イエローストーンの奥座敷

2018年10月15日更新

 はじめに、今年も日本では自然災害が多く、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げ、一日も早くお元気になられることをお祈りしてやみません。

 この冬のモンタナは記録的な大雪に加え、昨年9月から5月初めまで雪が降り続けたものですから、どこの川も6月下旬から7月初めまで釣りになりませんでした。

 いつものことながら夏の楽しい時間はあっという間に過ぎて、もうこのイエローストーン周辺も雪景色に変わりました。このロッキー山脈周辺はアスペンの黄葉が主なのですが、それに交じって小さな木々の赤やオレンジの紅葉は日本の秋を思い出させてくれます。

モンタナ通信

アスペインの紅葉

 動物たちも冬に向けての準備に大忙しのようです。皆さんよくご存じのヘンリーズフォークWOOD ROAD16には ムースの家族が現れました。子連れのお母さんムースは私の家の周りにもいるのですが、お父さんお母さん そして双子のムースというのは珍しいです。厳冬の前の小春日和に最後のお出かけをしているようでほのぼのとした気持ちになりました。また釣りにいって車を止めたところに在った木にはクマさんの木登りの跡がありました。こんな風に動物たちが生き生きとすごしていけるのも、イエローストーン国立公園の存在があってこそなのです。人間の手による開発を避け、自然のありのままを残すというのは現代社会においては大変難しいことですが、アメリカの国立公園制度、BLM(Bureau of Land Management)制度などの自然保護のシステムにより、今も多くの大自然が守られています。

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ムースの家族たち

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クマさんの木登り跡

 「先月の終わりに私も短い秋を楽しもうとアイダホ州側のイエローストーン国立公園にあるケーブフォールズに釣りに行きました。ここは観光客でにぎわうメインのコースからは外れていて、ウエストイエローストーンなどにある入場券を確認するゲートもありませんし、行きついてもその先は行き止まりなのでイエローストーン国立公園内といってもひっそりとしてイエローストーンの奥座敷といった感じのところです。ただしここは国立公園内ですから、公園内のフィッシングライセンスが必要ですし、今年からはフェルトソールは禁止なので、バイブラムソールのウェーディングシューズ、バーブレスフックといった公園内のレギュレーションを守らなければなりません。バックパックでイエローストーンをハイキングするには少し年を取りすぎた感がしますので、車でも行けるけれど人の少ないイエローストーン国立公園の大自然を満喫できる場所でもあります。途中 森林局が管理する舗装されていない道を走るのですが、放牧された牛がときどき道を歩いていてクマかなあとちょっとどっきりすることもあります。ケーブフォールズはヘンリーズフォークに合流してスネイクリバーとなるフォールリバーの流れが岩を削り作り上げた洞窟と滝の素晴らしい景観があったのですが、数年前に洞窟が崩れてしまい、今は滝のみとなっています。昔はよくその洞窟の中から滝の近くまでいって釣りをしたものですが、残念ながらまだ岩壁が崩落する恐れがあるので洞窟のあった周辺は立ち入り禁止になっています。

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エローストーン国立公園にあるケーブフォールズ

 今年は秋だというのにまだ水も多く、なかなか滝のそばまでウェーディングするのは難しく魚が釣れるかなあと心配していましたが、この場所の定番のフライを投げると深い水の中から小さなニジマスやブルックトラウト、カットスロートが飛びだしてきました。ブルックトラウトはアメリカ東部原産で、本来ならこのロッキー山脈には生息していないはずなのですが遠い昔に持ち込んだのでしょう。このあたりの小さなクリークやヘンリーズレイクなどでも釣れますし、場所によってはキープしてもよい魚なので食べるとおいしいよと誰かがいっていましたが、私はきれいな体色を持った小さなブルックがあまりにもかわいくて殺す気になどなれません。

 最近モンタナ州ボーズマンの人口の急増で、近場のマジソン川やギャラティン川、イエローストーン川にもフライフィッシャーが溢れかえり、釣りに行くたびに魚が死んでいるのを目にするようになりました。この前も若いフィッシングガイドさんがクライアントが釣った魚が小さくて、乱暴に針を外して川に投げ捨てるかのようにリリースをしていたのを見ました。フライフィッシングはもっと魚や自然に優しい釣りではなかったのかと怒りを通り越して悲しい気持ちになります。

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色彩豊かなブルックトラウト

 でも観光客が少なくなった静かなイエローストーン国立公園内で釣りをすると、自然が守られているとこんなにも楽しく釣りができるのだと改めて感じることができます。

 もう一つ秋のイエローストーン国立公園の釣りといえば ヘプゲン レイクから産卵に上がってくる マジソン川です。特にウエストイエローストーンの公園ゲートから入ってすぐのところにマジソン川につながるトレイルがあります。冬場私はよくクロスカントリースキーをする場所なのですが、ずっとその砂利道を行くと、有名なバーンズプールに到着します。この釣りはスティールヘッドの釣りとまったく同じで手がかじかむような寒い日、夜明けとともに釣り始め、シーズンに一匹大きな魚がつれればトロフィーものといった釣りで私はもう挑戦する体力がなくなってしまいましたが、それでも毎日のようにそこに通って大物ブラウンを狙っている人たちがいます。私たちの大親友もその一人で彼はマサチューセッツにある世界的にも有名な大学の学者さんでしたが、引退して毎日ガタガタの砂利道を家を売ったお金でかった長年の夢、新車のポルシェでバーンズプールにやってきます。素敵な車を自慢することもなく、自分のキャリヤを鼻にかけることもなく、古いウェーダーでねんきのはいったロッドとリール、せっかくのポルシェも砂埃、泥だらけで汚れてしまっていますが、魚を釣るための情熱と自然に対する謙虚さにはこれぞフライフィッシングエキスパートといった威厳を感じずにはいられません。彼をみていると、彼もイエローストーン国立公園の一部なのかもしれないと思ってしまいます。

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バーンズプール

 5月終わりのファイヤーフォール、6月サーモンフライのマジソン川、7月のギャラティン川、8月下旬のラマーリバーやスルークリーク、そして9月10月のマジソン川やファイヤーフォール。フライロッドを手にした人ならいつか一度はイエローストーン国立公園を訪れて、フライフィッシングが意味するものを探しに来てください。答えは大自然が教えてくれるはずです。

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JR水道橋西口にあるフライフィッシングの専門店です。これからフライフィシングを楽しんでみたい方、釣り場の選択に困っている方、ぜひお店へ遊びにきてください。