シークロのリュウちゃんがこう言うのである。
「まずはA面(タンカーの風の当たる側の面)を攻めてみましょう。」
その言葉に反応し、すぐに思い浮かんだ曲を口ずさみながら私はキャストする。
「A面で恋をして〜♪ウィンクのマシンガンで僕の胸を打ち抜いてよ〜♪」
世代的に近いリュウちゃんはすぐに反応するけれど、一緒に乗った若いお客さんは何の事だか分からない。本日のシーバスも似たようなもので、フローティングミノーに劇的に反応する個体もいればノロノロと付いてくるだけで鈍感な反応のヤツもおり、どの個体がスイッチが入るのかわかりゃしない。それが本日のシーバスくん。
早朝シーバスの好条件は、ベイト(餌となる小魚)・曇天・潮の動き・微風などなど。本日はこの好条件要素のうちのベイトと曇天で、それに時々微風でシーバスのスイッチが入るという具合。沖のタンカー周りで船ベリギリギリにフローティングミノーを通すとガバチョ!と出るのだが、よく見ると船艇の赤い塗料に並行してゴミのようなものが動いており、それがシーバスが捕食しているカタクチイワシ。その動きは底石に張り付くヨシノボリやヌマチチブみたいで、動いては止まっての繰り返しで決して船から離れない。その様子を見ているとフローティングミノーはベタ付けでキャストしなくてはいけないと察しが付く。
ベイトとなる魚の行動が分かれば、僕らはそれを真似てリトリーブすれば釣れると言うもの。気がつけば連発バイトがあり釣れる釣りは楽しいなぁ。気分が良くなるとまた私はまた昭和歌謡をつい口ずさむのである。
「唇 つんと尖らせて〜♪何かたくらむ表情は〜♪」
あれ?これはナイアガラ・トライアングルではなく、大瀧詠一でしたな。世代でないと分からないお話でゴメンナサイ。
そんな感じで余裕が出てきて船長と馬鹿話を続けていると、遠くの山々の隙間から一際高い顔を覗かせる富士山の姿。二日前は赤茶けた夏の顔をしていた富士山が、今日は山頂から少しだけ粉砂糖を掛けたケーキのよう。あぁ、もう秋なんだな。シーバスのシーズンを感じつつ、本栖湖シーズンも開幕したことを実感した本日出勤前の釣りでした。