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五日目

 この日は久々に朝から天気が良かった。おまけに、アリーが体調をこわしたとかで、代わりにヨブという口数が少ない誠実そうなガイドが付いてくれた。彼に「俺はウルアだけが釣りたいんだ。」と言うと、「任せとけ。」と心強い言葉だった。陸からウルア狙いならYサイトだという事で、ホテルからかなり離れたYサイトというフラットへ行った。この日も12番と16番を準備したが、メインはやはり16番だった。

 最初に行ったポイントは、これまで見たフラットのウルアポイントの中で一番良さそうな感じがした。正面、右側、そして左側と、三方向がなだらかなかけ上がりになっており、水通しも良さそうだ。いかにもウルアが深場からボーンフィッシュ等の餌を狙いに来そうなポイントだった。見ると、ボーンフィッシュも結構うろうろしている。ここでかなりの間ウルアが来るのを待ったが、影は無し。その代わり、5〜6ポンドありそうなボーンがしつこく20m以内をうろうろしていたので、12番ロッドにボーン用リーダーと6番のフライを付けて狙ったら、一発で喰った。一旦沖に向かって走った後、こちらに戻って来て、浅場に立っていた私から3mほどの所に来て私に気付き、慌てて反対側へすっ飛んで行った。こんな事をしててウルアチャンスを逃したら目も当てられないと思い、強引に止めようとしたら、案の定フックが伸びてバレテしまった。又長が55cm以上ありそうな奴だったが、オアフではよく見るサイズなので、どうでもよかった。ヨブも完全にウルア狙いの気分になっているので、私が殆どわざとそのボーンをバラシタのを見ても表情一つ変えなかった。このポイントでは2時間以上粘ったが、結局ウルアを見る事はなく、次のポイントへ移った。

 次のポイントは、これまた素晴らしいウルアポイントで、最初のポイントと似たストラクチャーで、やや深め、やや水通しが良さそう、という感じだった。私は小さな岬のようになった場所から膝まで立ち込み、左右前方を睨み続けた。すると、しばらくして黒っぽい大きな影が浅場に凄い速さで入ってきた。「ウルアだ!」とヨブがその方を指し、同時に私はキャストの体制に入った。が、入ってきた時と同じ速さであっと言う間に沖の深みへ戻って行ってしまった。しかし、これでこのポイントで待っていればウルアが入ってくると自信がついたので、ここで待ち伏せする戦法に出た。この後も、様々なサイズのウルアが浅瀬に入って出て行ったが、余りの速さになかなか良いキャストを決められなかった。

 しかし遂にその時がやってきた。2匹のペアで浅瀬に入ってきたウルアの前方数メートルのところにストリーマーをキャストし、すぐにリトリーヴを始めると、2匹とも猛追して何度もフライを喰おうとして襲い掛かった。が、他のウルア同様動くストリーマーを捕らえるのが下手で、私から5〜6mのところまで来てしまった。こちらに気付けばすぐに逃げるのは分かっているので、すぐにストリーマーを水から抜き、見失った獲物を探してうろうろするウルアの横2m位のところにキャストしなおした。次の瞬間、一匹が静止しているストリーマーに猛然と喰らいついた。フライを喰ったのを確認して、短いストリッピングストライクでフックセットした。完璧なフックセットだった。

 そこから奴は猛然と深場を目指して走り始めた。私はリールから出ていたラインがロッドやリールに絡まないようにコントロールしながらラインを送り出し、魚がリールからラインを引っ張り出し始めるとすぐにMakoのドラッグを締めにかかった。まずは10ポンド。これは全く効果が無かった。12ポンドも駄目だ。最大の14ポンドまで締めると、さすがにラインが出るスピードが落ち、スプールに手をあてて更にブレーキをかけてやった。16番ロッドがバットまで曲がっているが、余裕がある。バッキングも10mほど出されてはいたが、魚はそう遠くない。14ポンドのドラッグに左手の押さえで、魚がラインを出せなくなり横に走り始めた。こうなったらこっちのものだ。ロッドパワーを生かして強引に寄せ始め、最後まで抵抗するウルアをギリギリとリールで巻き取った。

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 この間にチェストパックからカメラを取り出して陸で見ているガイドに渡して、ファイト中の写真を撮ってくれと頼む余裕まであった。こうして最後は水面でバシャバシャ暴れるウルアを手元まで寄せて、ポケットから$1ショップで買ったブカブカの皮手袋を出して左手に着け、前に横たわるウルアの尾を掴んで持ち上げた。
ボートから見たラグーン。いたる所にフラットが点在している

「やったぜ、まずは一匹!これで10ポンドちょいくらいか?」とヨブに言うと、「とんでもない。そいつは軽く15ポンドは超えて20ポンド近いぞ。いいサイズだ。」とヨブ。これで自信がついた。20ポンド弱をこんなに簡単に片付けられるなら、サーフで100ポンドクラスが掛かってもある程度は勝負になると確信した。80ポンドのティペットを見ると、ウルアの歯でかなり痛んでいたので、ちょっと切り落としてストリーマーを結び直した。当然この程度のサイズでは満足できなかった。

 この後は潮が止まったのか、浅瀬に入ってくるウルアがなくなり、ブラインドキャストを繰り返した。ブラインドキャストを始めて一時間も経った頃、そろそろ諦めてポイントを移動しようかと思い始めていたら、ファーストリトリーヴしていたストリーマーの後を猛然と追いかけてくるウルアが目に入った。10数メートルのところでちょっと止めてやると、ガブッと喰らいついた。左手でテンションをかけながらストリッピングバスケットの中のラインを送り出してやると、すぐさまドラッグを最大の14ポンドに上げ、左手でスプールを押さえて走りを止めた。ちょっとだけラインを引きずり出されたが、すぐに横に走り始め、最初の一匹の時よりもロッドに乗せて強引に引っ張ると、抵抗しきれずに寄ってきた。後は容赦せずにギリギリと巻き取るだけだった。巻き取る途中で二度走ろうとしたが、ちょっとだけラインを出されただけで、結局バッキングは見ないまま足元まで寄せ、手袋を出して左手で尾を掴み、右手でティペットを持ってウルアを持ち上げた。

 ヨブは「これはさっきのよりも少し大きいぞ。20ポンド近い。」と言い、渡したカメラで写真を撮ってくれた。「よ〜し、今度は40ポンドオーバーだ!」と気合を入れてブラインドキャストを続けたが、潮が引き始めた所為か、この後は全くウルアを見なかった。

 しばらくすると引き上げる時間になり、この日はこれで諦める事にした。この後ホテルでヘッドガイドに頼み、翌日私に付く予定だったアリーを外してヨブを付けるように頼んだ。ついでにアリーの問題点を指摘して苦情を言うと、ホテルのマネージャーが出てきて、「実はアリーについては過去にも何回か客から苦情を受けたので改善するように警告を出した事があります。最近は問題無かったので大丈夫だと思っていたのですが、すみませんでした。この先もガイドが気に入らなければ遠慮せずにすぐに知らせて下さい。」と言って何度も謝り、6日目はヨブを付けると約束してくれた。クリスマス島に行かれる方は、あてがわれたガイドに納得できなければ遠慮せずにガイドを変えるように要求するとよい。