死体のバラし方

こう言う風に書くと意味深なので興味を持つ人がいるかもしれませんが、今回はオス雉のコンプリートをどうバラすかと言う事と、その部位の使い方の説明です。この雉のお肉は美味しく頂いた余りですので、無駄のないのがフライフィッシング。

よくフライフィッシングは魚をキャッチアンドリリースをする高貴な釣りだと誤解している方がいますが、そうではありません。そもそもフライをやる人はロッド(竿)&ガン(銃)が本来の姿でして、冬は釣りができないので、山で鳥や鹿を打ちその肉を頂くという生活。そしてその余りとして生まれた副産物の毛を利用して毛針を巻くのです。巻いた毛ばりは春になったら魚釣りをし、毛ばりで釣れた魚を食べるという、人間の本来あるべき生活の中にフライフィッシングがあったのです。

現代は誰かが代わりに撃ってきた鳥の羽根でフライを巻き、釣った魚を食べないから逃がすのでスポーツフィッシングと言われ、決して褒められた行為をしている訳ではありませんので、釣りをしない人からは理解できないでしょう。でも僕らは釣りが好きだから、食べない時は少しでも魚に生き残ってもらいたいので、最低限のダメージで逃して、また新しい世代が生まれて欲しいと願ってます。

話は逸れましたがオス雉です。私はハンティングをしないので、お友達が撃ってきてくれて、肉は全部食べた余りをコンプリートの状態で買い取ります。でもコンプリートって皆さんはこの材料をどう巻くのかわからない人が多いようなので、それを少し説明しようかと言う今回のネタ。おっと、ここではマテリアルのバラし方と解説だけなので、実際にそのマテリアルを使ってのフライの紹介はまた今度。

と言っても、この時期釣りと仕事が両方忙しくなるので、いつになるかは未定でゴザイマス。

雄雉
ハーミットで売っている状態はこんな形。他のお店と違ってお友達が持ってくるので、面白がって完全なコンプリートで持ち込んできます。頭は経年変化が早いので、お店で落とすようにしました。 一般的に仕入れるものは尾っぽはすでに切ってあり、ボディとテールのコンプリートはすでにバラバラで入ってきます。
コンプリートテール
コンプリートテールの後ろに隠れるサイドテールとでも言うべき部分でしょうか。よくコックフェザントのテールをウイングにしているパターンがありますが、真似をしても上手く巻けないと言う方は、センターテールで巻いてます(センターテールはニンフのテール&ボディ材です)。でもこのサイドテールは単品で売ってませんから、コンプリートを買うかコンプリートテールを買わないと手に入りません。その縞模様はスペックルドフェザントと大差はないんです。価格が安い上にとっても綺麗。一羽あればかなりの量が取れます。
コックフェザントコンプリートウイング
羽はボディからもげますので素手で捥いじゃいましょう。これが右のウイング。羽は大きく分けて風を受ける先端側に近いプライマリーウイングとセカンダリーウイングがあります。ちょうど真ん中に境目があるのとカラーが違うのでわかりやすいです。プレイマリーウイングはドライフライのウイング用で、羽が反り返っている内側を使います。セカンダリーウイングはウェットウイング用で、羽の外側(風が当たる前側)を使います。ウェットのウイングは縞々が入っている方が人気がありますが、コックフェザントのクイルは個体差が結構あります。
剣羽根(ケンバネ)
そのプライマリーウイングの風が一番当たる外側の付け根に近いところに一枚だけ隠れている羽が剣羽根(ケンバネ)と言い、テンカラ で使う蓑毛(ミノゲ)。1本を2本に割いて使うので、一羽のキジで4本の毛針しか巻けない貴重な部位です。コンプリートを買うと付いてますが、ウイングだけを買うと大抵抜かれて販売してます(別売されちゃいます)。なので、剣羽根で巻きたいテンカラ師はコンプリートで買う必要がります(そもそもテンカラ職漁師は冬の間に自分で雉を獲ります)。最近ではお店でこうやってバラさない限り販売に回せないので、高価になります。
カバーウイング
よく「ボディの毛は蓑毛(ソフトハックル)としては長くて巻きづらい」と言う方がいますが、違います。お店でこうしてバラして売っても、ハックルのコンプリートと同じで使いたい長さを持った部位は沢山は生えてませんから、欲しい大きさは小袋購入ではいつでも買える訳ではありません。それがコンプリートだと色々な部位から小さな毛を選んで使えるので、フック(鈎)の大きにあった材料が使いたい放題なんです。特にウイングの付け根や首回りは小さく、とても使いやすいんですよ。全体の量を考えると小袋は高価です。
コックフェザントクイル
クイルを引っこ抜く時は軍手とジプロックを用意。軍手を使って一本ずつ引っこ抜き、根元についている脂肪は軍手で取りましょう。左右取り終わったら、左右別々にジプロックに保管すると便利。セカンダリーウイングはウェット用で、この縞々の部分を使います。ヘンフェザントクイル(メス雉)よりも細かな模様が入るのが特徴です。
バイオット
通常捨てている部分ですが、プライマリークイルの使わない風に当たる側は、バイオットと言います。なんか聞いた事ないですか?そうです、グースバイオット。あれはグース(ガチョウ)の同じ部位を使ったもの。このキジのバイオットを使うとタンカラーの虫っぽいボディが作れます。数本だけ違うカラーを巻きたい時は、コピックで塗っちゃいましょう。
リングネックフェザー
雄雉を買うとリングネックフェザーだけで三種類以上のカラーで蓑毛(フライで言うソフトハックル)が巻けて、さらにボディフェザーはストリーマーのチークやボディ材、そしてイントルーダーのハックルに使えます。私みたいにフライタイイングの知恵が付いてしまうと、見ているだけで色々な妄想フライが巻けてしまいます。こうしてバラしていると巻きたくなって仕方がないのですが、本日はこれらをバラしてお店で販売するのが目的。仕事しなきゃ・・。
雉の羽根
こうしてできるゴミの山。コンプリートを買った皆さんは完全に分解する必要はありませんから、ゴミは出ません。こうして見ると勿体無いなぁ。やっぱり雉はお肉から羽根まで捨てることがほとんど無い貴重な鳥です。

 

投稿者:

Hermit55

ハーミット店主の釣行記やよもやま話です。 お店にいる時間の方が長いので、釣りよりも店の話の方が多いかもしれません。漢字変換ミスが多々ありますが、見つけならが直しますので、ご勘弁を。