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タックルについて

 今回持って行ったロッドはThomas & Thomas Double Hand13フィート7番, Horizon Ii 9フィート半8番, Winston Biix 14フィート8番、Meiser Highlander16フィート8番の4本。これらにTeton、Ampex等のリールを組み合わせた。ラインはロングベリーとショートベリーを使い分ける。

 North Umpquaのフライオンリー区間は山岳渓流をそのまま大きくした様な川で大小様々な流れがあり、最大の支流であるSteamboat Creekの合流点から下流は川幅が30mから50m程度の所が多い。そこから上流はやや狭くなっている。普通なら夏でも結構水量がある。バックキャストが殆どできないポイントが多く、ダブルハンドでもシングルハンドでもスペイキャストが大きな武器になる。

 16フィートのロッドは、対岸近くのポイントを効果的に釣る為に持ち込んだ。流れが複雑なポイントが多いので、対岸近くを釣るには、ロングロッドの優れたラインコントロールが嬉しいところだ。その反面、長さ故にスペイキャストすらできない場所も多く、そういう場所では13フィート7番にショートベリーかスカジットラインを乗せてスカジットキャストをするか、9フィート半8番でロールキャスト、或はシングルハンドスペイキャストを使う。カタログには載っていない特注版のHorizon Ii 968-3は、でっかいフライをシングルハンドのシングルスペイで20m強軽々と放ってくれる。ロールキャストで10mも楽勝だ。それでいてダブルホールのオーバーヘッドでも30mを軽々とキャストしてくれる。凄いロッドだ。

 しかしながら遠くに投げたら釣れるという訳でもない。リーダーだけでキャストするようなポイントに魚が付いている事が結構あるので、まずは近いポイントを丁寧に攻めなければ駄目。リーダーは7フィートから10フィート、ティペットは15ポンド前後。フライはいろんなパターンで釣れるが、簡単に済ませたければGreen Butt Skunkの#6~#3/0があれば大丈夫。欲を言うなら、それに加えてMuddler Minnow #6~#2, Orange Butt Skunk #6~#3/0, 自然色系のウェット#6~#3/0, 大きい派手なホットオレンジのウェット、大きい派手な紫のウェットがあれば万全。美しいサーモンフライも当然釣れるが必要ではない。(右上へ)

タクティクス

 釣り方は簡単。魚が付いていそうなポイントへフライを送り込み、少なくとも数秒間はその付近にフライを保つ努力をする。これだけだ。魚が付く場所は、休むのに適した流れと、鳥やカワウソなどの天敵から身を隠せるなんらかの障害物(白泡も含めて)や窪みが揃っているところだ。この川の岸や川床は、大きな岩盤がえぐられてできたものが多く(しかも滑り易い)、思わぬ所に穴や窪みがあったり、岸近くから急に2m以上落ち込んでえぐれていたりと、魚が付きそうなポイントがいたる所にある。面白いのは、無数にある付きそうなポイントの中で、毎年毎年魚が実際に付くのは(水位によって左右はされるが)決まっているらしい。この川のガイド達はそういう付き場をランごとに知っていて、しかもどういう流し方をしたら魚が反応するかも知っている。そういう訳で、この川でガイドを雇うと、かなり高い確率でスティールヘッドを掛ける事ができる。初めての釣行で是が非でもスティールヘッドを掛けたい人には、この川でガイドを雇って二日以上釣る事をお薦めする。余程コンディションが悪くない限り、二日間あればまず間違いなくスティールヘッドを掛ける事ができる。実際、今回のあの最悪な状況でもガイドを雇っていた釣り人は半分以上が一日一匹は掛けていた。ガイドを雇わない場合は、私と同様に、ただひたすら付きそうなポイントを次々と釣るしかない。基本的には早朝と夕方が確率は高いが、真昼間に日光がガンガン当たっているポイントで出る事も頻繁らしいので、朝4時半から夕方9時まで、食事の時間を除いてただひたすら釣り続ける。私の場合、3~4日のみの釣行なら、一日15時間釣る事も結構あった。

 因みにこの川でも他のスティールヘッドで人気の川と同様に、釣り人同士の間で守られているエチケットがある。例えば(1)先に誰かがランに入っていたら、その釣り人が釣り下って川から上がるか、その釣り人からランの頭から釣り始めてもいいというシグナルが出るまでは待つ。(2)自分がランを先に釣っていて、後から来た釣り人が待っている場合は、なるべく一度釣りきったらそのランから移動する。ただし、同一ランを、フライを換えて二回繰り返して釣り下るのはマナー違反とはみなされない。一回目に当たりがあって魚が乗らなかった場合などは二回目Ok。(3)一箇所に立ち止まって延々と釣らない。(4)車を停めた場所から遠く離れたランを釣らない。と、まぁこんなところだ。


Streamboat inn

 さて、ロッジに荷物を置いて早速上流へ向かう。まずはよく昼食を食べていたSteamboat Innへ直行して腹ごしらえだ。Steamboat Innはフライオンリー区間の中ほどのSteamboat Creekの合流点からすぐ下流にあり、この合流点から上流数百m、下流1kmほどの、通称Camp Waterを見下ろす位置にある。因みにSteamboat CreekはNorth Umpquaのスティールヘッドの過半数が産卵する禁漁河川だ。こちらは私などの低予算アングラーは無縁のロッジだが、元々スティールヘッダー向けのInnだけあって、レストランでフライ用品(しかもThomas & ThomasとかSageとかOrvisとかSimmsとかのブランド物が殆ど)を売っていたり、チェストハイウェィダーにスパイク付きのウェィディングシューズのままレストランで食事ができたりで、多くのスティールヘッダー達が集まってくる。

ここで食事をしていると、釣りの情報交換もできるというメリットもある。オーナーのJim Van Loan氏自身も勿論スティールヘッダーだし、女性マネージャーのPatさんも以前はガイドをしていたというほどのスティールヘッダーだ。一般のフライフィッシャーから見ると、完全に狂ったとしか思えない我等スティールヘッダーだが、ここではその狂気が基準だというのが何か嬉しい。

 庭を眺められるテーブルについて、いつものヴェジタリアンチーズオムレツのセットとコーヒーを注文する。ウェイトレスも知った顔だ。部屋の反対側のテーブルで食事を済ませて話し込んでいる二人組みの内一人に何やら見覚えがある。どうやら向こうも気が付いた様子で、レストランを出る際に近づいてきた。顔がはっきり見えた。釣り禁止のSteamboat Creek上流部で通称Dynamite Poolで夏から秋にかけてたまり続けるスティールヘッドを見守る生物学者兼考古学者Lee Spencer氏だ。彼とは何回か一緒に釣りもしているし、North Umpquaの観察レポートを郵送してもらった事もある。

「やぁ、Lee Spencerさんじゃないか!」と切り出すと、向こうも私をフルネームで呼んできた。こういう再開もまた嬉しい。ちょっと話して翌朝一緒に釣ろうと約束し、彼はダイナマイトプールの監視に戻った。食事を済ませて出ようとしていると、また私を呼ぶ声がする。振り返ると、Jim Van Loan氏だ。彼とテーブルについてコーヒーを飲みなおしながら1時間程あれこれとしゃべってしまう。

 こうやってNorth Umpqua到着数時間で4年のブランクは完全に消えてしまった。ここまで読んだ人は「何て長い前置きなんだ。いい加減に釣りの話をしろ。」と思い始めている事だろう。前置きが長い理由はもうすぐ分かる。