サクラマス遠征の後はファーガスの里帰りの旅

私はマルチアングラーなので、サクラマス遠征に費やす時間は年に5〜7日程度で毎年サクラマスが釣れる訳ではありません。それ以外に関東圏でシーズン中にずっとウェットをスイングしている訳ですが、関東圏のサクラマスは数年に一度掛かれば良い方で、さらに釣れない。またサラマスの価値を下げたくない私は、一つの河川でサクラマスを一本釣るとその翌年までその川では狙わない様にしてまます(日に2本釣ってしまった事もありますが・・)。なので私の人生はどんなに頑張ってもサクラマスはあと10数本釣れるかどうかという稀少な魚なので、釣れた時はつい目頭が熱くなってしまうのです。

今回の遠征最終日にサクラマスをキャッチする数時間前には宿のおじさんに延泊をお願いしていたので、釣れた後は宿に戻ってひとりで祝杯し早めの就寝。そして余った翌日は岩手県へ出向いてファーガスロッドの里帰りをしようというブログ的な企画を考えてました。丁度つり人社から『THE FIBER GLASS FLY RODS』が発刊されているので、タイムリーな話題になるかな?

ファーガスとハーミットの繋がりはファーガスの社長であるNくんが大学生時代にハーミットのお客さんとして来ていた話は、アクティブハイカーのインプレッションに書いた通り。 「サクラマス釣れたら切り上げて、ファーガスに遊びに行くよ。」とメールはしていたのだけれど、前日の電話で工房がお休みにも関わらず快く会社を開けてくれる事となった。遠野で生まれたこのロッドはどんな所で作られ、そして地域にどう馴染んでいるのかを知りたかったのと、そして何よりもお店で話をしたことはあっても一緒に釣りをしたことがないNくんとの釣りを楽しみに岩手へと向かったのです。

ファーガスの工房は北上川水系稗貫川のほとりにあり、森とぶどう園に囲まれた緑豊かなみちのくの地。新しいロッドをテストしたければ、ちょっと車で走ればすぐに釣りができる点は、モンタナ州ツインブリッジにあるウィンストンの工場さながらである。

工房の大きさはウィンストンのバンブーロッド工房のそれと同じぐらいの大きさで10畳ほどのスペースが2部屋あり、マンドレイル(ロッドを巻くための芯金)やグラス素材をカットする作業台、ラッピングマシン、旋盤、塗装台など所狭しと並べてあるが、二人で動くには充分な広さが確保されていた。もちろん工房はとても綺麗に整理整頓されている。

ファーガスは今年5周年でその記念ロッドを製作中という事だが、すでに5ヶ月は過ぎようとしているのにのんびりと制作しているあたりは金儲けというより、より良いロッドを作るために時間を掛けていると言っても過言ではない。ま、本当は宇田さんもNくんも釣りが忙しいだけなんですけれどね(笑)。釣り好きが高じて竿を作るのだから当たり前の事なのです。

真面目な話をひとしきりした後は私の釣りの虫がウズウズ、と言うより私が使っているファーガスロッドが「魚が釣りたい!」というので、Nくんにポイントを案内してもらう事になった。遠野周辺の川は川沿いに集落が開け田畑の隙間を縫う様に流れている小規模な流れ。草木に覆われアップストリームで狙うのだが、両側の草木に阻まれるのを考えながらキャストして狙う。そんな流れに立ち、ファーガスロッドを一振り。浅瀬からは新子のヤマメ、ちょっとした深みから2年生のヤマメが沢山お目見えする。雪代がまだ収まっていないのでこれからがハイシーズンなのであるが、私が釣りを楽しんでいる以上に私のファーガスロッドがこの地で釣りを楽しんでいるかのように思えた、サクラマスとは対照的な穏やかな釣りを堪能しましたとさ。

そんなファーガス周辺の写真は以下の通り。このメーカーのロッド製作の姿勢や意気込みのさらに突っ込んだ話を知りたい方は、つり人社から『THE FIBER GLASS FLY RODS』をご覧くださいまし。

ファーガスロッドの工房の扉
ファーガスロッドが故郷に帰るの図。今回はアクティブハイカーとフォレストバムを持って行ったが、ゆったりとした雰囲気に合っているフォレストバムの7.6フィート3番で岩手の流れを楽しむことに。
ファーガスロッド
左が宇田バンブーの宇田さん。そして右が社長のNくん。将来を見据えてNくんに社長を任せたので、これからも発展しながら成長し続けるでしょう。これからの展開が楽しみです。
グラス素材
グラス素材(プリプレグ)はこんな感じでロールになっているのだが、そのまま放置すると硬くなってしまうので、冷蔵庫にて保管んされる。現在のグラスロッドは弾性率が高く軽くなっているので、昔とは比べ物にならないくらい、細くてもしなやかで張りのあるロッドが生まれる。
マンドレイル
このマンドレルと言われる鉄芯にグラス素材を複合して巻かれることでテーパーのあるロッド素材が作られる。さらにその上にテープで巻いて、それを焼き窯入れてロッドブランクになる。ロッドは巻きつけるグラス素材のカットや他の素材を複合することで、マンドレイルのテーパーと合わさってアクションが生まれるのだが、そのカットデザインは職人の経験によるもの。その前進であるカムパネラから計算すれば26年以上も作り続けている工房なので、フライロッド作りに関してはプロ中のプロなのである。
ファーガスの旋盤
リールシートのフィラーとグリップはこの旋盤で削り出される。ちなみにハーミットでは昔旋盤を売っていた時代があるのですよ。ハーミットで旋盤を購入した方はその後に旋盤の世界にハマってしまい、最終的にフライリールを作っていた方もいました(後ハーミットフライリールの制作者になった)。フライフィッシングは釣りの楽しさはもちろんのこと、フライタイングをはじめ物をクリエイトする集団であるとも言えます。
コルク
重ね合わせたコルクとロッドを焼く為に窯の温度調整するスイッチ。肝心のロッドを焼くロッカーを写すのを忘れましたが、まさしく一般的な会社にあるロッカーで、その中にロッドを吊り下げて焼くのです。ちなみに焼くといっても焦げ目の付かないトースターみたいなもので、たいして高い温度では無いんです。
遠野でフライフィッシング
私のファーガスロッドが釣りをしたいとせがむので、Nくんを急かすように工房を出て、近くの川でフライフィッシング。Nくんはアクティブハイカーを使い、私はフォレストバム。さすがロッド制作者だけあって、自分と一体化したようなキャスティングをしていました。遠野の川はこんな感じの場所が多く、ヤマメがそこらじゅうから飛び出てきます。季節がまだ少し早かったので大物との出会いはなかったけれど、私よりもロッドが岩手の魚とのコンタクトを楽しんでいました。いいな、遠野の釣り
遠野のヤマメ
この日は残念ながらとても寒く魚の反応は弱かった。それでも良さげなポイントからは2年生のヤマメが沢山遊んでくれるのです。こういった豊かな川が関東にもあれば良いのに。
トンボ
ここ数年トンボの数が激減しているので、ウェーダーで休憩するトンボを見て喜ぶ私。たまたま私のフライの横に止まってました。トンボはそこの自然の豊かさのバロメーター。いつまでも河原に沢山トンボが飛び続ける川であって欲しいです。
遠野のヤマメ
かくして、私の東北遠征は幕を閉じました。とはいうもののフライフィッシングシーズンは真っ只中。私は西へ北へとこれからも魚を求めて各地へ奔走いたします。