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馬力系でかたづけられない、パワーの持ち主

 何が良かったかといえば、まず魚の質。地味な「馬力で勝負」系のファイトをするというイメージのChumだが、実際には、他の大型魚にもみられるように、個体差というか個性が実に豊かで、いきなりひったくるようにフライにアタックしてそのまま一気に50m以上下流に突っ走ってしまう奴、セットフックまでは動かなかったのに掛かるや否や姿を見せないままジュボー、ジュボーと物凄いラインでの水切り音をたてながら縦横無尽に暴走しまくる奴、頭と尻尾を交互に顕わにしながらの縦回転を繰り返すというスティールヘッドさながらの派手なファイトをする奴などなど、一尾一尾がそれぞれのスタイルで最初から最後までたっぷりと楽しませてくれた。しかもこれを、平均体長85~90cm(大型になるとメーター超え+体重20lbs超え、70~80cmは小型)という立派な体躯のサカナ相手にやるわけだから、それは正に興奮のるつぼであった。なお、右状況には釣り場が比較的河口近くであったことも影響しているように思えた。何故ならずっと上流を釣ってみた二日目に結構気になった、産卵後の死骸やよれよれにくたびれたサカナの姿がこの日には殆ど目に付かなかったからだ。所謂フレッシュランご一行様だったのだろう。

今回使用したタックル
今回使ったフライ

 しかしより印象的だったのは彼らの並外れたパワーだ。その怪力振りは、一部の巨大Chinook(キング)を除けばパシフィックサーモン中最強と云われるだけあって、8wtスペイロッドのバットをフルに使ってファイトしてさえ、本気で走られたら全く為す術が無い。(由来はさておき)「Dog Salmon」という別名が相応しいと思った。今回幸いにも二尾のメーター級に巡り合えたが、このクラスになるとファイトが優に15分を超えることになり、その余りのタフさに腕はパンパンの足腰フラフラになってしまい、リリース後暫くはキャスティングができない程だった。セットフックまでの過程は慣れてしまえばそれほど難しくないかもしれない。しかし、これ程までに強いサカナをうまくいなしてランディングにまで持ち込むことは決して容易なことではなく、その為に技を駆使することは正に釣りの醍醐味であるといえるだろう。Chumは、その遡上が盛んなカナダやアラスカでは、比較的お手軽な釣り対象魚という位置付けのようだが、なんの、なんの、一生に一度といわず何度も経験してみる価値のあるサカナだと思った。


 Squamish Chum Fishingの更なる魅力は釣り人が少なくてノビノビ釣れること。この日我々四人が釣ったポイントの下流には車でのアクセスポイントがあり、そこで4~5人が立ち込んでいた。しかしそれは遥か500m以上も離れたところであったし、上流側に至っては何キロにも亘って全く人 がいない様子だった。お陰で、混雑していたなら相当難儀したであろう私のヘボスペイでも余裕で楽しむことができたし、サカナが下流に爆走しても(その気があれば)50mだろうが100mだろうが好きなだけ全く人目を憚らずに全力疾走で追うことができる状況だった。しかもこれは最も人の出の多いとされる最盛期の週末での話であるから羨ましい限りで、地元の皆さんは釣りがお嫌いなんじゃないかとさえ思えた。因みにこの関係では機動性の面でも、またお気に入りのポイントへのアクセスを可能にするためにもボートを利用することが望ましいと思う。とりわけ(私もそうだが)時間に余裕の無い者が効率よく楽しもうとするならば、多少のコスト高になっても腕の良いジェットスレッド付きガイドサービスを契約するべきだろう。

 このように贅沢な貸切り状態のサイトで、コンディション最高のサカナとの密なファイティングに終日没頭した成果は、口へのクリーン・ フッキングベースで約25ファイト中13キャッチ(全て無事リリース)と申し分のないもの、というよりは、何かこう一生分の釣りの喜びを一日で味わってしまった気分で、それこそ罰でもあたるんじゃないかとさえ思えた。そしてそれ故に15:40と比較的早めの終了だったにも拘らず、皆満面の笑顔で帰路に着くことができた。そしてホテルで一風呂浴びた上で美味い中華料理をつまみに紹興酒で祝杯。最高!

今日の釣りを振り返りながら、至福の時