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乾燥した天候の記事
ワイルドフラワーが咲き始めました
ビュートのアイリッシュ パブ
ビュートにある銅山王の家
クラーク フォークリバーの上流部
12から16インチのブラウンが釣れます
釣りの特別な決まりがあります

■ 仲間とともに

 今回の冬は本当に雪が少なく、ぐずついた天気が多いはずの3月4月に晴れた暑い日が続いてどの河川も平年以下のスノーパック。おまけに5月前半は寒がりの私でさえ半そでのTシャツですごすくらい暑い日が続きました。おかげで私の家の芝生はなかなか緑の新芽が出ず、カラカラ状態です。ボーズマンのローカル紙にも乾燥した気候のことが書かれていました。そんな厳しい条件でも、ワイルドフラワーは咲く時期を忘れていませんでした。ギャラティンリバー沿いをハイキングしていると、かわいらしいお花が咲き乱れ、夏が来たことを教えてくれます。

  もうひとつ 夏が近づいていることを教えてくれるのは、有名なマザーズデイカディスのハッチです。イエローストーンリバー下流部やマジソンリバー下流部では母の日前後にHydorosyche を中心にたくさんのカディスのハッチが見られます。それまでベイティスやミッジといった小型の水生昆虫からマーチブラウンのような大きめのメイフライがハッチし始めるとそろそろドライフライの釣りの用意を始めなければなりません。

 マザーズデイカディスは私のフライボックスがドライフライオンリーになる合図でもあります。2年前は雪が多く寒い日がずっと続いて、母の日あたりにやっとベイティスのハッチだったのに、今年はマイルドな冬だったせいか幻想的なカディスのハッチがあちこちでみられました。

 家から30分も車を走らせるとローア マジソンにいくことができるので、ときどき仕事が終わると犬の散歩がてら釣りに行くことがあります。その日も夕方川を見に行くとたくさんのカディスがハッチして、魚のライズがみられました。ウェーディングも簡単なくらい水位が低く、少したち込んで釣っていると、上流から格好はまるでエキスパートの2人がボートでやってきて私の横にボートを寄せたのです。ボートのアウトフィッターライセンスは見当たりませんし、本当のガイドさんたちは向こう岸の深みでボートをこいでいくので彼らは全くの一般釣り人。カディスがハッチして、ライズしている魚ばかりなのに大きなピンクのインジケーターをつけてニンフの釣りをしようとするのですから、格好だけは一人前のアーバンアングラーズだということは一目瞭然でした。なかなか釣れない彼らの横で私はバシバシ釣っていると、さすがに彼らはバツが悪そうにボートに漕いでいってしまいました。

 最近のボーズマンを含むギャラティン郡の人口は9万人を超えたそうです。私がこちらに越してきたときは3万人だったのですから、3倍にも人口が膨れ上がっています。特にモンタナ州はセールスタックスがないのと土地が都会から比べると安いので、株や投資でお金を持っている人や早期の退職者などが他州から移住してきて大きな家を建てて乗馬やスキーそしてフライフィッシングなどにトライし始めるのはいいのですが、どうも勘違いが多いというか。。。モンタナで生まれ育って長年自然に親しんできた人たちとは何かが違うのです。そういう私だって都会どころか太平洋を越えてやってきたモンタナ移民なのでえらそうなことはいえませんが、釣りをしている人を見たらいくら自分が釣りたい場所でも立ち去って他の場所に移動する暗黙のルールは守っています。

  そんなことが最近多いのでボーズマン周辺で釣りをするのがなんだか気が進まないのです。とはいえ、マザーズデイカディスがハッチし、気持ちのよい天気が続くので、どこか静かに釣りができるところはないかしらと探しにインターステイト90を西に車を走らせました。今回見つけたのはクラーク フォークリバー。この川はモンタナ大学があるミズーラ周辺になると川幅の広い大きな川になるのですが、私が入ったのはそれよりずっと上流、クラーク フォークのヘッド ウオーター部です。インターステート90からもその流れは見えるのでアクセスはしやすいしウオーム スプリング周辺8マイルは牧場主さんが川へのアクセスを許可してくださってウェーディングのみの釣り。川幅は日本の渓流ぐらいで、一見パラダイスバレーのスプリングクリークのようです。

 着いてみると誰も釣りをしていませんし、いい感じのライズが見られたので早速着替えて釣りをしました。カディスが乱舞すると、急な流れの中からも魚がライズしています。バンク際のキャストが難しいところでは少し大きめのブラウンがライズをしているので、ここは勝負どころ。ティペットを細くして、木にフライを引っ掛けないようにバンクぎりぎりにキャストする。きっと日本のフライフィッシャーマンならそういう釣りはお得意だと思うのです。ドラッグがかかりなかなか釣れなかったのですが、なんとかかんとか釣り上げてほっとしていると、また同じ場所で違う魚がライズし始めました。それほどカディスのハッチはすばらしく、長い冬を越してきた魚たちは久々のご馳走に興奮状態のようです。

 下流部から子供たちの声が聞こえ、われに返った私はもう十分魚も釣ったことだしと釣りも終了。車に戻ってみると地元の子供たちが「魚は釣れた??」と親しげに聞いてきます。「ここで釣ってもいいかな?」と年長らしき男の子が聞くので、「もちろん。ここは君たちのホームグラウンドだからね。私のほうこそ釣らせてもらってありがとう。」というと男の子たちはきょとんとした顔をしながら、楽しそうにルアーを投げていました。モンタナスピリットを持った少年たちに会い、釣り以上に気持ちが和む一瞬でした。

  このクラーク フォーク リバー上流部は銅山のあるビュート以西を流れています。銅山というと昔国語の教科書で読んだ足尾銅山を思い出すのですが、やはりここも銅山の影響があるらしのです。そのせいか、それとも思い込みのせいでしょうか、つれたブラウンはなんとなく銅の緑青を思わせるような青みがあるような気がしました。写真にもその青は写っているはずもないのですが。。。

  帰り道、その銅山で栄えたビュートの町に寄ってみました。ビュートは今も銅が採掘されてモンタナで一番の収入資源のある町です。今では銅の採掘量も減っているのか、また若者が鉱山で危険なきつい仕事を避けるためでしょうか、町はかつてのような活気がないようですが、それでもボーズマンには見られないような重厚なレンガ造りのビルが立ち並んでします。またこの町はアイルランドからの移民が多く、アイリッシュの人たちの信仰しているセント パトリックをお祝いするセント パトリックデイには、町中緑の洋服を着た人で大賑わいになるそうです。私のウエストイエローストーンのお友達のマイクさんもビュート出身のアイルランド移民の子孫で、いつも「俺はビュータリアン!!」と自分の民族に誇りを持っていました。またこんなロッキー山脈の中にも当時中国からの移民がたくさん鉱山で働いていたそうで、そのなごりの中華料理やさんがあるそうです。どうやってこんな山の中に太平洋をわたって移り住んだのか興味があるところです。

  次の日曜もなんとなく青みがかった魚がみたくて同じ場所にいくと、今度は地元のおじいさんと犬がそこにいました。おじいさんは「ボーズマンからきたのかい?遠くからきたんだからここで釣りなよ、僕はもう少し先にいくから」というのです。私が「今日はドライブ。おじいさん、たくさん釣ってね!!」というとおじいさんは「気をつけて帰るんだよ。」と少しうれしそうな顔で犬と一緒に川に向って行きました。釣りよりもそんなモンタナスピリットを持つ人にまた会えたことがうれしいクラーク フォーク リバーでの出来事。そんな川を探しにまたロッドを片手にモンタナを駆け巡ろうと思います。