私たちの川 SAVE OUR STREAM

2017年8月21日更新

  はじめに大雨などのよる災害等でよきせぬ自然災害で亡くなられた方々、被害にあわれた方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、すこしでも早くみなさんがお元気になられることを願ってやみません。

 今年はだらだらと雪が5月まで続き早く夏が来ないかなあと思っていたら、6月の後半から華氏90度(摂氏35度)を超える暑い日々がずっと続いています。雨がぜんぜん降らないので大地は乾き、モンタナのあちこちで森林火災がおきています。また先日、モンタナ州のリンカーン(ミズーラの北東部)でマグニチュード5.8の地震があり、私も夜中に大きなゆれを感じて飛び起きました。ご存知のようにウエストイエローストーンの近くにある クエイク レイクというのは 1957年にマグニチュード7.2という大きな地震が起って山が崩れて土砂がマジソン川をせき止めたためにできた湖ですから、この辺りも地震と無縁ではありません。イエローストーンが近いので体に感じない地震は頻繁に起こっているそうですが、体に感じる地震はほとんど経験したことがなく備えがまったくしていなかったのは反省でした。

 蛇足ですが、8月21日は完全な皆既日食がヘンリーズフォーク周辺で見られるそうでヘンリーズフォーク周辺では世界中から多くの人たちが集まってくるようです。宿もレンタルカーも完売だそうです。

モンタナ通信

イエローストーンリバーの有名なエミグレントのフィッシングアクセス

  今年3月にトラウトアンリミテッドの集まりで、「Greater Yellowstone Coalition」というNPO活動をなさっている方々からお話を聞く機会がありました。このグループは、1983年以来イエローストーン国立公園とその周辺の自然保護に尽力をつくしている人たちの集まりです。イエローストーン国立公園の北口ガーディナーとスプリングクリークで有名なリビングストンのちょうど中間あたりにエミグレントという小さな集落があり、その街の奥には有名な「チコホットスプリング」という温泉施設があります。この温泉施設は昔は温泉の効果を利用した病院だったのですが、今はホテルと温水プールでにぎわっていて、特にレストランはこのあたりでも指折りなので、予約が必要なくらい人気です。今そのチコ ホットスプリングの前をまっすぐいった山の中ちょうどイエローストーン国立公園との境あたりにに金鉱が見つかり、その開発をめぐって大きな論争が起こっています。

モンタナ通信

イエローストーンリバー SOS T-シャツ

 近代の鉱山技術は目覚しく発展していて、昔日本で鉱山が関係して起こったような公害への対策は十分にされて安全性は高いはずですし、鉱山の営業は地域に仕事と活性をもたらすのだと思います。しかしイエローストーン国立公園の周辺はまだまだ手付かずの貴重な大自然が残り、グリズリーベアーや狼、マウンテンライオンなど多くの野生動物が静かに暮らしています。もし鉱山が開発されることになればその鉱山への道路や電力や水の供給のための工事が行われ、人が行き来するようになります。

 私の住んでいるボーズマンの町もここ2,3年で住宅の開発がどんどん進み交通量が増えて、近所にいたあっというまに白頭鷲やうずらやきじ、シカたちもいなくなってしまいました。資材を運ぶトラックが行き来すれば、金鉱の近くに住むグリズリーベアの親子はどこにいけばよいのでしょう?大きな威厳のある角をもったエルクのオスはどうなるのでしょう?そして森林が開発されれば、冬の間に積もった雪がとけた水を地面が保水する力を失い、私たちの誇るべきイエローストーンリバーへの水源はどうなるのでしょう?この鉱山の開発は世界初の国立公園を制定したときの理念が根ざしたモンタナの人々に大きな衝撃と不安を与え、「Greater Yellowstone Coalition」の人たちがその開発の是非を問いつづけているそうです。同じように モンタナ州のスミス リバーやアラスカ州のブリスタルベイに注ぎ込む川の上流部でも大規模な鉱山の開発が計画されており、その大自然への影響を多くの人々特にフライフィッシャーマンは懸念しています。

モンタナ通信

SIMMSからもヘンリーズフォーク ファンデーションにへ応援にいきました。

 日本のフライフィッシャーにおなじみのアイダホ州ヘンリーズフォークもヘンリーズフォーク ファンデーション(HFF)がハリマンステート パークやヘンリーズフォークの魚と川そして自然をまもりいつまでも釣りをたのしもうと、毎年6月半ば大きなパーティーをヘンリーズフォークのお立ち台で開き、オークションなど巨額の寄付金を集めて活動をしています。寄付は個人だけではなく、大企業も大いに参加するので相当のお金が集まり、そのお金で魚類学の専門家を雇いリーサーチ、またフィッシングアクセスの修繕などに使われます。

モンタナ通信

ヘンリーズフォーク SOS T-シャツ

 最近では外来種であるブラウントラウトやレイクトラウトが日本でも釣れることを耳にしました。特にレイクトラウトはイエローストーン国立公園ではネイティブフィッシュであるイエローストーンカットスロートを壊滅的な危機に陥らせそうにになる位の勢いの魚種で、いま大掛かりな駆除を多額のお金をかけて行っています。またイエローストーン国立公園の北東部のラマーリバーやスルークリークでは、イエローストーンカットスロートを守るために、虹鱒やブラウントラウト、ブルックトラウトが釣れた場合はリリースしてはいけないことになっています。ブラウントラウトも繁殖力が強いので日本での在来種への影響が心配です。

モンタナ通信

大きなブラウントラウトも実はアメリカでも外来種

「For the benefit and enjoyment of the people」

 イエローストーン国立公園の北口にあるルーズベルトアーチに書かれた言葉を見るたびに大自然は誰のものでもなく、みんなで共有しそして未来に受け継いでいかねばならないと心に刻みます。日本でも福井県の九頭竜川で桜鱒に関するコンサーベーション活動をなさっている方また北海道ではイトウを守るために活動なさっている方たちがいらっしゃるとお聞きしました。いつまでも釣りを楽しむために、すばらしい大自然と川と魚が守る活動をなさっている方々がいることをうれしく思うとともに、少しでも釣り人がそういった活動に興味を持ってくださることを願っております。 だれの川でもない、私たちの川なのですから。

モンタナ通信

イエローストーン国立公園の年次報告会で提示されたスルークリークでのハイブリッド種の魚が釣れたデータ

モンタナ通信

イエローストーン国立公園の年次報告会で報告されたイエローストーンカットスロートの生息推移データ

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JR水道橋西口にあるフライフィッシングの専門店です。これからフライフィシングを楽しんでみたい方、釣り場の選択に困っている方、ぜひお店へ遊びにきてください。