オービスの2025年新製品であるスーパーファイングラファイトをインプレッションしてみる

私がフライを始めた1970年代後半はまだグラス全盛の時代で、ようやくグラファイトロッドが見え隠れし始めた時期で、その先駆けとして出てきたのがオービスやフェンウィックであり、僕らには憧れのロッドでした。高校生になって初めてアルバイトしたマクドナルドの時給が¥380スタートだったので、学校終わりに4時間働いても月に3万円ほどしか貰えず、7.5万円のオービスグラファイトを手にするのにどれだけ苦労したことか。

私はお金を貯めてセブンイレブンを手にしてのですが、このシリーズにはロッドそれぞれに名前があった事で、車と同じような感覚で愛着が湧いていたのは確かです。そんなオービスのグラファイトですが、今年は満を辞して復刻しました。今回はティムコさんから全てのモデルをお借りする事ができたので、そのインプレッションを個別に書いていきたいと思います。

当時は数多くのモデルがありましたが、今回は低番手で人気があったモデル5本がラインナップ。全てシガーグリップのアップロックスクリューで、現在のオービスロッドと統一されたデザインになり、バットの部分に淡いクリーム色の下地に一見すると手描き文字に見える行書で飾られたロッドインデックスが書かれています。

ロッドのアクションはミディアムからミディアムファーストという雰囲気で、オービスらしい真ん中ら辺が少し硬く、ティップとバット近くが曲がり込むという当時と変わらないアクションです。しかしながら現在のグラファイトを使用しているので、当時のようなロッドストップの後にくる反動(ボヨヨンとなってしまう)は無く、繰り出されるループは綺麗に繰り出されます。

話を長くしても仕方ないので、各ロッドのインプレッションを書いていきましょう。
オービス ワンウェイト / ORVIS ONE WEIGHT
ONE WEIGHT/ 7feet 6inch・1weight・4piece
名前の通り1番ロッドであるワンウェイトは1番ですが、グラファイトロッドなので割とシャープな振り心地が特徴。当時もそうですが、やや硬いという事から2番ラインを使う人も多かったです。今回、私は1番ロッドを所有していないので、ラインは2番ラインを通して使いました。そのフィーリングは2番でも全く問題なく、ショートレンジではテンポ良くスティングがしやすい。1番ラインだともう少しシャープなイメージでキャスティングができる事でしょう。
Fine:1番を乗せてはいませんが、柔らか過ぎずキャスティングの快適さを追求したようなモデル。ロッドはスムーズな弧を描き、オービスの古き良き時代を感じさせてくれるアクション。日本ではブルックトラウトやヤマメなどの小型のトラウトをショートレンジで狙うシチュエーションを是非とも楽しんで頂きたい。
Weak:1番なのでミドルレンジからロングレンジは全くもって振りづらいのは当たり前。また1番だからグニャグニャなんでしょう?とお考えの方は対象外のロッドです。欲を言えば1番モデルなのでリールシートはリング&リングにして欲しかったなぁ。

オービス ウルトラファイン / ORVIS ULTRA FINE
ULTRA FINE/ 7feet 9inch・2weight・4piece
ロッドはスムーズなベンドカーブを描くミディアムファーストアクション。硬過ぎず柔らか過ぎず、日本の渓流での狙いが多い5〜6mレンジのキャスティングで程よいしなやかさを保ちながらアキュラシー性能があるモデル。
Fine:1970年代当時は皆2ピースで7フィート9インチという変則な長さの場合、2本が同じ長さではなかったのですが、このモデルは4ピースモデルで揃った長さなので、持ち運びの時の気遣いは当時よりも無し。また、こだわりのありそうな長さが釣り人心をくすぐるのです、なんで79なの?って。8フィートよりも若干短いことで、ティップのブレ無くコントロール性能が若干上がるのでしょう。
Weak:人それぞれですが、2番ロッドの使用頻度は3〜4番よりは少ない筈。7フィート9インチの2番のシチュエーションを考えられる人が求めるモデル。

オービスティペット/ORVIS TIPPETTIPPET 7feet 6inch・3weight・4piece
一般の方は3番ロッドを好む傾向があるので、このシリーズの中では一番需要があるモデルになるのでしょうか。3番でのシチュエーションはロッドの長さは6.6〜8.6ぐらいが多いかと思いますが、その丁度ど真ん中の長さなのでマルチに使える3番モデル。昔のオービスらしさを持ったアクションに現在のグラファイト技術が融合を感じさせるモデルです。
Fine:ロッドはミディアムアクションで近距離での繰り返しのキャストできるリズム感が扱い易かったです。キャスティングレンジとしては0〜9mくらいがお勧め。
Weak:あくまでもショートレンジからミドルレンジを主体としたモデルなので、10m以上のキャストをするときにロッドに負荷を掛けるとロッドが負けてくるので、投げ手側のスキルが問われるようになります。このシリーズ全体に言える事ですがオービスのヘリオスシと比べるとグリップはやや太めなので、特に3番以下のモデルはその太さが気になるかもしれません(もっとも削ってしまえば済むことです)。

オービス セブンイレブン | ORVIS SEVEN ELEVEN
SEVEN ELEVEN 7feet 11inch・4weight・4piece
私は1980年代前半にこのロッドを手にしたのですが、ティップを折ってしまい修理に出したら全取っ替えになったので、現在手元にあるのは1990年代後半のモデル。年代によりグリップ周りが変わるのですが、アクションはそのままで、現在のこのモデルも昔のセブンイレブンを感じられるアクションで、ラインがロッドに乗る感覚がよくわかるモデルでした。
Fine:当時のモデルと比べるとバットがやや硬めなのですが、現在のグラファイトに変わったことでロッドのバイブレーションが入らず、また軽さを感じる事ができるものに仕上がっている。4番の重さがあるのでフライのデリバリーとアキュラシーの精度も良い感じ。色々な意味でアクションは良い進化だと思います。
Weak:私みたいに昔のまんまを求めるとロッドとして違うものですが、セブンイレブンのアクションは損なわれてないと感じます。グリップが少し太めなので、このセブンイレブンとファー&ファインにはマッチしているかな。

オービス ファー&ファイン / ORVIS FAR AND FINE
FAR & FINE 7feet 9inch・5weight・4piece
5番であっても距離を必要とせず、ミドルレンジ以下での釣りを楽しみたい方に向けたミディアムファーストアクション。このロッドでお魚を掛けてもバレにくいのでは無いかと感じさせる、現在のグラファイトでも少し砕けた感じのアクションが個人的には刺さりました。
Fine:ヘリオスと比べて少し腰が砕けたような感じのアクションで、ミドルレンジを得意とするモデルでありながら、キャスティングの軽快さを持ち合わせている取り回しの良さを見受けた。快適なキャスティングレンジは0〜15m位。
Weak:5番なのでできればハーフェルのグリップでもう少し長めに作ってくれたらなぁ、というのが私のワガママな意見です。

総括すると、そのアクションが当時を思い起こさせつつ、現代の軽さと無駄のない反発力から、近距離から中距離を中心とした釣りには活躍してくれるロッドでしょう。昔のオービスを良しとする人の中には、「あぁ、昔の方が良かった。」と手に入らない無いものねだりを言う人もいるかもしれません。そんな人はビンテージを探し回ってください。でも扱いやすいのは絶対に現代のモデルですよ。また、外観に関しては賛否があると思いますが、もしこのアクションで昔のモデルのコスメを保ったら、私は全ラインナップを買っちゃうでしょう、きっと。

オービスセブンイレブン
私のセブンイレブンはコレ。下に敷いてあるのは1979年の『FLY FISHERMAN』雑誌(USA)。私が手に入れた頃はこのようなアルミのシルバーシートだったのですが、修理から帰ってきてこの後期モデルとなりました。現在のモデルと振り比べて思う事は、私のセブンイレブンで綺麗にループを作って飛ばすためには、それなりの努力が必要。それに振り抜いたときに重く感じますしね。
ORVIS CFOIII
オービスのCFOも年代によってカラーが変わりますが、私のはグレーがかった1990年代前半のもの。現在のCFOはブラックは1979年の写真に映るそれに近いですね。
セブンイレブン
今回のシリーズの中で、セブンイレブンだけ実釣しました。ヘリオスに比べるとピンピンした感じがなく、キャストして魚を掛けて寄せるまでの動作が、「滑らか」という言葉が合うロッドと感じました。