「フライフィッシングの魅力って何?」と問われる事がままあります。お魚を釣るという目的は他の釣りと同じですが、フライは釣りのプロセスをいろいろな方向から楽しんでいる節があります。もっとも簡単に釣りたければ手軽なエサ釣りで魚を釣れば良いわけですから、ややこしくて面倒くさいことを楽しんでいる人種だと思います。
フライフィッシングが他の釣りと違う魅力は主にキャスティングの技術が必要になると言う事でしょうか。キャスティングの技術を磨く事で飛距離やコントロール精度が格段に良くなり、いろいろな魚に挑戦できるようになる事が私は一番魅力を感じます。キャスティングに興味がわかない人は管理釣り場での釣果はあっても、自然河川での釣果を得るのは、なかなか難しいことでしょう。ちなみにハーミットではよくゴルフに似ていると皆さんにお伝えしてますが、私はゴルフをしません(笑)。
それともう一つフライの大きな魅力は、魚を釣るための餌であるフライ(毛ばり)が自分で簡単に作れると言う事です。一般的なエサ釣りは釣具屋さんで餌を買ってくるか、あるいは現地で虫を捕ったりミミズを掘ったり。ルアーであれば「このルアーが今爆釣してます。」のキャッチコピーに喰いついて、皆さんは買ってきて釣るのが一般的です。
フライフィッシングの場合この餌となるフライをハーミットで購入して頂いても問題ないのですが、それだと決められたエサしか使えないのと同じなんですね。菅釣りだったらそれで充分かも知れませんが、さらに広がる自分で作った餌で釣る楽しみを知らないままでいることになります。
私がフライフィッシングを始めてからタイイングし始めるのにそうは時間が掛かりませんでした。理由は簡単で当時も今もフライ1個の値段は同じくらい。なので中学生の私がフライを買い続けるなんて無理なことなので、すぐにタイイングを始めた次第。ついでにその時期に出会ったシェリダン・アンダーソン著の『フライフィッシング教書』に ”肩肘張らずにやろうや” 的な内容に感銘し、その辺にあるものでタイイングを始めたんですよ。
最初のバイスは自宅にあったラジオペンチ。フックを挟んだら握りの部分に輪ゴムを何重にも巻いて、左手をペンチに添えて巻く感じ。スレッドはミシン糸を持ち出し、ダビング材(ボディになる材料)はコタツの掛け布団にできた毛玉。それをむしり取って針の軸に巻きつけるんです。
当時の管釣りは都内では豊島園、遠征加賀フィッシングエリアで、そんな毛玉の様なフライでも魚は面白い事に釣れてくれるんです。
何でこんな話になったかと言うと、最近のお店での傾向は週末に5千円程度完成品のフライを購入し、それを持って毎週管釣りへ出かける人が多くなりました。たまに「このフライがすごい釣れたので、客注でこれを20個お願いします。」と言う事も。初心者のうちはそれでも良いですが、購入して釣ると言うだけだと数年もすれば管釣りの釣りも飽きちゃうことでしょう。
フライタイイングの道具は人に見せるもんじゃありませんので、決して高価なものは入りません。最初はインド製の数千円のバイスで十二分。ハーミットで売っているマテリアルが高いと思うのでしたら、近所の手芸屋さんで毛糸や化繊糸を買ってくださいな。管釣り用のフライだったらいくらでも作れます、そして思っている以上にどんなフライでも釣れます。そして沢山作ったフライの中で、特に釣れるフライが出てくるでしょう。でもそのフライはいつでも食いつくわけではないので、また新たな創造が生まれるのです。気がつけば自分のフライボックスはあなたの芸術でいっぱいです。
楽しそうでしょ?フライタイング。タイイングを敬遠している皆さん、肩肘張らずに、フライフィッシングを楽しみましょうや。