フライフィッシングをはじめよう(改訂版)P2

華麗なトラウトたちが人気のターゲット、管理釣り場で一匹を釣ることからスタートしよう

初めて訪れる渓流は釣り人心をくすぐり、好奇心が掻き立てられるものだ。透き通った流れに悠々と泳ぐ魚たちの姿をつい連想してしまうのは釣り人にありがちがポジティブな気持ち。実際にヒョイと覗いた橋下に虫をついばむヤマメを見つけたなら、さあ大変。私の中の少年はすぐに呼び起こされ、道具を用意して転げるようにして川面へ降りていくのである。

釣り人は水辺に立てばすぐに嫌なことなど忘れ、せせらぎの音に癒され悠々と泳ぐ魚を見て胸を熱くする。フライのタックル(仕掛け)を用意をしてキャスティング(投げる事)を開始。うまい具合にラインがスルスルと魚の少し先まで伸び、先についたフライ(毛ばり)がふわりと落ちるとガッツポーズをしたくなる。その流れていくフライをヤマメは見つけて胸ヒレを少し傾け上を向き、疑いもせずにフライを咥え込む。その瞬間、釣り人の腕は瞬時に反応し魚の生命感は振動となってロッド(釣竿)通して感じるのだ。頭の天辺からフライに至るまで全てに緊張が張り詰め、魚を逃がさないようにロッドを十分にしならせ慎重にやりとりを楽しみ、やがてそれはゆっくりとたぐり寄せられ網に納められる。横たわるボディの銀鱗が美しく輝き、ヤマメの美しさにしばし見惚れてしまうのである。

誰にとってもフライフィッシングで初めて出逢いたい魚は、こんな大自然に生きるヤマメやイワナであるだろう。フライフィッシングはこの美しい魚たちを釣り、人と自然を結びつけてくれる要となってくれる。そんな憧れの渓流魚だけれど、いきなりヤマメを釣るにはかなりハードルが高いと言える。特に釣りをフライフィッシングからスタートする方は糸を結ぶこともまならないので、ここは一つ釣れるという事を優先して近くの管理釣り場からこの釣りを楽しんでほしい。

管理釣り場によって狙う魚は様々だが、ターゲットは主にニジマス(レインボートラウト)やヤマメ、イワナなどのトラウトたち。その魚たちを実際に釣ることでその感触を確かめ、自分の足りないものが見えてくる。それを繰り返し得た知識を蓄えたら、憧れの渓流でフライフィッシングを是非楽しんでもらいたい。

胸鰭が綺麗な山女魚
渓流の宝石とも呼ばれるヤマメ(山女魚)。伏せ目がちの愛らしい目と柔らかな丸みを帯びたフォルムからこのような漢字が当てられたのかもしれない。私はこの魚に憧れて始めたのが小学校高学年の頃で、ヤマメを手中に収めるのに実に三年も掛かった。子供だったので釣りへ行くお金や足が無かったのも事実だが、情報化社会の今は昔と違い私のような試行錯誤をする必要もないので、その試練は少ないだろう。
源流の主人、イワナ
ヤマメが渓流の宝石であればイワナ(岩魚)は源流の主人と言うべき存在。釣りの教えで「イワナは岩を釣れ」とか、「岩魚は脚で釣れ」などの例えがある。いっぱい歩いて岩のスレスレに餌を流して釣りなさいという事だが、冷たい水が好きな源流域に棲むこの魚は温暖化の影響で年々生息域が狭まっている気がする。
朱点が綺麗なアマゴ
アマゴ(雨子)は一見するとヤマメ似だけれど、ボディに朱点が散りばめられているのが特徴。生息域は山梨県よりも西の本州に生息。私的な感覚ではヤマメよりもやや大らかな性格に感じる。地方により呼び名が変わり、アメゴ、アメノウオ、タナビラ、コサメなど。
ロッドがしなる管理釣り場
都会では掘って作られたポンドタイプの管釣りが中心。安近短で楽しめる釣り人の癒しのスポット。魚は養殖魚なので、はじめてのフライフィッシングでも容易に釣る事ができるのが利点。釣れる人と釣れない人の差は、フライ(毛ばり)・タックル(仕掛け)・キャスティング(投げ方)・フッキング(合わせ/魚を掛けること)、その他に魚を寄せる技術など。人よりもいっぱい釣りたいと思うのならば、やはりそれなりの努力は必要だ。
管理釣り場のレインボートラウト
管理釣り場のほとんどで釣れるのはこのレインボートラウト(ニジマス/虹鱒)。明治10年に食糧政策の一環で日本に移植されたのが最初とされているが、実際にこの魚が日本で繁殖しているのはごく一部。成長が早く強い引きでジャンプを繰り返す。釣りの楽しさと食べる楽しみを兼ね備えた魚である。
流れのある渓流タイプの管理釣り場
都会から少し足を伸ばせば、渓流をそのまま利用した管理釣り場がある。ここでは魚を騙ますためにどうやったらフライが流れに対して自然に流れる様になるかを学ぶ事ができる。管理釣り場は魚の目の前に投げなくとも、間違えて落ちた先にも魚がいるので釣る事ができるのが嬉しい。また、ニジマスは日本の養殖技術が作り出した美味しいお魚なので、全てをキャッチ&リリース(魚を放す)するのではなく、一度は自分で釣った魚を自分で料理して食べてみてほしい。

フライフィッシングをはじめよう(改訂版)

プロローグ

最近は紙媒体の書籍が減る一方で、入門書を探しても手に取れる本がなくなってしまったと感じるこの頃。webで閲覧できる入門解説も他からの引用が多いのでどれも同じ様な感じ・・。これも時代の流れなのかなと思いつつ、ふと私が2000年に書いた山海堂出版の『フライフィッシングをはじめよう』をパラパラとめくって見た。なんと若いこと若いこと(笑)、そして若気のいたりで尖った文章だこと。当時35歳だったからまぁ、こんなもんかなと思いつつも、読んでいたらなんだかこの入門書に手直ししてこのブログに綴りたくなりました。今この本はすでに絶版だし版元も潰れちゃったから問題はなさそうですしね。ついでに製作時の裏話でもしようかな(笑)

と言うことで、私の手が空いた時に『フライフィッシングをはじめよう』のページと同じ内容で今の私が書いてみます。皆さんが見て面白いかどうかは分かりませんが、これからフライフィッシングを始めようと考えている方に少しでもお役に立てればと思います。もしこの本が気になる方はアマゾンの古本などを探してみて、実際の本とこの内容を比べてどう変わっているかを楽しんでみてね。

では始まり始まり〜(不定期更新)。

次回の内容はP2「華麗なトラウトたちが人気のターゲット、管理釣り場で一匹を釣ることからスタートしよう」

*校正をする人がいないので、誤字脱字が多々出てくると思いますが、ご了承ください。

ハワイでのボーンフライフィッシング
先走って内容を書き過ぎると、後で書くことがなくなるので今回はこの辺で。写真はハワイでかつてボーンフィッシュを狙う時にカヌーで渡渉したアイランドホッピングのフライフィッシング。実際は環礁帯なので陸地はありません。

フライタイイングのすすめ

「フライフィッシングの魅力って何?」と問われる事がままあります。お魚を釣るという目的は他の釣りと同じですが、フライは釣りのプロセスをいろいろな方向から楽しんでいる節があります。もっとも簡単に釣りたければ手軽なエサ釣りで魚を釣れば良いわけですから、ややこしくて面倒くさいことを楽しんでいる人種だと思います。

フライフィッシングが他の釣りと違う魅力は主にキャスティングの技術が必要になると言う事でしょうか。キャスティングの技術を磨く事で飛距離やコントロール精度が格段に良くなり、いろいろな魚に挑戦できるようになる事が私は一番魅力を感じます。キャスティングに興味がわかない人は管理釣り場での釣果はあっても、自然河川での釣果を得るのは、なかなか難しいことでしょう。ちなみにハーミットではよくゴルフに似ていると皆さんにお伝えしてますが、私はゴルフをしません(笑)。

それともう一つフライの大きな魅力は、魚を釣るための餌であるフライ(毛ばり)が自分で簡単に作れると言う事です。一般的なエサ釣りは釣具屋さんで餌を買ってくるか、あるいは現地で虫を捕ったりミミズを掘ったり。ルアーであれば「このルアーが今爆釣してます。」のキャッチコピーに喰いついて、皆さんは買ってきて釣るのが一般的です。

フライフィッシングの場合この餌となるフライをハーミットで購入して頂いても問題ないのですが、それだと決められたエサしか使えないのと同じなんですね。菅釣りだったらそれで充分かも知れませんが、さらに広がる自分で作った餌で釣る楽しみを知らないままでいることになります。

私がフライフィッシングを始めてからタイイングし始めるのにそうは時間が掛かりませんでした。理由は簡単で当時も今もフライ1個の値段は同じくらい。なので中学生の私がフライを買い続けるなんて無理なことなので、すぐにタイイングを始めた次第。ついでにその時期に出会ったシェリダン・アンダーソン著の『フライフィッシング教書』に ”肩肘張らずにやろうや” 的な内容に感銘し、その辺にあるものでタイイングを始めたんですよ。

最初のバイスは自宅にあったラジオペンチ。フックを挟んだら握りの部分に輪ゴムを何重にも巻いて、左手をペンチに添えて巻く感じ。スレッドはミシン糸を持ち出し、ダビング材(ボディになる材料)はコタツの掛け布団にできた毛玉。それをむしり取って針の軸に巻きつけるんです。

当時の管釣りは都内では豊島園、遠征加賀フィッシングエリアで、そんな毛玉の様なフライでも魚は面白い事に釣れてくれるんです。

何でこんな話になったかと言うと、最近のお店での傾向は週末に5千円程度完成品のフライを購入し、それを持って毎週管釣りへ出かける人が多くなりました。たまに「このフライがすごい釣れたので、客注でこれを20個お願いします。」と言う事も。初心者のうちはそれでも良いですが、購入して釣ると言うだけだと数年もすれば管釣りの釣りも飽きちゃうことでしょう。

フライタイイングの道具は人に見せるもんじゃありませんので、決して高価なものは入りません。最初はインド製の数千円のバイスで十二分。ハーミットで売っているマテリアルが高いと思うのでしたら、近所の手芸屋さんで毛糸や化繊糸を買ってくださいな。管釣り用のフライだったらいくらでも作れます、そして思っている以上にどんなフライでも釣れます。そして沢山作ったフライの中で、特に釣れるフライが出てくるでしょう。でもそのフライはいつでも食いつくわけではないので、また新たな創造が生まれるのです。気がつけば自分のフライボックスはあなたの芸術でいっぱいです。

楽しそうでしょ?フライタイング。タイイングを敬遠している皆さん、肩肘張らずに、フライフィッシングを楽しみましょうや。

水面に浮いている虫が気になりだしたら、あなたも立派なフライフィッシャーマンです。それを見てこんなフライとか、きっと巻きたくなるはず。
最初はこんなキットで始めるのが良いでしょう。このキットにはタイイングツール(道具)にマテリアル(材料)とDVDの全てが入っているので、すぐに始められます。きっと眠れなくて楽しい夜になることでしょう。
売り物のコマーシャルフライはタイイング見本にするのもひとつの手。漠然と「フライを何か巻きたいので、マテリアルを揃えてください。」とお店に尋ねられても困っちゃうので、コレを巻いて見たいという見本があると材料は揃え得やすいです。たとえひとつの材料が同じものが手に入らなくても良いんです。代用品を使うことで新たなあなたのオリジナルのフライができるのですから。