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ルビーハビッタトの活動報告と寄付されたバンブーロッド
かわいいウサギが出迎えてくれました
美しいルビーバレイ
コンサベーションの拠点になるキャビン
釣る場所を示す掲示板
ルビーリバーの黄金色の元気なブラウン

■ ルビーリバーとConservation

  今年のモンタナは暑い夏。といっても夕方になると激しいサンダーストームがやってきて乾いた大地を潤してくれるので、昨年のような山火事が今のところ少ないので助かります。アリゾナの山火事で19人もの消防士さんが亡くなりましたが、山火事というのは本当に恐ろしい自然災害のひとつでもあります。


 2012年から2013年の冬は降雪量が少なかったのでどこもかしこも水不足で、先日モンタナのフィッシュ ワイルドライフ アンド パークサービスはマジソン川下流部とビッグホール川上流部には釣り規制を出したのことですし、ミズーリー川は水温が高いので藻がたくさん発生してニンフの釣りなどできないくらいだそうで、トライコがすでにハッチしているとの話もききました。ヘンリーズフォークもダレ始めてきているようで、8月はどこもタフな釣りになりそうですから、お盆にこちらに釣行予定の方は地元のフライショップで情報収集をなさってください。


 日本でフライフィッシングを始めた私はやはり日本のような渓流でドライフライで釣るスタイルが好きです。以前はミズーリー川のような大きな川にボートで下りながら、大きな魚を狙うことにも夢中になりましたが、日本の花鳥風月の美意識が無作法な私の心にも根付いているようで魚のライズを探しながらテクテク歩いて周りのお花を見たり鳥のさえずりを聞いたり、その時々にハッチする水生昆虫を観察して魚とのやり取りを考えるのは楽しいものです。そんな話を友達のトラバススミスにすると、「うちの父ちゃんの土地の横の牧場がルビーリバーのConservationのために釣りができるらしいよ。ルビーバレイは静かで美しいところだからね。でも予約が必要らしいけど」
という情報をくれました。その後仕事が忙しくて気にはなりながらそこがどこなのか調べることを忘れていたら、たまたま日本から来た釣り友達が元ウィンストンのバンブーロッド製作者で現在スイートグラスロッドを運営なさっているグレン・ブランケットさんの紹介でそこにいってきたというのです。それでは私もということで早速連絡を取り、釣りに出かけました。


 ボーズマンからエニスを抜け、かつて金鉱で栄えたバージニアシティやネバダシティのゴーストタウンを越えると目の前にルビーバレイが広がります。ウインストン社で有名なツインブリッジに行く途中のエルダーという町でもかつて金鉱が見つかり、一攫千金を求めてたくさんの人が集まったようですが今はその跡形もみられません。しかしモンタナの中でも温暖な気候でルビーリバーが豊穣な土地を生み出してくれるおかげで金が取れなくなった今でも大きな牧場や農場が存在し、のんびりとしたサウスウエストのモンタナの風景を保っています。


 今回釣りに出かけたルビーハビッタトファンデーションの土地はウッドストンさん一家が経営するなんと11、000エーカーの牧場です。1エーカーというのは1224坪ですからどんなに広大か想像できると思います。このファンデーションの目的は川の保全や魚の保護のみの目的ではなく、利益追求型の大規模農場経営からルビーバレイの大地の本来のヘルシーさをいかに保ち、後世に残していくにはどうしたらいいか今後の農場経営のあり方を探るのが大きな目的のようです。
 そのためにはルビーバレイのエコシステムを健全な状態にして行く必要があり、ルビーリバーとその魚たちもその一環なのです。ですからそういう環境保護に理解してくれる釣り人に来て彼らの活動に賛同してほしいという趣旨があるようで、パラダイスバレーのスプリングクリークのように釣りにお金はかかりませんが、もしこの活動に賛同してくれるのであれば寄付をしてほしいのだそうです。


 こういった自然保護(Conservation)ファンデーションは全米各地にたくさんあります。イエローストーンファンデーション、ヘンリーズフォークファンデーション、マジソンリバーファンデーションなどなど日本のみなさんもお聞きになったことがあるものもあると思います。私は北アルプスの立山連峰のふもと富山に生まれ育ちましたが、自然の多い富山でさえこういった民間の自然保護への寄付金集めの大掛かりな活動はあまりなじみがありません。寄付といえば募金箱に100円玉を入れる程度のイメージしかないのが現状で、自然保護は行政が行うものという考えがあるような感じがします。アメリカのConservationの考えはたとえばヨセミテバレイのシエラクラブのように一般の人たちが声を上げ、行政に働きかけるのです。その活動に必要なお金を集めるために大企業や資産家にも賛同を求める積極性もあります。数年前イエローストーン国立公園のオールドフェイスフルのビジターセンターが完成しそこに日本の企業の寄付名もあり、誇らしげに思ったものです。


 日本の釣り場を守る、日本のネイティブの魚を守るといっても行政はなにもしてくれず何をどうしていいかわからず、結局外来魚を放流して自己満足をしていた私にはアメリカのConservation活動は本当に衝撃的なものです。現在私はトラウトアンドリミテッドの活動に参加させていただく機会が多くあり、またBlue
Ribbon Fliesのクレッグ&ジャッキーマシューズからもConservationの考え方の一端を学んだような気がします。今回のルビーハビッタトファンデーションの活動にはグレン ブランケットさんたちも特注のバンブーロッドをつくり、それを売ったお金を寄付なさっているようです。


 さて釣りのほうですが、この日はなんと11,000エーカーの土地に釣り人は私と夫の二人だけ。イギリスの釣り場のような川をいくつかのビートに分け、釣り人がクロスしないようになっています。マグネットで釣る場所を掲示板に置き、ルビーリバー本流を釣ることにしました。本流といってもルビーは川幅が広くなく、牧場の敷地を流れる緩やかなクリークのようですが、この日はイエローサリーやPMDなどがハッチしいたるところでライズが見られたので、ドライフライでたくさんいいブラウントラウトが釣れました。前回書いたクラークフォークのブラウンは青みがかかった色だと表現しましたが、今回のブラウンは金鉱の町を流れるルビーリバーのせいか、黄金色に輝いていました。


 いつまでも黄金色のブラウンが住める川の水質が保たれれば、このルビーバレイの土地も豊潤に保たれ、大地の恵みを私たち人間に授けてくれる。フライフィッシングは釣りだけが目的ではないということを実感した一日でした。