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ボートも心なしか寂しそう

釣行二日目

 このように初日が絶好調であったことから、二日目への期待は当然大変なものだった。しかもこの日、釣り人は私一人。勿論、喜びを独り占めしようなんてセコイ了見は持ち合わせないが、ガイドに相談しながら、或いはその指導を受けながらロッド、ライン、フライなどを思いつくままにあれこれ試してみる絶好の機会だから、それを「釣りながら」たっぷり楽しんでやろうと欲をかいたわけだ。

 ところが、ところが、(やっぱり罰があたったか)この日は大増水の大濁り。どうも前日夜半からの気温の上昇と雨量の増加が影響したようだ。やはり6時過ぎにホテル前で拾ってもらい、前日と同じルートでSea to Sky Highwayに入って視界に飛び込んで来るものが森林ばかりになり始めたころ、車のバックミラーに表示される外気温(9度C)を見るTodd君の表情も心なし厳しいものに感じられた。

その内「あと1~2度低いと最高なんだが、、、」とぼやきも漏れたりして。実際、前日天国気分を味あわせてくれたポイントに着いてみたら、少なくとも40~50mはあったはずの河原が完全に水没しており、浅瀬ではジンクリアに近かった美しい流れに代わって、不気味な濁流の化け物のような姿が川幅一杯に広がっていた。

悪条件の末にキャッチ
 そんな状況から、ジェットスレッドをかっ飛ばし、一旦かなり上流まで様子を見ながら登った上で、目ぼしいポイントを釣り下っていくことにした。Toddとしては上流に行けば多少はコンディションの良いポイントが見付かるだろうという考えだったようだが、基本的にどこも似たような状況で釣りは極めてシビアなものとなった。前日の別れ際の「明日はCohoもやってみたいな~」という私の呟きに気を配り、そんな悪条件にも拘らず、Toddは、こういう状況ではCohoは止水に近い淀みにいる、と云って、シングルハンドで細かいリトリーブをするという釣法を教えてくれた。しかし腕の未熟な私は、水面に幾度もCohoの姿を発見できたにも拘らず、一二度魚信らしきものを感じただけでフッキングを達成するには至らなかった。それやこれやで結局この日の釣果は、シングルハンドで一尾、スペイで三尾の合計四尾のChumにとどまった。(それにしてもこんな悪条件下でも釣らせてくれたTodd君はホント優秀で感動もの)。

 Cohoを体験できなかったのは残念だ。しかしこんな状況故に反って自ずと(当初の目論見通り)ロッド、ラインシステム、フライパターンなどいろいろと試すことになったし、また、マンツーマンで名人Todd君からみっちりスペイキャスティングの指導を受けることができて、これはこれで大変な収穫だったと思う。更には、たった1,2度Cの気温差によってガラっと変貌し、牙を向く微妙且つ恐ろしい大自然の一部としての河の素顔を垣間見ることができたのも極めて貴重な体験だった。また、この日はたくさんのChumの死骸を発見したり、よれよれにくたびれたサカナが釣れて来たりした。前に多田師匠からアラスカでのサーモンフィッシングの体験談を聞かされ気にはなっていたのだが、こうやって目の当たりにしてみると、やはりこの辺に今一つ自分がサーモンフィッシングにのめり込めきれない理由があると改めて感じた。尤も、よく言われるように、そもそも環境保護を第一に考えるなら釣りなんか止めなさい、というのが結論なので深入りはしないで置くが。


■道具と釣法

たった二日の経験でChumの釣法を語るなどおこがましいが、正直な印象を記しておく。

 まずタックルは、スペイでもシングルハンドでも構わない。番手はいずれの場合にも8~9wtが適していると思う。ではこれら二者の間ではどちらが有利かと云えば、一般論としてはメンディング等のラインコントロール性能、また背後のスペース不足でオーバーヘッドキャスティングのできないポイントでの釣りを強いられるケースも少なからずあることなどを考慮するとスペイに軍配が上がるかと思う。反対にファイティングがよりスリリングで面白いのはシングルハンドの方だから、好み次第では、シングルハンディッドスペイを充分こなすことができ、またメンディング性能にも優れた設計の9'1/2から11'のSHをメインロッドにするのも一案かもしれない。ただし、シングルハンドで右から左に吹く風に対処するのが不得手な自分にとっては、スペイが断然有利だと思った。スペイでなら左右どちらが上手であってもほぼ同等の距離を出せるからだ。

戦い終えて・・

 キャスティングに関しては、河の規模からして20mも投げれば充分だった。狙った流れのレーンにフライを落とすようにクロスから若干のダウンクロスに投げて一回メンディングを入れたら後はドリフト&スイング。スイングが終わったらステップダウンするのが普通だが、魚影が濃くまた自分より上流に釣り人がいなければ所謂お地蔵さんでも構わない。キャスティングの段階でリーチを入れるのも手だが、これは不可欠という程のことでもないようだ。なお、スペイキャスティングとラインシステムの関係というのも面白いテーマではあるが、それにChum Fishing特有のものがあるかといえばそうでもないと思うし、話がややこしくて果てしないのでこの話は別の機会に譲ることにしよう。ただし今回のToddとの釣りがこの面で大変参考になったことだけは明言しておく。

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