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モンタナにはたくさんのパブリックアクセスがあります
アラスカのフィッシングガイドCamille Egdorf

Pebble Mine開発に抗議するステッカー

Mimi 松田さんがTUに寄付してくれた絵

イエローストーン国立公園のフィッシャリーレポート
レイクトラウトの排除取り組みの報告冊子
Trout unlimitedに参加している企業のロゴ

■ 釣りをするための勇気と行動力

 日本は初夏だというのに、ここモンタナはまだ冬が去っていくのをためらうかのように肌寒い日々が続いています。先日マジソン川の中流域に釣りに出かけましたが、山々には新雪かと思われる雪が積もっていました。この冬のスノーパックはイエローストーンやビタールートでは平年の160%ギャラティンは140%、マジソン川流域では120%だそうで、1996年1997年のイエローストンリバーの大洪水のときとよく似ているそうで、どの川も雪代が引くのが大幅に遅れそうです。今年こちらに釣行(特に6月、7月)の方は川の水量を確認してください。

 とはいえ、先週家から30分のマジソン川下流部へいくとツバメがたくさん飛びはじめ、なにかが水面でハッチしているのがわかりました。ベイティスだといいなあと思いながら、川原に車を止めると、まるでピーターパンのティンカーベルのような可憐なベイティスが空一面、川面一面にハッチしていました。こんな風景はカディスやトライコのハッチでみたことがあるのですが、こんなに大量のベイティスのハッチをマジソン川下流でみるのははじめてです。そしてまるでヘンリーズフォークを思わせるような三角頭の魚のシッピングライズ。4月半ばになってもベイティスがまったくハッチしていなかったので、突然のハッチに竿を出すのもわすれてしまいました。

 さて モンタナはいわずとしれた世界でも有数のトラウトフィッシングのメッカです。でもなぜモンタナなのか?もちろんロッキー山脈に位置し、手付かずの大自然がたくさんあることが大きな理由ですけれど、もうひとつのモンタナがトラウトフィッシングで有名な理由は「川に誰でも使えるパブリックアクセスができる場所がたくさん整備されている」ことです。こちらに釣行された方はご存知だと思いますが、初めて来た人でもわかるように釣りができるポイントの表示がハイウエイ沿いにたくさんあります。たとえば$3ブリッジ。ウエストイエローストーンからエニス方向にHW287を走れば誰でもその表示を目にすることができます。そしてフィッシングライセンスをもっていれば誰でもそこで釣りができるのです。駐車場もトイレも完備され、お昼ご飯を取るためのピクニックテーブルさえ完備してあります。キャンプもできるようになっている場所も多いですから週末はキャンプをしながら釣りという人も多いですし、ドリフトボートを下ろすためのボートランプもコンクリートできちんと作られて、ボートが泥に埋まって動けなくなるという心配もありません。こんなにいたせりつくせりで、だれでも利用できるという設備がところどころにあるのはアメリカ広しといえどもここモンタナ以外には意外と少ないのです。同じロッキー山脈に位置しているコロラドもトラウトフィッシングの川がたくさんあるところですが、大金持ちが川に面する土地を多く所有しているために、一般の人たちが川にアクセスすることができないようになっている場所が多いそうで、コロラドからわざわざモンタナに釣りに来る人も少なくはありません。

 しかしこのモンタナも実は幾度となく釣りができなくなる危機があり、そのたびごとにそれを決死の努力で乗り越えてきました。たとえば日本の方々が多く訪れるパラダイスバレーのスプリングクリーク。以前にリビングストーン上流にイエローストーンリバーにダムを作る計画が持ち上がり、それができればスプリングクリークのあるあのあたりはダムの湖底に沈むはずでしたが、釣り人だけではなく多くの人たちが反対活動し、その計画を打破したそうです。

 アメリカは大きな資本が容赦なく多くの自然を開発して行きます。モンタナでもボーズマンから1時間ほどのビッグスカイなども、世界の億万長者が年に数日間滞在するためのお城のような家がたくさんあります。以前は自由に行き来できた場所もゲートができて川にアクセスできなくなりました。

  もっと深刻なのは産業開発です。たとえばアラスカのブリスタル ベイは世界でも有数のサーモン
ィッシャリーで、また周辺はアメリカ最後の秘境とばれるほど美しい自然が残っている場所なのですが、そこに流れ込むKVICHAK川とNUSHAGAK川の源流域にPebble Mine と呼ばれる世界最大級の金鉱、銅鉱の開発が論議を起こしています。現代の鉱業技術は飛躍的な進歩をしているのでしょうが、もしこの鉱山の開発がすすめばサーモンが産卵に回帰する川への大きな影響が考えられ、サーモンやその他の生態系が大きく変化することは素人の私でさえ想像がつきます。車がアクセスすることさえできないアラスカの原野の木々が伐採され、トラックが道路を行き来する光景が目に浮かびます。私の知り合いのCamille Egdorf,は、そのブリスタルベイに近いDave and Kim Egdorf's Western Alaska Sportfishingフィッシングロッジを営む家に生まれ育ち、18歳のときからアラスカでフィッシングガイドをしているフライフィッシャーレディです。小うるさいフライフィッシャーマンを相手にボートをこぎながらガイドをしているなどとは思えないほどかわいい彼女は今はモンタナ州立大の経済学を学ぶ女子大生。おしゃれや恋愛が楽しいころだと思うのですが、このPebble Mineの開発からサーモンや大自然を守ろうと自分でフィルムを作り多くの人にこの開発の阻止を訴えています。

  しかしながら 個人の力というのは小さく、特に釣り人が釣りを通して知った自然保護の大切さを訴えても「遊びのため」の主張としか思われないのが現実ですが、そんな思いを行動に移すためにたくさんのフライフィッシャーマンが「TROUT UNLIMITED」に集まっています。フライフィッシングをする人なら一度は聞いたことのある名前で1959年にミシガン州で始まったこの団体は今では全米、カナダに広がる大きな自然保護団体で特に私が住むボーズマンのマジソンギャラティン チャプターやリビングストン周辺のジョー ブルックス チャプターはトラウトフライフィッシングのメッカをいうこともあって精力的に活動しています。JAMES GOETZさんはTROUT UNLIMITEDの活動のために働いてくださった弁護士さんで、自然保護活動の中が直面する法律関係で楯となってくださったそうです。また先週あったイエローストーン国立公園内のフィッシャリーレポートミーティングには専門家のデイブさんがイエローストーンレイクのレイクトラウト排除のレポート、タッドさんがグレーリングやウエストロープカットスロートの取り組みを報告してくださり、そのレポートの一部をTROUT LNLIMITEDが冊子にしてくれています。昨年の年次総会に使われた絵は私の友達で、かつてイエローストーンナショナルパークで働いていたMIMI MATUDAさんの絵です。日本の血を引く彼女は東北の震災のときも自分の絵の個展を開きその売り上げ金を寄付してくださったりと積極的に行動してくれました。彼女の絵は今イエローストーンインスティチュード(ボーズマン空港でみることができます)のTシャツなのにも使われ、その売り上げがイエローストーン国立公園のために使われています。

  法律の専門家、魚類額の専門家、そして個人レベル、たくさんの人たちがTROUT UNLIMITEDの活動に参加しています。またTROUT UNLIMITEDはフィッシングの企業にもその活動の資金の寄付提供を呼びかけています。NPO団体というと「お金儲け」が目的ではありませんから、企業が絡むのは。。。と思いがちですが、自然保護活動を具体的に積極的に行うには資金が必要でそのために河川や魚のおかげで生計を立てている企業やビジネスが関与するというのはとても自然な気がします。TROUT UNLIMITEDが発行している「TROUT」という冊子やいろんなところでTROUT UNLIMITEDにたくさんの企業やビジネスが寄与しているのを目にします。

 フライフィッシングを始めたころは魚を釣れるのが楽しかった。そのうち魚が釣れる環境にいることがうれしかった。そして今、MIMIやCamille のように魚のために行動する女性をみていると、ずっと魚を釣るためには自分は何をして行かねばならないのか考え、行動することができるようになった。魚のための勇気と行動力をここモンタナでは学ばずにはいられないのです。