■三日目
この日はガイドがアリーという奴にかわった。天気は最悪、朝から雨風が強い。ボートに荷物を乗せながら、「俺はボーンなんかどうでもいいから、ウルアとかオフショアの大物を釣りたい。朝はウルアの警戒心が低いから朝一はウルア狙いをしよう。」と言うと、「よし分かった。ウルアポイントへ行こう。」と言う。安心していたら、まず連れて行かれたのはラグーン入り口すぐ外の底に岩がゴロゴロしている深場。「ここはウルアポイントだ。ボートの上からキャストしてみろ。」とか言う。ところが、このボートのキャスティングプラットフォームは幅1mも無い滑りやすいもので、海からほんの10cmほど上に出ていて、手摺りも何も無い。おまけに海はかなりうねっている。「ここから釣れって、どういう事だ?」と訊くと、「そこから適当にキャストしてポッパーを引いてみろ。」と。「何言ってやがる。ここからこの状態でフライキャストなんかしたら海に落ちる。」と言うと、自分も出てきて確かめ、「あぁ、なるほど、じゃあウェイディングできるところに移動しよう。」と言い、ラグーン入り口の岩場に移動した。
ところが、このポイントはどう考えてもスピニングタックルでの釣り場であって、フライタックルの釣り場ではない。おまけにキャストしようとしても、利き腕の方向から強い風が吹いていて危険極まりない。しばらくできるだけの釣りはしてみたが、やはり駄目だと悟って、「おい、ここはフライで釣れる場所じゃない。スピニングタックルで釣る場所だろうが。パリスフラットへ連れて行け。すぐそこだろう?」と指示した。これでこのガイドはフライでウルアを釣るという事に関しては無能だと悟った。相変わらずの雨の中をパリスフラットでウルアを探してウロウロしてみたが、全く見当たらない。これ以上この無能ガイドに変な所へ連れて行かれるのはゴメンだと思い、「もうウルアはいいから、ボートでオフショアへ出よう。トローリングだ。」と指示した。オフショアのトローリングならガイドの無能さは余り影響しないだろうと考えたわけだ。
早速トローリングのセットアップをし、二日目と同じコースでトローリングを始めた。が、風もうねりも二日目の比ではない。ボートがザッパンザッパン上下左右に揺れる。船に弱い私はシーバンドなる酔い止め具を着けてはいたが、だんだんと微妙になってきた。トローリングを始めて2時間もしただろうか。急に凄い音を立ててバッキングが出始めた。「サワラだ!」とアリーが叫ぶ。「やったぜ!今日こそは捕ってやる。今夜の刺身だ!」と私も叫んで慎重にドラッグを強くした。300mも走ったろうか。やっと魚が止まった。が、簡単には寄ってこない。ゆっくりポンピングしながら巻き取り始めてしばらくすると、また突っ走った。「こいつはデカイぞ!」とアリー。二度目の走りは短かった。こいつは捕ったと思いつつ、ポンピングを始めた。と、またしても手応えが無くなった。「なんだ?バレタか?どうなってんだ?」と言いつつラインをどんどん巻き取った。やっと戻ってきたリーダーを見て愕然とした。なんと、ワイヤーリーダーを固定してあった金具が外れてしまっていた。「何じゃこりゃあ?プロが作った仕掛けなのに、ふざけやがって〜」と私がこぼすと、「次のを付ける前にリーダーを点検してみよう。」とアリーが言い、プロが作ったフライ・ワイヤーシステムの強度を手で調べ始めた。単に両手で持って引っ張るだけだが、こんなので簡単に切れたり外れたりするようでは話にならない。残念ながら、プロに作ってもらったオフショアのリーダー付きフライはことごとくビミ二の結び目か、ワイヤーの止め具で壊れてしまった。仕方ないので、アリーはワイヤーリーダーだけを取り外し、仕掛けを作り直してくれた。
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