引退のないスポーツ

吉田沙保里の引退会見を見てふと思い出した。

昨年10月に訪れた高知アカメ釣りでの事、筏へ乗るために渡船宿へ着いたのは薄暗い時間帯。その日は僕ら以外に数名のお客さんがいるとの事だった。出発時間が迫る頃、ギリギリのタイミングで一台のワゴン車が到着し、頭を深々と下げながら降りてきたおじさんは慌てるように釣り道具を下ろし始めた。筏の釣りは意外と荷物が多く15キロを超えるダンゴ餌の他にクーラーや釣り道具、そして防寒具に食料などで結構な荷物になる。

その道具を船に詰め込みようやく出船かと思いきや、そのおじさんは船には乗らず、その後ろから歩いてきた足元がおぼつかないご老人、つまりはその方のお父さんらしき方が、体を支えられながら乗船してきた。歳の頃は80歳はとうに越えているだろうか。

船が走り出し筏までの距離はおよそ10分。当然、筏に乗り移る時はその息子さんのサポートはないので、そのご老体を労わり皆で荷物を降ろし老人の釣りたい釣り座へと導いた。その後私はその方が海へ落ちやしないかとヒヤヒヤしながら見ていたが、釣りの作業は手慣れたもので、釣りだけは生涯現役なんだなと感じた次第。船をこぎながら釣りをしているその姿は、なんとも愛らしかった。

そう今から30数年前の桂川では、足が不自由な友達を背負って釣り場へ降りてきた人と遭遇したこともある。その方はパイプ椅子を川辺に据えて、そこへフライフィッシングの出で立ちの友達を置いて彼は上流へと行った。椅子に座ったままの彼を見て私は少し不安になり声を掛けてみると、

「私は動けないので、この場所だけイブニングライズを楽しませてください。」と言われ、私は快諾し下流のポイントを楽しんだ。

イブニングの釣りを終えてその人が気になっていたので見に行くと、暗がりの中でちょうど友達が背負って帰り仕度をしている最中であった。持つべきものは友ですな。

釣りはスポーツの一つと私は思っていますが、ここで私は宣言します。

私は釣りを生涯現役で頑張ります(そんな事、皆さんにはどうでも良い事ですが)。

この業界、先輩で言えばマッキーズクリークの宮坂さんもまだ現役でお店と釣りを楽しんでいらっしゃいますので、私の釣り人生はまだまだ、死ぬまで現役で釣り続けられます。足が動かなくなったら、私は這ってでも釣りへ行って見せますヨ(笑)

気がつけば半世紀以上過ぎた人生ですが、これからも『釣り時々昼寝』で楽しんでまいります。