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モンタナ州の一部の川に出た釣り禁止に関するサイン
モンタナのBIG SKY

グラウスの親子

ボルダーリバー

グリーンドレイク
ボルダーリバーーの虹鱒
夏らしいワイルドフラワー

■ トム・ブローカー氏と夏模様

 2014年から2015年の冬は極端に雪が少なく、加えて7月初め独立記念日あたりの気温は華氏90度を超え、どの川も渇水。モンタナ州でも多くの川が「Hoot Owl」といって午後2時から夜12時までは釣りを禁止する措置が暫定的にとられています。モンタナ南西部を流れるビッグホールリバーは私のお気に入りの川なのですが、先日見に行くと水位がとても低く、水温は午後1時で華氏75度もありました。これではたとえ魚がつれても、リリースした後に魚は死んでしまうに違いありません。イエローストーンリバーはご存知のように水量が多く、この時期良いつりになるのですが、上流のイエローストーン国立公園内の土砂降りが川を濁らせるので、ボーズマンやリビングストン周辺のガイド泣かせになっています。唯一釣りになる、マジソン上流、ミズーリーリバーなどはフィッシングガイドや一般の釣り人が集中することもあってどうも調子がよくありません。今日もこの周辺のトップフィッシングガイドさんと話したのですが、ここ数日の低い気温と今日の雨が川を生き返らせてくれることをみんな祈っているようです。

 川の状況があまりにもよくないので、アメリカのつりの時事サイト(Moldychum.com)をひまにまかせてみていたら、トム・ ブローカー氏がアメリカのヴァーモント州にあるThe American Museum of Fly fishing の権威ある2015年Heritage Awardを受賞したときのスピーチの動画がでていました。(http://www.amff.com/heritage-award-2015.html )

 トム・ブローカー氏は、全米ネットワークのひとつNBC局の元トップ アンカーとして大変有名な方です。絶妙な語り口や鋭い洞察力はさすがアメリカのトップ アンカーだなあと感心しますが、この方に実は私は一度お目にかかったことがあるようなのです。トム・ブローカー氏はトップ アンカーとしてだけではなく、フライフィッシャーとしても有名でブルーリボンフライズのクレッグ・マシューズさんとも懇意になさっているようで、お店に一度いらっしゃったことがあるのです。そのとき私はまったくそんな有名な人だとは気づかなかったのですが、今になってみれば握手のひとつでもしてもらえばよかったなあと残念に思っています。話はずれますが、ブルーリボンフライズに限らず、フライショップにいると実はとても有名な人にお会いすることがよくあります。全米どころか世界的に有名な俳優さんや実業家、ミュージシャン。。。でもテレビや本でしか目にしないそんな手の届かないようなサクセス人生の人が目の前にいても、フライショップでは釣り場のことに熟知して、適切なアドバイスができることのほうが重要。魚は大金持ちだろうが貧乏人だとうが有名人であろうがみんなに公平。だからフライフィッシングは楽しいのです。

 さてトム・ブローカー氏はその記念スピーチの中で数年前に深刻な癌であることを宣言されてどうしようと思っていたけれど、次の日お医者さんがとめるにもかかわらず車に釣り道具を積んでモンタナに向ったということを話しておられます。よく私と夫が出かけるボルダーリバーが彼もお気に入りのようで、あのモンタナらしい光景の一角のどこかに彼はキャビンをおもちであるとも聞いています。そのスピーチを聞きながら感銘を受けながらふっと「こんな暑い日はボルダーリバーがあるじゃない!!」と思いたちました。ボルダーリバーはリビングストンの東、ビッグテンバーというロバート・レッドフォード監督の「モンタナの風にふかれて」という映画のロケ地にもなった町を流れていますが、私有地が多いので私たちが釣りをするのはもっと山手の国有林のなかです。

 ボルダーリバーに向うには、リビングストンからインターステート90号をもう少し西に走り、そのビッグテンバーの町からアブサロカの山に向っていく方法もありますが、私たちはいつもリビングストンの町はずれから直接アブサロカの山ふもとからウエストフォーク ボルダーリバー沿いを走り、本流のボルダーリバーに抜けます。この道は舗装されておらずがたがた道なのですが、遠くにクレージーマウンテンの山並みが見ながら、山の中に開かれた牧草地の中を走るのですが、交通量も少なく景色がよいのです。今回は春の出産を終え、少し大きくなった子供を釣れた鹿やエントロープ、そしてグラウスのファミリーを目にすることができました。そして真っ青な空と白い雲。もう何年もこの道を何度も何度も車で走っていますが、風景はほとんど変らないのです。命にかかわる深刻な病気を宣告されたトム・ブローカー氏もきっとこの風景を見ながらどんな気持ちで車を走らせたのだろうと少し心が痛みました。

 ボルダーリバーの源はイエローストーン国立公園のスルークリーク近くだと聞いています。ですから水は冷たく、山もマジソンやミズーリーのような開けた川ではなく、日本の山岳渓流のような渓相です。夫はこの6月初めに日本に行き、日本の友人にお世話になりながら、富山や東北で釣りをさせていただきました。ボルダーリバーの上流に着くなり、「日本の川のようだねえ」と一言。モンタナのBIG SKYではなく、深い山並みの谷間に見える狭い青空。私も実家の山深い富山の川が思い出さずにいられませんでした。夏休みの週末ということで目的の釣り場はもう車が止まっていて釣り人の姿が見られ、仕方が無いので前回まったく魚の反応が無かった場所に再度挑戦することにしました。ウェーダーをはき、今回もだめでもともとと思いながら川に入ってみると水はとても冷たく、下界で釣り禁止になるほど水温の高いのが信じられないくらいです。

川面 をずっと見ているとPMDがハッチしはじめ、魚たちがライズをしています。ここはトム・ブローカー氏の友人であるクレッグ・ マシューズ氏に敬意をはらい、PMD スパークルダンで魚がつれてくれました。あまりにも渓相が日本のようなので魚を釣ったとたん、岩魚かなと錯覚してしまいましたが、小さな虹鱒。日本がちょっと恋しくなった瞬間でした。前回つれなかった場所で小さいながらも魚が釣れたことと気持ちのよい川の流れ、それだけでも遠くまで車を運転した甲斐がありました。ところが次の瞬間、また不思議なことが起こりました。PMDに混じってPMDより大きなメイフライがハッチし始めたので、魚たちは狂ったようにライズし始めたのです。スルークリークの下流だから、「クレッグ・マシューズ氏のいうドレイクマッカロー(グレイ ドレイク)かなあ」と夫と話しながら、フライを交換する時間ももったいなくてとにかく今結んであるスパークルダンを投げ続け、何匹か虹鱒を釣り上げることができました。今回は日本に似た川ということで、私は日本の釣り友達のチャコちゃんが作ってくれた3番の竹ざおでしたから、小さな虹鱒といえども日本の尺クラスの魚ですので、いい具合に竿が曲がって楽しい釣りになりました。さっきハッチしていたメイフライを捕まえ見てみると、3本のしっぽ。なんとグリーンドレイクではありませんか。今年のヘンリーズフォークでたった2,3マイルの違いで逃したグリーンドレイクのハッチ。やっとモンタナの山奥で出会うことができました。グリーンドレイクは魚の大好物ですから、さっきあんなにライズがあったのも納得できました。

 川原で見つけた鮮やかな黄色の花の色と真っ青な空をみながら実家のある富山で撮影された映画「少年時代」のテーマ曲の歌詞を思い出し、きっとトム・ブローカー氏の夏模様のひとつはこのモンタナ ボルダーリバーなんだろうなあとアメリカの偉大なトップ
アンカーが愛したこのボルダーリバーと魚たち、そしてモンタナの青空を誇りに思いました。