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■過ぎゆく時間

 今十日目、残すところ二日半となり、かなり焦ってきた。この朝も柳の下の二匹目のドジョウを狙って、朝一番でLower Boatに向かう。が、朝4時に到着したにもかかわらず先客が居る。「勘弁してくれよ・・・」と思いつつ、またしてもStation Holeに入る。Station Holeの方が一般的にはより望ましいのだが、どうも自分では実績が無いので今一つ気分が盛り上がらない。この日も午後9時頃まで忙しく釣るが、下流で釣った20cm~40cmの小物だけだった。恐ろしい事だが、残すはあと一日半。マジで今回ボーズに終わる可能性が見えてきた。

 十一日目、この朝もしつこくLower Boatを朝一で狙う。またしても午前4時。この日は入れた。恐ろしいのは、駐車場には既に車が3台停まっていて、Lower Boatに向かって遊歩道を歩いていたら、反対側から釣り人が二人戻って来た。「どうしたんだ?」と訊くと、「狙ってたランに先客が居たんで、ちょっと下流に移る。」とか。「Lower Boatか?」と訊くと、「いや、Lower Boatは空いてた。」との事で、安心してLower Boatに向かう。やっと念願のLower Boatに朝一で入れたものの、結局カスリもしなかった。まぁこんなもんだ。

 それからUpper Boat, Station Hole等を釣って、下流に移動しながら次々とランを釣って行く。11時頃に八日目に成魚の当たりがあった大きなランに着いた。もう日は高いが、まぁ一応釣っておく事にする。このランでは16フィート8番を使う。フライは4番のGreen Butt Skunkだ。ランの頭からリーダーだけのキャストで始め、次第にラインを伸ばしながら丁寧にランをカバーする。

シーラン カットスロート

 八日目に当たりがあった付近に近づいた。ちょっと期待する。30m強のキャストが気持ち良く決まり、フライを少しドリフトさせてテンションをかける。フライが流芯にさしかかった時だ。いきなりロッドをひったくられた!そしてラインがリールから引っ張り出される!「やった!来た!」しかし、余り大きそうではない。ロッドは手元まで曲がってラインがまだ少し引き出されているが、重量感が大した事はない。間違いなく70cm以下と判断する。しかし簡単には寄ってこない。魚は流芯付近で右へ左へと動いている。「このサイズなら強引に寄せるか。せっかくだからちょっとジャンプさせてやろう。」とリールに手をあててロッドを立て、流れが弱い右側に大きくプレッシャーを与える。と、魚はそれに反発して下流に数m走り、水面から1m以上ジャンプして頭を振った。と同時にロッドが軽くなった。「え!まさか!」とラインを手繰ったが、やはり魚の重さは無い。「あぁ~畜生~、もう少し慎重にやれば良かった~」と後悔してみても既に遅し。ジャンプしたのが30m以上下流だったので、サイズは50cmから60cmの間として言えないが、間違い無く元気のいいスティールヘッドの小型成魚だった。(右上へ)



  ちょっと気抜けしたので昼食をサッと食べてLeeのキャンピングカーに行く。「さっき下流のランでやっと一匹目を掛けたのにバレてしまった。ちっちゃかったけどね。あ~あ」と切り出すと、「それはおめでとう。この川では掛けたっていうのは釣ったっていうのと同じだ。今年はどうも小型が多いと皆言ってる。まだ丸一日あるじゃないか。」と言ってくれた。

 それからしばらく話し込み、今回の釣行をハーミットのサイトでレポートしようかと思っていたが、釣れないまま終わるならやめとくつもりだと言うと、「この川の釣りはそういうもんなんだから、釣れなくても是非レポートしてくれ。あなたみたいに川を結構良く知った上級レベルのアングラーでもこういう結果になる事はあるんだという事。そして、釣れる釣れないではなくて、この美しい川でスティールヘッドを狙って釣るという事自体が素晴らしい体験なんだという事を是非伝えてくれ。」と言ってきた。「まぁそれもそうだな。じゃあ釣れなかったレポでもいいか訊いてみるよ。」と応え、「ところで、今年の観察レポートができたら送ってよ。」と頼み、再会を約束して別れを告げた

 この後、帰り道に実績のあるランを幾つか釣ったが、午前中で運を使い果たしたか、カスリもしなかった。最終日、この日は午後6時頃にはNorth Umpquaを発って、Portlandまで運転しなくてはならない。また朝一でLower Boatに入れる。が、不発。この日は実績のあるランを徹底的に攻めると決めて、食べる間も惜しんで釣りまくった。午後4時過ぎ。過去に81cm2匹を含む6匹を掛けているBurnt Creek Holeに入る。1時間半の勝負だ。この日ここまで成魚の当たり無し。ランの頭からリーダーだけのキャストで始める。丁寧に釣った。フライを換えてもう一度釣った。「この次のキャストこそ!」と思いを込めてキャスト、ドリフト、スウィングを続けるが、釣りの女神は微笑んでくれなかった。

 6時少し前、不思議とすんなりロッドをたたむ気になった。12日間よく釣ったものだ。「今回はこれで引き上げるが、また来るぞ!」と決意して車に向かう。車を運転しながら、9月のNorth Umpqua, 10月のTrinity, 11月のThompson, 2月のSmith, と様々な計画を考え始める。Steelheading、全く厄介な病気だ。