテル」

ミズーリーリバーのフィッシングスタイル
小さなブラウンが釣れました
我が家の犬は釣りより水泳が好きです
 
 
 
 
 

■ モンタナの忠犬 
  ハチ公「シェップ」とミズーリーリバー

 モンタナの忠犬ハチ公「シェップ」とミズーリーリバー2015年も残すところあとわずか。今年はエルニーニョ現象のせいでしょうか、寒くて雪もふっているのですが今のところ暖冬気味。雪がないのはとてもありがたいのですが、来年の夏のことを考えるととても心配になってきます。SIMMS社では2016年春夏ものの出荷で大忙しです。もう日本にも商品が届いていると聞いていますが、ハット、パック、シャツなどは新作が増え色合いも鮮やかなものが多くなったせいか、倉庫の中も外の冬景色をよそに明るくなった感じがします。

 日本でもペットブームだとは思いますが、ここモンタナはハンティングや農業牧畜が盛んなせいでしょうか、多くの家が犬を飼っています。私の家の周りも新興住宅街にもかかわらず、犬を連れて散歩する人でにぎわっていますし、ボーズマンのあちこちには無料で犬の運動不足の解消のための広大な「ドッグパーク」があって休日には多くの犬たちが駆け回っています。今年はじめアメリカで人気のあるフライフィッシングの雑誌「DRAKE」の表紙を飾ったのはドリフトボートの先端に立って魚のライズをご主人様のために探すイエローラブの子犬バックウィート君でした。この反響は大きく、この表紙を見て「やっぱりフライフィッシング犬はラブラドールだ」とラブラドールの子犬を飼った人も多いとか。我が家の愛犬も小さなころからマジソンやヘンリーズフォークなど一緒に釣りにいっていますが、彼の興味は水泳とハンティングなのでボートでじっとしていられないのが難。すぐ川に飛び込んで釣りの邪魔ばかりで困ったものです。とはいえ犬はモンタナの生活やフライフィッシングシーンには欠かせない一員になっています。

 以前ひまに任せてインターネットを見ていたところ、カリフォルニアに住む日本人の方のだんなさんがどうもモンタナの北にあるモンタナ発祥の地「フォートベントン」という町に縁のある方のようで、その町のことを書いたブログを発見しました。モンタナに住みながら聞いたこともない町のお話。そこには心がきゅんとなるようなモンタナの忠犬ハチ公「シェップ」のお話が書かれていて、犬好きな私はその町にいってモンタナにも日本の渋谷のハチ公のような忠犬「シェップ」の足跡を訪ねてみたいとかねがね思っていました。「フォート ベントン」はモンタナの北、空軍基地のあるグレートフォールズから東に1時間ほどはしったところにある小さな町です。モンタナに住む何人かの友達に聞いても、「名前は聞いたことはあるけれどいったことはない」とか「どこにあるの?」という人も多いのです。

 しかしこまちはモンタナ発祥の地と呼ばれ、モンタナの歴史上重要な意味を持っています。この町にはフライフィッシングをする皆さんよくご存知のミズーリーリバーが流れていますので、1800年半ばまだモンタナが州ではなくテリトリーと呼ばれていたころ、ミズーリーリバーを汽船で下ってモンタナやサウスダコタやノースダコタで狩猟された毛皮をアメリカ南部に運ぶ交易の町として発展したそうです。いまでも町の一角にその当時の毛皮の交易所を中心に再現された町の様子が再現されています。

 また太平洋に流れ込むコロンビアリバーの近くにあるワシントン州のワラワラという町とメキシコ湾に流れ込むミズーリーリバーのたもとのまちであるこのフォートベントンを結ぶムランロードという道が完成し、アメリカの物流の拠点となっただけではなく、当時アイダホで見つかった金鉱へ向う人たちもこの道を利用したので、フォートベントンは当時アメリカ全土からの交通の要になって大賑わいだったようです。ミズーリーリバーは、ご存知のように「マジソン リバー」「ギャラティン リバー」「ジェフアソン リバー」がスリーフォークスというボーズマンから30マイルほど離れた町で合流し、ミズーリーリバーとして流れ出します。途中ノースダコタでイエローストーンリバーとも合流し、アメリカ大陸を縦断するかのように流れ最終的にはメキシコ湾に流れ込む大河です。イエローストーン国立公園内のマジソンリバーの源流点をしっているだけに、このフォートベントンまでの長い道のり、そしてこの先どれだけの風景の中をこの川は流れてメキシコ湾に到達するのか想像もできないほどの長い長い川のたびです。

 このフォートベントンあたりでは モンタナ州のネイティブフィッシュで絶滅が危惧されている「サーガー」という魚が生息するそうで、この魚を釣った際の特別なレギュレーションもあると聞いています。毛皮の交易もなくなり、交通の主流がトラックになり高速道路から離れたこの町は、他の町同様当時の繁栄は町に残されたレンガ造りの重厚な「グランドユニオン ホテル」ぐらいにしかみることはできませんでした。昔全米から多くのお客さんが泊まったと思われるこのホテルも以前は放置されたままだったそうですが、モンタナ在住のご夫婦が買い取り改装したそうで、内装はすばらしく、レストランの食事もなかなのできばえ。古きよきアメリカを感じさせるホテルです。

 そんな町のはずれに以前はアメリカ東西を結ぶのににぎわったであろうノーザンパシフィック鉄道の駅舎があり、その駅舎を見下ろす丘の上にモンタナの忠犬ハチ公「シェップ」のお墓がありました。「シェップ」はこの町の近くに住む羊飼いに飼われていたそうですが、その羊飼いが亡くなり、棺は彼の故郷のアメリカ東部の町に向うためにフォートベントンの駅から列車に乗せられたそうです。それをみた「シェップ」はその日以来5年間も毎日毎日駅に現れご主人が帰ってくるのを待っていたのです。モンタナの北の町には氷点下を超える日も吹雪の日もあります。「シェップ」はどんな思いでご主人を待ち続けたのかと思うと胸が痛みます。年老いた「シェップ」は耳が聞こえなくなってきたようで駅に近づいてきた列車に気づかず、逃げようとしたときに足を滑らしてそのまま列車にはねられて亡くなってしまったそうです。ご主人が5年前運ばれていった列車にはねられた「シェップ」は、きっとやっと天国でご主人に会うことができたにちがいありません。そしていまも丘の上からもう使われなくなった駅舎とミズーリーリバーそしてご主人と過ごしたフォートベントンの町を見守っています。町の中心「グランド ユニオンホテル」の横にもこの「シェップ」の銅像があり、「シェップ」は町の繁栄を支えたミズーリーリバーをじっと見つめています。なかなかそこから離れることのできずにその銅像と川を見ている私になんだか「シェップ」が「早く川にいいって釣りをしなよ、ベイティスがハッチしているかもしれないぜ」といっているような気がしました。毎日川をみている「シェップ」の言葉に間違いはないと思った私は川に向いました。

 ミズーリーリバーのフライフィッシングの拠点、クレッグには10月も終わりだというのにたくさんの釣り人が集まっていました。ガイドトリップも多いようで、多くのボートが下っていました。なんとかだれもいない場所を見つけ、川に入ってみると「シェップ」がいったようにベイティスがたくさんハッチしています。この一年、多くの人に釣られた魚たちはライズを繰り返すもののなかなか釣れてくれません。やっとの思いでかけた魚は小さなブラウンでした。近年のミズーリーリバーは釣り人が極端に増え、特にクレッグやウルフクリーク周辺の込みようはびっくりするばかりです。昔は鉄の車が一台しか通れない橋は今は立派な橋になり、クレッグの町もフライショップも増えて少しだけ大きくなったような気がします。少し下流のカスケードあたりまで足を伸ばすと少しは釣り人の混雑が解消されるようで、その日もカスケード近くのバンク際で大きなブラウンを見ることができました。そのあたりは川幅が大きくなるのでウェーディングできる場所もすくなくなりますので、ガイドを雇ってボートで下るのが効率がよいように思います。

 ミズーリーリバーで釣りをする機会や思い出話をするとき、そして渋谷でハチ公の銅像を見られたらぜひモンタナの忠犬「シェップ」のことも思い出してください。きっとシェップとハチ公は天国でお互いの話をしながら、一緒に遊んでいるに違いないのですから。

 追伸 2015年日本に一時帰国した夫と私でしたが、改めて日本の川と魚そして日本の人たちのすばらしさ、暖かさを感じずにはいられませんでした。フライフィッシングは国や言葉、民族をも超え、人の心を結ぶことができます。来年もすばらしい一年になりますよう、遠いロッキー山脈からお祈りしております。