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キャプテンクックホテル裏のリーフフラット。時々ウルアが入ってくる        

■ Xmas Island (Kiribati) July.2008 

 クリスマス島。この名前を最初に聞いたのはもう10年以上前の事だ。知り合いから、クリスマス島へ行って一週間でボーンフィッシュを80匹以上釣ったという話を聞かされ、「あっそ、沢山釣れたね〜」程度の反応をしたのをおぼろげながら覚えている。当時は地元の鱒と鮭を追っかけて忙しく、ソルトフライフィッシングには殆ど興味が無かったので、クリスマス島なる場所がどこなのかも訊かなかった。

 しかしながら、この3年ほどオアフ島に島流しになってしまったので仕方なくソルトフライを始めて、ボーンフィッシュのパワーとスピードに驚き、自然な流れとして海の大物を釣りたいと思うようになった。時々立ち寄る地元のフライショップにも、クリスマス島で釣った大物GTの写真等が壁に貼ってあり、アメリカ本土の知り合いが毎年ホノルルを経由してクリスマス島へ行ったりしているのを見ると、せっかくオアフに住んでいるのだから、ここに居る間に一度クリスマス島で大物GTに挑戦してみたいと真剣に考えるようになった。特に、その知り合いから、クリスマス島はボーンのメッカだが、クリスマス島でウルアと総称される中大型トレヴァリーや、オフショアの大物も十分狙えると聞かされて、ずっと拒否してきた「ガイド付きの釣り」というのをやってみる気になった。

 釣り人が少ない5月の中旬を選んでCaptain Cook Hotel滞在の一週間パッケージを購入。2ヶ月前になって最終的に釣行を決めるという慌しさだったが、何とか無事にオフショアや大物GT狙いに必要なタックルも準備できた。ボーンフィッシュはオアフで日常的に3〜8ポンドのを釣っているので、一応タックルは持って行くが、クリスマス島の小物ボーンは暇つぶし程度にしか釣るつもりはない。

右上へ

従って、携行ロッドは9‘6“の8番(T&T Horizon-II 986S-3)、9'の12番(T&T Horizon 912S-3)を2本、そして8‘の16番(T&T HS8BW-3)を2本という偏り方。リールは、Mako 9550, Tibor Gulf Stream (Mako 9600が間に合わなかった為に急遽用意)、そしてTeton 9/11。

 Makoには50ポンドのバッキングを300ヤード、Gulf Streamには50ポンドバッキングを600ヤード巻いておいた。Tetonはボーン用で、30ポンドのバッキング300ヤードと8番のフローティングをセットした。ブラインドキャストでウルアを狙う場合には12番ロッドで、サイトキャストで大物ウルアを狙う場合は16番で、と考えていたので、12番フローティングラインを数本と、コアが70ポンドの550グレインの大物用フローティングライン、Rio Leviathan 550gr floatingを用意し、オフショアの大物用には同じくコアが70ポンドの1150グレインのファーストシンキングラインや、14〜15番のビッグゲーム用フルシンキングラインを数本用意した。

 クリスマス島ではタックルは調達できないので、備えあれば憂いなし、というところだ。フライは中大型のポッパーを20個くらい、オフショア用ストリーマーやウルア用ストリーマーを計20個くらい購入し、自分でも適当に3/0や4/0のフックで大き目のストリーマーを10個ほど作ってみた。ボーンフィッシュ用のフライは、普段オアフで使っているのは大きすぎるので、Crazy Charlieタイプの6番や8番を計20個程度チャチャっと巻いた。厄介だったのは大物用リーダーシステムだ。80〜100ポンドを通しで使えば簡単なのだが、それだと下手をするとラインやバッキングで切れてしまう可能性がある。そこで、80ポンドや100ポンドを6〜7フィートのバットとフライに結ぶ40〜50cmのティペットに使い、その間を30ポンドか45ポンドで繋ぐという、極簡単なシステムを多めに作った。勿論、オフショアで使う巨大ストリーマーには製作者がワイヤーリーダーとビミニツイストを用いた「完璧」なリーダーシステムを付けていたので心配はしなかった。(左下へ)


出発

 さて、出発ギリギリになって準備を完了させ、当日はお昼頃のフライトに合わせて自宅を9時半頃にのんびりと出発。すぐにホノルル空港に着いてチェックイン。待合室へ行くと、何人かロッドを持った連中が居た。その中で、私と同様に一人でいた奴が話しかけてきた。聞くと、彼はオレゴン在住のジャーナリストで、クリスマス島へ取材に行くとか。持っているロッドは実はショップからの借り物で、フライフィッシングは随分昔にちょっとやっただけだと言う。釣りは二日か三日だけやって、後は他の事をやる予定だと言う。滞在はCaptain Cook Hotelだと言うので、「もしかしたらこのド素人と一緒の組になるのかなぁ」と、少々嫌な予感がした。

 このジャーナリストと話している内にフライトの時間になった。小さな機内は約半分くらい席が埋まっていた。離陸して3時間後、実にあっけなくクリスマス島に着いた。本当に近い!時差も無いし、オレゴンに飛ぶよりも遥かに楽だ。空港に着陸して建物を見て驚いた。まるでどこかの廃工場の様だった。手書きで「Welcome to Christmas Is」と書いた凄い看板が屋根に目立った。飛行機を降りると、その建物に入り、冗談のような入国手続きを済ませた。そしてCaptain Cook Hotelの送迎トラックに乗り込み、すぐにホテルに到着。まだまだ日が高く、夕食まで時間があるので、早速12番ロッドにポッパーやストリーマーを結んでホテルの裏の海でGT狙いをやってみた。が、小さなロックフィッシュが釣れただけ。クリスマス島と言えど、そんなに甘くはない。夕食後、滞在客全員を集めてヘッドガイドによるオリエンテーションがあり、釣り人はアメリカ本土から来た4人組と私、あとの4人は釣りはちょっとやる程度だと分かる。そして予想通り、私は初日、ジャーナリストと一緒にナリオというガイドに連れられて、ボートを使って釣りをする事になった。

小さいボーンフィッシュ

 初日はボートを使ってラグーンの中ほどにあるフラットから釣り始めた。ホテルから船着場までの数十分、ボロボロになったトラックの後ろの荷台にジャーナリストの相棒と座って様々な話をした。この男、とにかくよく喋る。鬱陶しいくらいによく喋る。そしてパチパチと写真を撮りまくる。仕事柄こうなるのか、こういう性癖だからこういう仕事をするのか、その辺は分からないが。さて、ボートに揺られてしばらくすると、目的のフラットに着いた。ナリオの薦めで、取り敢えずボーンも釣ってみようと決め、8番と16番をセットアップして、16番はナリオに持ってもらい、自分は8番でボーンを狙いにかかった。

 ジャーナリストの相棒は、まずはキャストの練習から始めてもらうことにして、最初の小一時間はナリオが私に付いてボーンを探してくれた。朝日が射す静かなフラットをゆっくり歩き始めると、すぐにナリオが立ち止まり、「魚だ、この方向、こっちに向かっている、喰ってるぞ」と指差しておよその距離を教えてくれた。こっちには全然見えないので、仕方なく見当でフライをキャストすると、「よし!待て、動かすな」、そして、「よーし、来た来た、ストリップ、ストリップ、・・・ストップ・・・」とか言ってるので、言われた通りにすると、いきなりラインに重みを感じ、ボーンがラインを引っ張り出して行った。「え〜、こんなに簡単に釣れるのか!」と驚きながら、走るボーンをいなして、すぐに取り込んだ。又長40cm程度の、淡いグレー色の背中とシルバーに輝く横腹の綺麗なクリスマス島のボーンだった。オアフの強力なボーンに慣れているので、この程度の魚はすぐに片付けられる。「小さいな」と言ってすぐにリリースすると、ナリオは「ラグーンはこの位のが多いんだ。」とか。そしてすぐに、「また来た。あっちだ。」と次の獲物を指差す。本当にボーンがうようよしている。         右中へ

ボートから見たラグーン。いたる所にフラットが点在している

 こうして腕利きガイドに最初の20匹程を見つけてもらう内に、自分でもかなり見えるようになった。オアフのボーンに比べると色が淡く、底の色に似ていて見つけにくいが、影を探すとすぐに分かる。ナリオが見つける前に見つけたりもするようになり、しまいには25m以上離れた所の魚を見つけて、ナリオが「近づくまで待て」というのを無視してキャストして捕ったりもした。オアフでは一匹釣るのにえらく苦労するのに、ここでは小物だが実にあっけなく釣れる。私が写真を全く撮らないのを気にして、「写真はいいのか?」とナリオが訊くので、まぁ一応一枚だけ撮ってもらった。そうやって、最初の小一時間でガイドと一緒に十数匹を釣り上げると、「もう俺はいいから、あの素人を助けてやってくれ。」とナリオから離れて、独りで釣ることにした。

 その後1時間程の間にまた20匹以上は見た。その内10匹ちょい掛けて、6匹捕った。次第に影だけではなく、魚体そのものも少し見えるようになっていた。しかし、中にはバッキングを引っ張り出す奴も居たが、全て又長30〜45cmの超小物ばかり。いくら数が出ても、オアフで又長50〜60cmをちょくちょく掛けている私は、正直言ってすぐに飽きた。で、早々とボーン狙いを止めてウルア狙いに変更。16番ロッドにバカデカポッパーを結んで浅場の縁を見ながらフラットを歩き始めた。

 しばらくうろうろと歩いてウルアの影を探してはみたものの、全く気配も無い。ポッパーでブラインドキャストをすると、音でGTが寄ってくる事があるとガイドが言うので、16番ロッドでバカデカポッパーをブラインドキャストしてみた。すると、思ったほどきつくない。左手をしっかり使うと、8/0フックのついた全長20cm位あるポッパーを安定して25m以上キャストできる。両手で持って思いっきり振っても殆ど曲がらないロッドだが、流石T&T、凄いロッドを作る。普段12番ロッドでボーンを狙ってガンガンキャストしているからか、この後は殆ど16番でブラインドキャストしたが問題は無かった。

 場所を変えてナリオが一緒にウルアを探してくれた。が、気配が無いので、またまたブランドキャスティング。ナリオが、「お前、よくそんなロッドをキャストし続けられるな!」と言うので、「思うほどきつくないぞ。お前も試してみるか?」と、やらせてみると、「駄目だ〜、こんな事してると腕が壊れちゃうよ!お前一体どんな腕してるんだ?」と言う。「いつも12番ロッドで30mキャストをしてボーンを狙ってるからな。オアフのボーンはデカイし強いぞ〜。お前も一度来いよ。俺が案内してやる。・・・」とか、何とかいろいろ話しながらキャストを続けたが反応無し。

 その後場所を数回変えてみたが、駄目。ホテルに戻ってから夕食の時間まで裏のリーフフラットで1〜2時間釣ってみたが、全く魚影が見えず、初日はウルアの姿を見る事はなかった。因みに、ジャーナリストの相棒はガイドに付いてもらってボーンを数匹捕った。引きの強さに感動していた。数匹釣った後は、腕が疲れたとかで、写真を撮りまくっていた。やはりジャーナリストだ。