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レイノルズパスに生息するビッグホーンシープ
デピューズスプリングクリークからのアブサロカの山並み

いいレインボウが釣れました

美しい色合いのブラウン

今年の干支 モンタナのひつじたち
SIMMS社のモンタナ産ウール製品
ボーズマンにあるウール製品のお店

■ モンタナの羊と魚に会いに

 2015年がスタートしてはや5ヶ月を過ぎようとしています。1月はとても寒かったのですが2月3月とまるで初夏を思わせるような暖かな日が続き、すっかり気持ちはモンタナのBIGSKY。でもそう簡単に冬が終わるはずもなく、3月の終わりから今日までまた冬に逆戻りしたかのように毎週のように雪が降ります。おまけに週末は風が吹き荒れ、せっかく休みなのにロッドを振ることすらできませんでした。雪の量も平年に比べるとずいぶん少なく、この夏は渇水山火事が心配です。

 遅ればせながら今年の干支は「ひつじ」。家の近所の農家でもひつじを飼っているところが多く、羊毛に覆われたかわいらしいひつじたちを身近にみることができます。また有名な「羊たちの沈黙」で主役ともいえるジョディーフォスターが演じるクラリスが両親を失って母親の親戚の牧場に預けられ、彼女の人生を決定付けるひつじに出会ったのがモンタナ。

 1950年に作られた「モンタナ」という映画は羊牧業の話。また2015年6月に日本でも公開になる「SweetGrass」(邦題 モンタナ最後のカーボーイ)ではイエローストーン国立公園の北東クックシティからモンタナ州レッドロッジに向ける険しくて夏場にしか通れないベアトゥース峠を超えるひつじ飼いとひつじを追ったドキュメンタリー映画があり、「ひつじ」といえば「モンタナ」というイメージがあるようです。

 2月の半ば、とても暖かな日が続いたのでマジソン川レイノルズパスで釣りにいきました。この時期マジソン川流域では、寒さを逃れえさを求めて何千頭ものエルクの群れが山から下りてくるのを目にすることができるので、釣りができなくてもそれを楽しみに出かけます。

 案の定この日も車のドアを開けることもできないくらいの強風。途中クレッグ&ジャッキーマシューズさんに会いましたが、彼らも「この風じゃどうにもならないね」とあきらめ顔。エルクの群れを眺めながら、車を走らせるとこれもまたマジソン川で会える動物の群れ、「ビッグホーンシープ」の群れが道路に出てきていました。「シープ」ですから今年の干支のひつじの仲間ですね。

 ビッグホーンシープはモンタナ全体では5000頭ほどしかいないそうですが、このマジソン川のレイノルズパス周辺では冬場たくさんのビッグホーンシープをみることができます。この冬あまりにも多くて、モンタナ州フィッシュ&パーク、ワイルドライフが捕獲し他の生息地に分散させたそうですが、それでもいつでもビッグホーンシープに出会うことができます。ボーズマンからビッグスカイに向う途中にもたくさん生息しています。ちなみにレイノルズパス周辺では真っ白な毛に覆われたマウンテンゴートも時々見かけます。魚を釣るだけではなくこういうワイルドライフに出会えることがフライフィッシングの楽しみでもあります。

 ふっと「デピューズ スプリングクリークのベッティおばあちゃんのひつじはどうしているかしら?」と魚釣りを理由に次の週末はベッティおばあちゃんのひつじに会いに行くことにしました。

 冬場パラダイスバレーのスプリングクリークは1ロッド$40になり夏場に比べると行きやすくなりますし、ウィンターパスといって冬場限定のシーズン券もあるので冬場はデピューズに通うことが多くなります。厳冬ですから暖かな日にはミッジがみられるもののほとんど虫のハッチもほとんどなくニンフの釣りが多くなりますし、風が強くて一度も竿をふることができなかったことも半分以上なのですが、雪に覆われたアブサロカの山々、産卵に上がってくる魚たちを見るだけでも気持ちが休まります。

 そして、デピューズにいったことがある人なら必ずあったことがあるであろう受付をしてくれるこの牧場のオーナーベッティ スミス おばあちゃんとのおしゃべりもデピューズに行く目的のひとつ。いつも彼女の好きなココナッツパイやクッキーをお土産に持って行って、ベッティおばあちゃんからモンタナの昔話を聞くのは本当に楽しいものです。最近ボーズマンの牧場が売られて宅地開発されているのをみて、「農業がなくなったら私たちの食べ物の源はどうなるのか、考えたことがある?」とまじめな話もときどき。モンタナ生まれでモンタナ育ち。モンタナの大地とともに生きてきた彼女から学ぶものがたくさんあります。

「ところでひつじたちはどこにいったの、しばらくみないけれど。。。」と聞いてみたのですが、残念なことに熊かマウンテンライオンもしくは狼にやられて、ベッティおばあちゃんの羊たちはいなくなってしまったそうです。詳しいことはわからないけれど、いつもデピューズにいくとお出迎えしてくれた黒いお顔のひつじたちにはもう会うことができなくなってしまったのはさびしいことです。

 ベッティおばあちゃんと別れ、クリークに向かいました。ひつじの事が残念でちょっとがっかりしてしまった私でしたが、いい型の虹鱒そしてきれいなブラウンが釣れました。ひつじたちはいなくなったけれど、ベッティおばあちゃんと魚たちがこうやってまた出迎えてくれるかわらないモンタナの一日でした。

 私がウエストイエローストーンに住んでいたころ、お友達が「ウエストイエローストーンは寒さが半端じゃないからね」とモンタナのひつじの毛糸で編んだセーターをプレゼントしてくださいました。寒い雪が降る中の釣りや氷点下のスキーレースボランティアでもこのモンタナ産ひつじののセーターは私を暖かく保ってくれました。気温が華氏40度から30度(摂氏5,6度から0度前後)ではフリースのような化学繊維のものでも十分なのですが、気温が氷点下を超えるとどんな高機能性の化学繊維よりもウールやダウンがずいぶん暖かく感じるのは私だけでしょうか。

 SIMMSにもそのモンタナのひつじたちの持つ「極寒を生き抜く力」に着眼した、「モンタナテック ウール ジップ トップ」という製品があります。モンタナ産のひつじの毛糸を使ったウール100%のジップトップセーターで、お値段は少し高めですが保温性の高い製品です。

 ボーズマンのショッピングモール近くにも昔から営業しているウール製品(モンタナ州のウール中心にモンタナ以外のものもありますが)を扱うウールのお店があります。モンタナの厳しい寒さを知るひつじの毛糸は、私たちの冬場の必需品。毛玉だらけだけれど、モンタナのひつじのセーターは私のお気に入りです。

 なんとなくひつじを見たい私はデピューズスプリングクリークの釣りの帰り、イエローストーンリバーぞいのパラダイスバレーに車を走らせると、道ぞいの牧場でたくさんのひつじたちをみることができました。

 高校か大学のころ読んだ村上春樹さんの「羊をめぐる冒険」では、星型の斑紋がある羊を探しに主人公の「僕」は北海道に行くのですが、魚の斑紋のあるひつじを探す私のモンタナの冒険はまだまだ続きそうです。