思いを込めたフライにシーバスの心ここにあらずの片想い

この秋、私はすでに何回シーバス船で東京湾へ繰り出しているのでしょうか。ランカーは時に思わせぶりに大きなフライにチェイスしてきたり、私のフライを通り越して隣りの仲間にバイトしたり。お魚の心はいつも読み切ることはできません。しかしながら経験はたくさんあるので、それを元に新たなフライを巻くのが好きな私。フライは思い浮かんだ新しい発想を盛り込み、シーバスの餌となる今季のベイト(小魚)を見てサイズを決め、前回思い通りにならなかった部分に改良点を加えて新たなパターンを生み出すのです。

釣り人は暴走族ならぬ、妄想族。

釣りへ行く前にはすでにそのシチュエーションが頭の中で妄想され、イメージトレーニングはいつでも万全。創作された新しいフライは使う前からその一挙一動が瞼の裏にある妄想の世界でモンスターが釣られているので、ボートへ乗り込む時には自信満々でポジティブな気持ち。

「さっき(前便)までボイルがすごかったので、今日は大丈夫でしょう。」なんて言われた日には、我が心そこにあらず。一投入魂、フライに魂と愛を込めてポイントへ投げ込むのです。都会の明るさを教えてくれる夜空の曇天は、星空の瞬きと違い日没直後を思わせる明るさ。その下にはロリとした光沢のある暗い海があり、キャストされた大きなフライが海面に引き波を立てながら戻って来るのが見えた。一投、二投、何事もない。さらに投げ続けると、その運動量から汗が噴き出てくる。しかし夜の海は極めて静かなのである。釣れそうな予感からか何度も同じポイントへ船を戻す船長だが、結局私のフライはシーバスに気に入って貰えられずにチェイスすることさえなく、暗い海にただ小さな引き波を引き続けるだけであった。

その後オデコ逃れのための数釣りを目指すもボイルはほとんどなく、『前便まではすごかったのに。」という言葉とは裏腹に、僅か6〜7時間で海は一変し僕らは型を見るのも難儀した横浜の夜となってしまいました。

今年の私は妄想が現実となる事が何一つもなく、その想いはいつも片想いのまま。一つも身を結ばないという事は、私はお魚の気持ちがちっとも分かってない独りよがりな釣りをしているのでしょう。それはまるで片思いの恋愛と同じなんだなぁ、と感じた夜でした。

帰りの車中ではハマショーの『片想い』がヘビーローテーションで掛かっていた事は察しの通り。私の釣りは一体どこへ向かっているのでしょう?

タガメン7号機
秋のランカーシーバス狙いに使う私の大型フライは2系統。一つがビースティーチェンジャーというジョイントフライで少し沈むもの。こちらはタガメンというフローティングミノーで、現在のモデルはチューブ・ジョイントタイプ。大きさは18センチほど。軽くて投げやすく引き波がアピールするフライ。毎回、妄想の中では相当釣っているのですが・・。
横浜の海
夜空は街の明かりを反射し、夜全体を朧げな怪しい釣れそうな空間を醸し出す。
ヒラスズキ
今回の釣行は決して何もなかったわけではありません。良い時期なので現実が妄想を上回る事がなかったと言っておきます。写真は最近よく釣れるヒラフッコ。
シーバス
タンカー周りのボイルはたくさんあったのですが、追っているベイトが小さいのに加え、シーバスのサイズも小さかったです。
シーバス
今回は各自数本の釣果でシーバスクルージングは終了し不完全燃焼。そして昨日はキャスティングスクール後に朝霞ガーデンへ行ったのですが、私の心は管釣りでは満たされなくなってしまいました、ふぅ・・。私の気持ちはどこへ向かうべきなのでしょうか? 今年もあと1ヶ月余りですが、現在は宮崎遠征に向けて体力作り中でゴザイマス・・。

ミッドナイトのシーバスフィッシングはフィッシングハイになる(シークロ)

ランカーシーバスのハイシーズンは現在進行中ですが、その週末予約は大体2ヶ月前には全て埋まっている状態。なので、最近はシーバススクールを開催するにしても週末を抑えられないので、スクールというよりはお客様の予約した船に乗せていただく日々が続いています。しかし予約をお客様任せにしたことで今度はお誘いが重複し、近々にお誘いを頂いた方はお断りする羽目になってしまいました。ですがそんな乗らなかった船の時に限ってランカーがイレグイだったなんて話を聞くので、私はとことん運が無いのだなぁと感じでいる今年のフライフィッシング。

今回「11/9の夜便のシーバスに行きませんか?」のお誘いに二つ返事で承諾したのはかなり前のこと。シーバスに関しては毎週のように出かける予定でフライもタックルも準備万端でいつでも出撃準備中だった筈。日程が近くなった頃に出船時間を確認すると、夜の23時とかなり遅い時間だと判明。そうなると終わるのが夜明けごろになるので、当日の仕事を考えると家に帰っても寝る時間が無いので店でシュラフ広げて雑魚寝かなぁ。いい歳こいてやっている事は学生時代と何ら変わらんのは、釣り人だけなのでしょうか。

普段は子供のように8〜10時間の睡眠時間を取る私にとっちゃ深夜便はかなりハードな睡眠スケジュール。なので急遽マッキー店長に日曜出勤をお願いして、私はシーバスから帰ってきたらガッツリ寝る予定にしました。さて、そんなランカーを求めて出向いたシーバスフィッシング。早速やらかしたことは現場へ着いてタックルを組み始めると、肝心のビックベイト用のスイッチロッドを忘れてきた事が判明・・。

ということで、今回は必然的にビックベイト無しになり、片手を忘れてきたような感覚での釣行となりました。お暇な方はどうぞその様子をご覧くださいまし。

本日の戒め:大物狙いは数打ちゃ当たる作戦よりも、計画的な行動を!

シーバス
ここのところ景気の良い話が多いシーバスのフライフィッシング。スイッチロッドを忘れてきた訳ですが、諦めの悪い私はとりあえず9フィート8番のロッドにスイッチロッドラインを入れて20センチ弱のフライを投げてみました。ですがロッドが折れそうなので直ぐにやめました😆
シーバス
なので今回はコノシロ絨毯を狙わずに各所の灯りの明暗部を攻めて、その中から少しでもサイズの良いのが取れればという期待を込めてのフライフィッシング。大物集結のコノシロ絨毯と違い、湾奥の明暗部は50センチ台が中心。昔だったらそれで充分楽しめたのですが、湧き上がる釣欲が満足させてくれません。
タンカー
サイズが良いシーバスは運河内の明暗よりも沖のタンカー周りの方が一回り大きいサイズ。風と潮が当たる面を考えながらシークロのリュウちゃん船長が吟味しながら良い場所を探り当てます。
シーバス
タンカーの隙間では70弱までのシーバスがお目見え。全体的に肥えているシーバスが多く、トルクのあるファイトが楽しめました。
シーバスフィッシング
隙間フェチのシーバス狙いは、係留されたタンカーとラバーバンパーの間を狙います。そのためキャスティングできるのは1名のみなので、交代制の釣り。
シーバス
隙間シーバスは沖のタンカー周りで掛かるサイズよりもさらに一回り大きく、そのトルクのある引きを存分に楽しみました。フライはEPミノーが中心。
シーバスフィッシング
普段ならばこんな時間まで起きていられない私ですが、飽きる事なく中型サイズ以上の数釣りができたので、全く寝ていないのにフィッシングハイになっている状態のまま夜明け前に終了。さて、このまま帰って爆睡することとしますか・・??
神奈川県の管釣り
何故に最後の写真が虹鱒?と思ったあなた、ハイそうです。そのまま帰らずにお客さんが某管釣りへ行くのを知っていたので、そのままそっちへ向かいました。不眠ですがフィッシングハイになった状態で、そのまま16時まで釣り続けたのでありました。私がどれだけ釣り馬鹿であるかがお分かりになりましたか😆

「ブルーライト横浜」のブルーは、夜光虫の事ではないかと思いたくなる横浜の海

横浜のシーバスへ行く度に、タイトルに『ブルーライト横浜』が入るなんて、「管理人さんは相当オヤジだなぁ・・。」と思ったあなた、昨日の横浜の海に出れば、きっとあなたも「ブルーライト横浜」を口ずさんでしまう筈です(あ、その前に平成&令和生まれの人は知らないか・・)。

今回はソルトウォーターシーバスに久々参加の手馴れと初心者を伴ってのシーバスなので、前回のランカー便と違ってユルユルな夜を楽しもうという設定で出船。しかしシークロの岡本船長からは出船前からネガティブワードが告げられた。

「数日前から赤潮が出ちゃって、夜便の釣りがかなり難しくなっちゃってます。ベイトは相変わらず小さいので、それに合わせたフライを用意してください。」

そもそもこの日は長潮の下げいっぱいスタートの時間帯だけ空いていたので、予約が埋まっておらず、その隙間をおさえたので爆釣ははなから期待はしていない。しかしながら、バーバスな状態なのかと半ば諦めモードでのスタートとなった。

空にはクレッセントが浮き、野反湖で見る夜空の1/3ほどの星が瞬いている。風は弱くフライにはちょうど良い。闇の中でボートのエンジンが低く唸りながら、トロリとした海水を巻き上げ進んでいく。埠頭を離れ程なく進み街の灯りが僕らに届かなくなった頃、スクリューの白泡がネオン色に僅かに輝き始めた夜光虫。それが京浜運河に入る頃には鮮やかなLEDライトの様になり、さらにデズニーのエレクトリカルパレードが、青一色で構成されたかの様に青い波紋を広げた。夏の夜光虫とは違い、それは澱みなく鮮明に輝いている。

ココまで電池を入れて光らせた様に光りまくると、大抵お魚の方はトント釣れなくなってしまうのが一般的。ところがラインが水面につくとそれに合わせて閃光が一直線に広がり、フライはには電池が入っているのかと思うほど着水と同時に発光する。するとその発光に向かって光の塊がが近づき、ネオンの花が開花するように飛沫が上がる。フィッシュオン!!

普段味わえない不思議な光景を見ながら、僕らは終始大騒ぎしながらシーバスフィッシングを楽しみましたとさ。そんな昨夜の様子は以下の通り。お暇な方はご覧くださいまし。

シークロのフライフィッシング
シーバスシーズンが本番に入ったので、シークロは3人体制の船長で一日6〜8便でているフル回転状態。今回は岡本船長が操船となりました。
タンカーの明暗部を狙う
湾奥は夜光虫がヒドイとの事で、出船してすぐの場所から試し撃ち。最初のうちは反応が薄かったのですが、3箇所目からはずっとシーバスの反応がありました。今回のポイントはタンカー周りの明暗部が中心。
シーバスのフライフィッシング
最近はクロダイのフラットを中心に狙うN氏は久しぶりのシーバスフィッシング。キャスティングを楽しみながら順調に数釣りを楽しんでおりました。
シーバスのフライフィッシング
しばらく進むと、こんな感じでフライラインの着水によって夜光虫が水面にネオンサインの様に広がります。
シーバスのフライフィッシング
今回はサイズというよりシーバスそのものを楽しみかったので、平均してこのサイズ。フライはゾンカーを中心にフローティングミノーなどで楽しみました。
シークロの岡本船長
岡本船長が出船する様になるとシークロのシーバスシーズンはいよいよ本物という感じ。2艇の船を3名の船長で24時間フル稼働となります。
シーバス
私も皆さんの間で適当に釣りました。ワイワイガヤガヤやりながら発光する海を見るのは楽しいものです。
シークロの夜
シーバスのボイルが始まるとそれはまるで水飛沫の花が咲いたような感じ。青いネオン色に輝く花は一瞬にして消えてしまいますが、しばらくすると別の場所でまた花開きます。
ヒラスズキ
今年に入ってシークロ出船はコンスタンスにヒラスズキが釣れる様になりました。サイズはまだフッコからセイゴサイズが主ですが、来年あたりは立派なサイズが釣れそうな予感がしてきました。
スズキのエンジンが光る。
横浜の夜のエレクトリカルパレードは時間いっぱいまで楽しみ、最後はスズキのエンジンから放たれる青白い幻想的な灯りが淡く消えていくのを見ながら終了。これからは毎週の様にシーバスへ出かける私。今後はランカー便と数釣り便が交互に楽しんでいきます。

南西諸島の反省会は東京湾で行うシーバス三銃士(横浜・シークロ)

急に涼しくなった東京湾の風は一気に秋モード。各所でコノシロを食べるランカーシーバスの話が出てきたので、先だってまで南西諸島でボーンフィッシュを追い求めた3人組は、ランカー狙いのシーバス三銃士へとなる季節。狙うは夢のメーターオーバーで、3人の合計で2.5m超え。しかしまぁここ数年の私は何事もパッとせず燻り続けているので、まだ新しいフライパターンを巻く創作意欲が沸かない。なので昨年までに巻いたタガメンやらビースティチェンジャーをかき集めて、横浜の海に出ることになった。そういえば昨シーズンはハチマルサイズは一本も取ることが出来なかったんだよなぁ・・。

全てに対して弱気な釣行になってきた私は、20センチあるフライを出船時間内引き倒す一か八かの大物狙いに固執したくはない。今回は暗いうちにササっとシーバスをキャッチしてオデコを逃れ、夜が開けたらランカー狙いに徹するという、弱気な安全牌の設定で横浜港を出港することにした。

思惑通り夜の釣りは順調で、おぼろげな灯りの下でシーバスがボイルを繰り返し、タイミングよくキャストすれば、フローティングミノーは飛沫と共に水中へ引き込まれていく。うんうん、今宵は順調だな。

太陽が横浜の街並みに色を添え始めるのと同時に、水中ではコノシロがまとまり始まる。それに合わせてシーバスボートが各所からコノシロ絨毯を目指して集結するのである。

「は〜い、今日はシークロ得々セットの日、シーバスは時間内の釣り放題プランですから、じゃんじゃん釣ってくださいね〜。」とシークロの船長であるリュウちゃんがジョークを飛ばす。確かに釣りたい放題だけれど、トップウォーターを引き倒すランカー便はキャストを続けたところで、フライへアタックするシーバスは数えるほどしかない。したがってキャッチできる数は知れている。大きなフライを20投もすると疲労が蓄積。そして自分のフライに疑心暗鬼。真っ赤に映る魚群探知機は壊れているのではと疑ってみる。やがては今日は沈めた方が釣れるのでは、と思うのである。

今回シーバス三銃士の投げるフライは全員がタガメンで、それも私が新作を作るたびに古いものを彼らにあげるので、私が使うのが最新式。そして彼らはそれぞれ零号機と4号機あたりのタガメンを結び、ひたすら投げ続けていた。最初に口火を切ったのはタガメンの零号機を使ったM氏で、それは軽さを重視したモデル。私はというとバイトはあるものの、重さが乗るような強烈なコンタクトは無し。

ふむ、今日は上ではなく沈めた方が良いのではないかと思い始める私。船長のリュウちゃんが浮かせないと釣れないぞ、というのを無視してインターミディエイトのロッドを振り始めた途端、今度はタガメン4号機で後輩がナナゴー・オーバーをヒット。

「ほら〜、フローティングでしょう。インターなんて使うから釣れないんですよ〜。」とダメ出しされてしまった。

ロッドをもう一度フローティングタックルに持ち帰ると、また海は静まり返る。
やがて、「さあ皆さん、釣り放題の時間はあとひと流しで終了ですよ。」の声が掛かり、私だけがタガメンでキャッチする事ができず、終了と相成りました。

港へ向かう船の上で私は、今回釣れた大物は全て私が巻いたタガメンなんだと言い聞かせ、なんともやるせない寂しい帰港になりました。まぁ次回へのやる気スイッチが入ったから、よしとするかな。そんな昨日の様子は以下の写真の通り。お暇な方はご覧くださいまし。

横浜の夜
朝4時スタート時点では夜景の綺麗な横浜。水面を照らすオレンジ色の灯りの下にベイトが群がり、それを狙ってシーバスがボイルする。そのベイトサイズにフライを合わせ、ボイルのタイミングでキャストすると、シーバスは水面を破ってフローティングミノーを水中へ引きずり込む。
ヒラスズキ
ポイントを運河から外海へ変えると、立派なヒラスズキがお目見え。南に多いヒラですが、温暖化と共に増え始めた気がします。
シーバス
私は夜が明け切る前に隙間フェチのシーバスをゲット。エンリコミノーを使って、停泊する船の隙間を釣るのである。
シーバスの釣り
停泊する船の隙間は約30センチ。そのラバーバンパーと船の隙間の奥の奥へフライをキャストするという、難儀を要求される。
シークロの朝便
空がブルーに染まり始め、人工建造物が色を取り戻した頃に、「そろそろだな。」とコノシロが集まるポイントへ移動する。気の早いルアー船は暗いうちからそのポイントを陣取り、僕らはブリがそのコノシロを追いかけ回して水面が炸裂している頃に到着した。
ビースティチェンジャー
コノシロが群れている時期に使うフライは17〜23センチほど。ビースティチェンジャーやら、タガメンやら。とにかく大きくて、軽くて、シルエットがはっきりしているフライを日夜考えている。
タガメン初号機
タガメン零号機でヒットしたランカー。このフライはとても軽くてシルエットがハッキリとしている。問題は水押しが弱い点。
タガメン4号機
後輩はタガメン4号機?あたりのフライでヒット。すでにタガメの形から別の生き物になったタガメンはお茶目なフライになっていた時期。水によく噛んで頭だけが水面に出ている。いずれもジョイントフライなのだが、後ろボディのシルエットがハッキリとしないのがこのモデル。それが良いのか悪いのかは、私の中で迷走中。
宴
朝便へ出かける為に起きたのは朝2時。釣りを終えて家に付き1時間の仮眠をとった後、南西諸島の反省会と称した宴が始まったのが14時。写真を見てお分かりの通り、4軒もの梯子酒を楽しむおバカな輩。家まで歩いて帰った筈の私は睡眠不足で公園で寝てしまったようで、気がついたのは真夜中だったというおバカです。

合計11日間を費やして夢を追い続けた南西諸島の釣り旅

港の木陰にいるお婆に挨拶すると、日頃の寂しさからか矢継ぎ早に釣りの話をしてきた。

「今日の満潮は12時15分。小潮だから今日は喰わないね。あたしゃ釣り好きだから、ここで色々な魚を釣ってきたよ。いつだったか、サビキで40センチを超えるクロダイを釣った事があるけれど、周りの皆には、”そいつは凄い!”と褒められたよ。ここいらじゃ釣り好きで有名なんだよ私とキミちゃんは。でも最近は腕が痛いから、こうして木陰で見ているんだよ。」

年齢を聞けば御年81歳だそうな。旦那さんはすでに亡くなったそうで、暇な時間をこうして港で過ごすという。人がほとんどいない場所だから話し相手がいないので、僕らを見つけて同じ話を繰り返し話す訳だが、やがて自分もこうなるのかと思うと、彼女の釣り自慢の話は何故か心地よい。

お昼を過ぎた頃、仲間が戻ってきて私に一言、「あれ、稲見さん、こんなところでナンパですか?」。

するとお婆は嬉しそうに、そして恥ずかしそうに微笑んだ。南国の風に吹かれて歳と共に刻まれた皺と白髪姿のお婆を見た時、ふとトラック島のインターバーさんとの思い出が蘇った。青い空と紺碧の海を持つ南国は、こんな素敵なお婆たちを育てるのだなぁ、と。

この地へボーンフィッシュを求めてやってきた僕ら。6月、7月、そしてこの10月と合わせて11日間を、ほぼこの港周辺で爆投してきた。その費用はハワイでボーンフィッシュを釣るコストのおよそ2倍である・・。その結果は時間の経過とともに盛り下がり、10月はまるで何もない。ただ爆投の日々を過ごしたのであった。費やした11日間で得たものは、南国の優しさとシークニンの味。

来年の事は年が明けたら、また考えようと思った私。
とりあえず、今年の南西諸島の釣りは幕を閉じたのでありました。

シークニン
滞在中に毎日呑んでいたシークニン・ハイ。黒糖焼酎の炭酸割りに、この島みかん(シークニン)を入れたサワーである。カボスともシークワーサーとも言えない、素朴な酸味と飲みやすさ。お土産はいつもシークニンなので、昨夜もシークニンサワーを家呑みしました。
イシミーバイ
今回はボーンフィッシュ見たさに餌釣りの道具を持ち込んだのだけれど、サーフでは何も手応えなし。仕方なしにサンゴの方へ投げ込むと、ミーバイがすぐに掛かる。
ボーンフィッシュを探す旅
前回あんなにいた波打ち際の魚たちは、今回はまるで魚影がなし。サイトフィッシングで見つけたのはボラのみで、クロダイさえ一つも見つける事ができなかった。宮崎のオオニベ狙い以上にツライ事は、いくら爆投しても外道が掛からないので、ただひたすら投げているだけなのである。それによって得たものは腕の筋肉かな?
ゴリラバーガー
流石にコレだけ滞在すると、日々の昼食を楽しむしかない。昼は定食屋で食べるか、このゴリラバーガーを食うかの二択。
エビフライ
周りの協力で新しいアイを手に入れて巻いていった、エビちゃんフライ。悲しいかな、4日間ずっと爆投してなんの反応もなし。魚っけがまるでないのである。
イシミーバイ
浅いシャローラグーンを歩き回って見つけたのはボラのみで、仕方なくブラインドで投げ込んだ珊瑚礁の周りで掛かるイシミーバイ。私を慰めてくれるターゲット。
路頭に迷う釣り人
とにかく歩いた、探した、投げた。やれることは全てやった。何が悪いかなんて私にはわからない。ただボーンフィッシュに嫌われているとしか言いようがない。
南の島
この島によく来られているフライフィッシャーマンに遭遇しお話を聞けば、この場所で釣るにはひたすら投げ続けるしかないとのアドバイス。ご自身は今までにキャッチしたのは3本との事。海外のボーンフィッシュを知っている私にとっては途方もない確率の悪さを知った日。
カニ
今までで一番何もない時間を過ごした4日間。他の釣りに浮気しないようにボーンフィッシュ狙いの道具以外は一切持ってこなかったので、私はそれをやり続けるしかなかったのである。そのおかげでネガティブの境地に陥り、釣りが段々嫌になってきた。そんな時にヤドカリやカニは私を少しだけ癒してくれた存在。
ボーンフィッシュは何処
最終日の爆投を終えタックルを仕舞い始めると、それを嘲笑うかのように目の前をGTとブルーフィンが通り過ぎていく。まぁいいさ、どうせ私はそれを狙う道具を持ち込んでないしね。コレにて2024年南西諸島でボーンフィッシュを追い求める旅は幕を閉じました。

 

初心者が最短何ヶ月でシーバスをキャッチできるかを検証してみた件

「次のポイントで最後になります。」

シークロの伊藤船長にそう言われた時、頭の中にはファイナルカウントダウンのサビである、〜♪ It’s the final countdown♪〜 が脳内に流れ込んできた。私の場合映画好きでもあるので、カーク・ダグラス主演の同名『ファイナル・カウントダウン』も映像として出てくるのだけれど、今回はロックミュージックの話。

この曲はスェーデン出身のロックバンドであるヨーロッパが歌うのですが、私は決して好んで聞いていた訳ではなく、聴かされていたと言った方が良いのかな? 少し昔の話。私はとあるデパートへ出向で働かされていた事があるのです。その出向先で「本日の館内売り上げ目標まであと一歩」と言うところで、館内の社員を鼓舞するために、BGMとしてこの曲がかかっていたのです。なので、日々聴かされていたんですが、あともう少し売らねばならぬと思うと溜息が出てしまい、あまり良いイメージはありません。思えばこれ以外に雨が降り始めれば「雨に歌えば」が掛かるし、各フロアー毎の売り上げ達成局なんてのもありましたなぁ(我がフロアはバン・ヘレンのジャンプだったかな?)。

それはともかく、昨夜(今日)のシーバスの話。フライフィッシングはとかくキャスティングが大事なスポーツ。フライ人口が増えていかないのはキャスティングの難しさが理由の一つでもあり、逆にそのキャスティングが楽しくなってしまうと、フライ沼から抜け出せなくなると言うものであります。しかしながら”キャスティングは難しいぞ!” の、一点張りの業界だといつまで経ってもそれに躊躇して若者が入ってこないので、今回は始めて間も無い方がシーバスをキャッチするまでに、最短でどれだけの時間が必要かを検証しに行きました。お暇な方は以下シーバスフィッシングの様子をご覧くださいまし。

今回の戒め:キャスティングの難しさを伝えるよりもフライの楽しさをアピールする事に努めよ!

横浜のシーバス
今回シーバスにトライする方はフライ歴がまだ半年も経っていません。キャスティングレベルで言えばまだフォルスキャストのみで、実際にラインがターンする距離は10mくらいでしょうか。とりあえず私はそのサポートにまわり、釣れるまではこの私の竿は出さない事にしました。
シーバスのフライフィッシング
キャスティングスクールへの参加は数回のみですが自主練していらっしゃるので、コツを思い出せばフライラインのターンは5回に1度くらいの確率でビシッと決まります。但しまだ管釣り中心の釣りなので、シーバスがバイトしてもついロッドでアワセてしまいがち。それでも時間と共にラインハンドでのアワセを習得徐々にそのチャンスが増えていきます。
東京湾のシーバス
何度かのスッポ抜け、あるいはバーブレスフックによるラインテンションが抜けた際のバラシを経験した後、見事にシーバスをゲット。ボートへ乗ってキャッチするまでの時間は僅か1時間ほど検証終了。これはビギナーズラックではなく、釣りたいという気持ちから予習やきちんと自主キャス練をしてきた賜物でしょう。
横浜のシーバス
最初の一本を無事キャッチして頂いたことで私は一安心し、後方からフライロッドを振ることに。サイズはそこそこでしたが、今夜のシーバスはすこぶる反応が良かったです。
ヒラスズキ
コツを掴み始めるとあとは簡単。自分のキャストが決まった瞬間にシーバスはもんどりうって出てきます。初挑戦のゲストはヒラフッコをも仕留め、一夜にしてシーバス2種目を達成! 持っている人は持ってますなぁ。
横浜の夜
今回は明暗部がはっきりした小場所が中心でしたが、魚が全く出なかったポイントは一つも無く、必ずシーバスからのコンタクトがあったので、お魚はかなり入ってきている状態。あとはエサとなるベイトがもう少し入ってくれば、シーバスの活性は更に良くなる事でしょう。
シーバスフィッシング
気がつけば私がサポートせずとも次から次へとヒットする今回のゲスト。こんな良い日に当たった人はもうシーバス沼にどっぷりと使ってしまう事でしょう。
横浜の暑い夜
ファイナルカウントダウンのイントロが私の脳内をめぐり、ラスト数キャストと言われてもファイナルフィッシュをきっちりゲットして頂いた今回。シークロの伊藤船長を含め、シーバスのバイトを見て終始歓喜と笑顔が溢れていたシーバスフィッシングでした。今回のシーバスサイズは30〜55センチまででヒット数は数知れず。食べているベイトはイワシとサッパで前回同様の7センチほど。数が釣れたのはゾンカーで、フローティングミノーの方は魚のサイズが良かったです。今回の検証でわかったことは、条件さえ揃えば始めて間も無い人でもシーバスをキャッチすることは可能だと言う事。かといって相手は生き物ですから対価を払っても身を結ばない日もあるでしょう。いつかはやりたいでは無く、まずは何事もチャレンジあるのみですな。皆さんも是非楽しんでくださいまし。

釣り人的理想のおデートはこんな感じかなぁ、と思った横浜港の夜(シーバス)

当店に来店する女性が占める割合は全体の5パーセントも無いと思います。一昔前までの私的考察を述べれば「釣具業界は牛丼屋と一緒」というのが業界の印象で、女性の来店はとても少ないのです。牛丼屋で女性が一人店内で食べるのは結構勇気がいると思いますが、最近は女性お一人で食事をするのを見かける様になりましたよね。釣具屋さんも昔に比べたら少しは増えたものの、それでも圧倒的に男性のスポーツというイメージが強いのがこの業界でしょうか。人口のほぼ半分しか商売にしていなかった業界なので、先細りの現状を踏まえて昨今はやたらと釣りガールが増え、その参入を助長しているのが未来に危機感を持った釣具業界だと思います。

昨日の夜はここ数年フライフィッシングに情熱を注いでいるご夫婦と一緒に釣りをさせて頂きました。多くの方はご主人の釣り好きについて行くという奥様方は多いのですが、キャスティングを学び、前向きに楽しんでいる奥様方を見ていると、こちらもつい応援に熱が入ってしまうのであります。

世の男性は趣味で女性が対等な立場になるとマウントをとりたがる男性が多く、釣りを始めると「キャスティングがダメだ。」とか、「そんなんリトリーブじゃ釣れない。」なんてつい言いがち。さらに自分が釣れないと不機嫌になったしまう方も多いんです。しかしこのご主人はいつも奥様を応援しつつ、常に仲睦まじく対等に釣りを楽しんでいる姿を節々に感じ、後ろから見ていて私の顔はついホッコリしてしまうのであります。なんか釣りデートをしている最中に私が邪魔している感じがしてしまいました😆

さて、そんな昨日の横浜港。シークロのりゅうちゃんと私は2024年秋シーズンのスタート宣言をする為に多くのポイントを散策。横浜の海は小さいながらもシーバスは満遍なくいる事を確認したので、勝手に2024シーバス秋シーズンの開幕を宣言いたします。夜の写真はあまり良いものがありませんが(撮影設定モードを間違えました)、お暇な方はご覧くださいまし。

夜の東神奈川
乗船するとまずは出船名簿の記入から。そして現在の状況を聞きながら、どんなスタイルで攻めて行くかを決めていきます。今回はユルユルな感じで、大きさよりも釣果優先。そしてフローティングミノーでキャッチすることが今回の目的となりました。
シーバスの夜
先に出ていた伊藤船長艇の情報によれば、シーバスは小さいながらも各所に満遍なく入っている感じだとの連絡。夕方はボイルが凄かった場所も多数あったとか。そう考えると朝便の釣りも楽しそうですな。まずは各所の様子を見ながらポイントを探っていきます。
横浜の夜
肩が少し温まったあたりでキャスティングが決まりだし、ポイント3箇所目ぐらいでまずは奥様がシーバスをゲット。
ヒラセイゴ
私は新たに出来たポイントの試し釣りで、ヒラセイゴをキャッチ。ちょうど長崎のヒラスズキの話をしていたので、呼ばれて釣られてしまったのかもしれません。最近の東京湾内ではヒラスズキが少しずつ増えている感じです。
灯りがシーバスのポイント
シーバスシーズン序盤なので、浮いているガイド船は皆無なので、えどこへ行ってもポイント独り占め。魚のサイズを気にしないのであれば、釣れ始めた情報を得てから行くよりも、今ぐらいから行った方が数釣りができて楽しいと思います。
シーバス
ご主人はフローティングミノーでシーバスをキャッチする縛りを達成。慣れてくるとその数が伸びます。
シーバス
最後はこのサイズをキャッチして本日は終了。大物狙いはこれからですが、シーバスの数釣りが楽しめるシーズンに入りましたので、皆さんもいかが? ちなみに食べていたベイト(エサ)はサッパで、約5センチほど。フライはフローティングミノーの小さめか、白のゾンカーがヒットパターンです。
シーバス
陸へ上がると次の便も知っているお仲間が出船。もう一度乗ってしまおうかとも思いましたが、本日のお仕事に響くのでやめました。さて、私もそろそろフライの補充タイイングをしないとね。皆さんもシーバスの準備を進めてくださいな。

シイラのフライフィッシング創世記を思い出した、台風前の相模湾クルーズ

「イワシが手に入らないんですよ。」と船長からの電話。

関東周辺の海は水温が上がる一方で、生簀のイワシはとうとうグロッキーになってしまい、活きイワシは全く手に入らなくなってしまったのである。まぁ仕方ないか。昔を思えばシイラに活きイワシを撒くと言うのはとっても贅沢なことだしね。

ハーミットが創立して早27年。私はそれ以前からフライ業界にどっぷり浸かっていたので、今から40年近く前からフライでシイラを狙っていたのでアリマス。当時はルアーで狙うにしてもまだシイラ専用の道具なんて無いので、本当の初期は振り出し投づり竿に安っちいリールでやっていたりして。あの大きさだからもちろん釣り上げるのに四苦八苦したのだけれど、フライにいたってはトラウト用高番手を持っていっただけなので、メーターオーバーなんて上がってこないんですな。しかも人によってはクリックリールで挑戦なんてするものだから、リールを手でパーミング(手で包み込んでスプールにブレーキを掛ける)した途端に回転するハンドルノブに親指を打ちつけて、紫色に腫れ上がったりしていたのです。

当時のシイラを狙うルアー&フライの先駆けの船は平塚港の庄三郎丸庄治郎丸で、平塚の船は長井の船の様な撒水する機能がありません。なのでシイラをルアーで掛けてそれについて来た別のシイラをフライで狙うという方法でフライフィッシングをしていました。

私は釣りならばどんな釣りでもやるのですが、フライフィッシング以外のタックルは全て当時のまま。なので今回持って行ったタックルはペンのインターナショナルロッド8フィートに同メーカーのスピンフィッシャー750SSを使用。魚を呼び寄せる為のルアーはスプラーシャーのフックを取ったもので40年前のまんまなので、それはもはやタイムスリップ状態。

今でも現役で使うルアータックルをビンテージタックルと言われてしまうのであれば、もはや私はビンテージ(笑) 先輩たちに怒鳴られながら覚えた日々を思い出しながら、水平線に魚の影を追い求めた嵐の前の相模湾でした。

お暇な方は台風前のシイラフィッシングの様子をご覧くださいまし。

相模湾のシイラ釣り
イワシが無いのであれば、他の船よりも早くパヤオへ行くという作戦で出船は夜明け前になった丸伊丸。僕らはまるでこれからイカ釣りへ出かけるのかと思うほど、真っ暗な中を出航。
相模湾
前々日までは台風の為に出船はできないだろうと思っていたけれど、予定よりもメチャクチャゆっくりな台風のおかげで出船が可能に。でも早い時間はザーザー振りの中で釣りをする羽目に。過ぎ去った後はこんなにはっきりと雨と曇りの差が。
シイラフィッシング
水潮を心配しましたが、手慣れが1本掛けていればそれについて来るシイラの群れがいるので、一つのポイントで5〜6本のシイラが上がってきます。初めてシイラを狙う方もいたけれど、釣れてくれて一安心
シイラ
私はシンキングラインだったので、オオドモでキャスティングして10〜20秒して引っ張る釣り。前回と比べてシイラのサイズはだいぶ落ちた感じ。
撒水
活きイワシが無いので撒水の効果はそれほど無いのかと思いきや、それでも騙されて撒水の中にベイトを探すシイラがチラホラ。沖ではマッコウクジラぐるぐると泳いでいました。
カンパチ
パヤオへ近づいてその潮裏を狙うと小さなカンパチくんがヒット。
城ヶ島沖のパヤオ
後半は夏の終わりを感じさせる太陽の下で、いっ時だけシイラが入れ食いモードに。
カンパチ
もうちょっと大きかったらねぇ、と思いながら写真をパチリ。10キロサイズになってくれることを願いつつリリース。
シイラ
潮が早い1日だったので、このサイズでももの凄く引いてくれました。空はなんとなく秋空になっていました。
シイラ
朝の4時半〜12時過ぎまでたっぷり遊んだので、帰港までの私はミヨシでゴロリと昼寝。シイラカラーのバフは役に立たず、しっかりと日焼けしてしまいまいたとさ。

空に舞う銀鱗は貨幣から紙幣に変わった気がする、相模湾のシイラフィッシング

「目の前でナブラってるからよ〜ぉ、すぐに出ないとダメだぉ〜」

漁師というものは陸に上がると穏やかな人がほとんどであるが、ナブラを見ると豹変する人が多く、時に私がお客だと分かっていても頭を小突き罵声を浴びさせられる事が昔は多々あった。一昔前に長井港には貴雅丸 というカツヲ船の漁師上がりの仕立船(廃業されました)。いつもの様に支度をしていると目の前にある亀ヶ根のちょっと先でカツヲがものすごいナブラを作っているものだから、その時はいつも以上に急かされてたのであった。

船がそのナブラに着くとすぐに撒水が始まり、船長は生簀に向かってダッシュで走ってきて、カタクチイワシを撒水よりも先へ20匹程を扇状に撒く。続けてそれよりも手前に5〜6匹を散らして撒いて撒水へカツヲを呼び込むのである。太陽に輝く銀鱗が扇状に広がるその見事な撒きっぷりを見惚れていると、散水の下ではすでにカツヲがワンワンとボイルしているのだ。そしてたて続け様に罵声が飛ぶのである。

「フライなんてめんどくせぇものでやってたら、群れが逃げちまうだおぉ〜。一本釣りでやれぉ〜!」と。

フライロッドと一本釣りの竿が入り乱れ、その一時間後には撒き餌となる片口鰯は全て撒ききり、船上(戦場)は砲弾型をしたカツヲで埋め尽くされた。僕らは釣りに来たのか漁を手伝わされたのかわからない状態ではあるが、もう疲れ切って放心状態となってしまったのであった。

このカツヲやシイラを釣る時のチャム(コマセ)というのは船と別料金なのだが、当時はバケツ一杯四千円程度だったろうか。なのでカツヲ狙いをする時はその量が必要なので船倉にいっぱいのカタクチを買い込み出かけていたものである。

時が経ちあれから30年近くはたったであろうか。チャムとなるイワシは前日に船宿に伝えてお願いするのだが、現在は一杯¥12,000とな。流石にこの金額になると6〜8杯積んでとは言えず、一人当たりの船代を考えると及び腰になってしまい、2杯での出船となるのである。それもこの時期になるとカタクチは手に入らずマイワシになるので、生け簀には立派なサイズの鰯が泳いでいることもままあるのである。

シイラに喰わせるのだからこんなもので十分だろう、なんて思っている時にカツヲが目の前でボイルした一昨日の、上がる間際の相模湾。こんな時にあの貴雅のオヤジがいたら、チャム撒きをカッコ良く決めるんだろうな、なんて思いながら少なくなったイワシを眺めながら、私は撒くのを諦めカツヲの群れをボーッと眺めていた。

30年前の海と今の違いは以前よりもこの時期の海水温が高くなり、釣れる魚が大きく変わってしまったなぁと、丸伊丸の船長としみじみ話し込んでしまいましたが、僕らはそれに順応するしかありません。しかし本命のシイラは好調な相模湾なので、今後もあと何回か出船する予定です。

そんな大物との格闘は以下の写真の通り。お暇な方はご覧くださいまし。

長井荒崎港からの出港
海水温が高い為に買ったイワシがすぐに参ってしまうので、いつもよりも少しだけ早く港を出た丸伊丸。この曇天を見た時、今日はカツヲ日和だと思ったのですが、数時間後にはすっかり晴れてしまいました。
シイラフィッシングの船上
まだ涼しい時間帯は喰いが良く、朝イチのポイントはすぐにこんな状態。チャム撒きをやめて撮影したりランディングしたり。私の仕事はカツヲ船用語で言うナカマワリとメガネでアリマス。
初めてのシイラ
初めてのシイラフィッシングでもこのサイズが釣れてしまうのが、この釣りの魅力。問題はフライで釣るとなると、その道具の一式がそれなりの高額になってしまうのが玉に瑕。
シイラフィッシング
今年はまだペンペン(小型のシイラの俗称)が釣れておらず、小さくても70センチはあるでしょうか。特に1.2mくらいが頻繁に掛かったのですが、12番ロッドをもってしてもロッドが立たずの長期戦。大潮も手伝って、お魚は一向に浮いてきません。
シイラとの戦い
今回はベタ凪なのでミヨシ(船首)で雑談。撒水機は船首の左岸側1/3に付いているので、その下にできるシラ泡がポイントになります。
グラスロッド
多少重くとも最後の寄せで魚をいなしてくれるグラスロッド。エピックのバンディットとボカグランデはこの釣りの強い味方です。
シイラフィッシング
とにかく右を向いても左を向いても皆がお魚を掛けているので、誰かが手伝わないとランディングすることもままなりません。それにかかるサイズが大きいので、そのパワーに翻弄される方が多かったです。ちなみに大物に翻弄されてロッドを折られた方は1名。
シイラ
シイラやカジキは興奮している時と疲れた時の色が変わります。釣り上げるとこんなカラーですが、興奮している時は縦縞が入り、鮮やかなブルーにエメラルドグリーンと言った感じ。釣りへ来ないとその七変化が見られません。
パタゴニア
フライフィッシャーマンのオシャレが被った図。左がLで右がXL。 人呼んでLXL(エルバイエル)ブラザーズ😆
シイラ
今回の最大魚は全長140センチオーバーで、少々細めの10kg弱。産卵が終わったのかな?
シイラのフライフィッシング
ひとしきり皆が釣れたところで、丸伊丸の船長が撒水の中をどうフライを引いて釣るかをレクチャーしてくれました。
生簀の中を泳ぐイワシ
今や雑に扱うことが出来ないチャム(コマセ)となるイワシくん。ドバッと撒いてしまうと、千円札を投げ飛ばしているかの様。カツヲへ投入しているならばまだしも、シイラはそのほとんどをリリースしてしまうので、イワシがもったいないと感じてしまう貧乏性な私。次回は残ったイワシを持って帰って食べようかなぁ。

世界遺産である南西諸島のアトール(環礁)に棲むゴーストを探して

第二回 国内ソトイワシ調査報告書

前回(6/10〜6/13)の調査は連日の大雨でその生態調査の結果を十分に得られなかった為、急遽再調査するために他の予定を変更し、二週間後に再調査を行うこととした。急な変更の為に直前のエアチケット購入ということもあり出張釣行予算が膨れてしまったので、その予算を抑えるために今回の調査は短くして二泊三日で結果報告をすることにした。

前回の反省点を踏まえて

情報として得ていた釣れた場所の確認が天候不良の為に前回は不十分だったので、梅雨明けのこの時期に再度その確認を行う事。また使用するフライの種類が少なく攻め方に偏りがあったので、まずはフライを色々と投げてみる事。更に実際に釣れている釣法の他に自分たちの考えた仮説で新たなスタイルを試行してみる事とした。(前回の内容はこちら

前回の内容からの改善点

河川が流入する河口部は川エビが流入する為、それがハイマチ(ソトイワシ)の餌になっているのではないか、ということ。現在釣れている情報は河口絡みが中心である。更に地元の証言ではハイマチは満潮時で、夏が良い時期とのこと。満潮時は川と海が繋がり、河口部に潮溜まりができる状態で小規模なフラットができる。その時に色々な種類の魚が入ってきて捕食するのではないかという仮説をたて、それを検証してみる。

使用するフライライン:フローティング・インタミ・タイプ3・タイプ7
使用するロッドの範囲:シングルハンド8番と11フィート8番のスイッチロッド
フライのサイズ:#2〜#10(エビ類・カニ類・環虫類・ミノーのパターン)
ティペットのサイズ:10LB〜20LB
ディスタンスキャスティング時の 遠投範囲:シングルハンドで25〜33m・スイッチロッドで30〜35mほど


かくして2回目の日本でボーンフィッシュをキャッチする計画が再度行われた。その様子は以下の写真がその調査報告となる。お暇な方はご覧あれ。

エンブラエル170
島民のおじさんが「夏になったらおいで。」と言うのであれば、それを直ぐに実行。あれから2週間、南西諸島の梅雨が明け、前回とは違いずっと青い空から燦々と降り注ぐ太陽を浴びてまいりました。ちなみにこの飛行機(E170)は前回の旅行で気に入った機体。Wifiのサービスはないけれど、とても静かで安定していているエンブラエル社製(ブラジル)。
南国のアトール(環礁)
島には朝10時前に到着するので、10時半には釣りがスタート出来るのがこの場所の強み。今回は日程が短いので無駄のない時間を過ごす為に潮見表を事前にチェックし、潮高に合わせてポイントを決めていた。潮が低い時間帯は前回その姿をハッキリ見て掛けるまでに至った場所。ターゲットはボーンフィッシュのみに絞ったので、その場所に仁王立ちになり偏光レンズを駆使して魚を探しまくる。その結果、泳ぎ回る個体のおよそ95%がボラで、残りはクロダイやゴマモンガラなど。そして待てど暮らせど、その場所ではボーンフィッシュが接岸する事は無かった・・・。
南国の川エビ
潮が満潮に近くなった所で潮溜まりができる場所へと移動し、接岸するであろうソトイワシを探す。チェックインの時間を過ぎても釣りをしたのだが、手応えは何もない。おまけにあれだけ居た川エビが皆無ときた。考えてみればあの時は毎日雨で川の水は平常時の5倍くらい。上流から落ちてきたエビを喰らいたくて、お魚が集まっていたのでしょう。思っていた状況と異なる悔しさに、宿でその川エビを食らうの図。
宿からのサンセット
宿からはこんな景色を見た所で、野郎同士で「綺麗だね。」と囁きあってもロマンスは生まれない。この旅で求めているのはロマンスではなく、漢のロマンなのである。今回は本気モードなので飲みはそこそこに朝4時半起きをして、朝食前にも釣りへ行く。かくして「いっぱい投げれば釣れるんじゃね〜の?」作戦。もちろん適当では無くその事前準備は計り知れない。
川の河口
ちなみに川の河口は干潮の時はこんな感じでプールになります。小魚やエビが泳いでいた筈なんですが、エビは上流へ登ってもいませんでした。前回の時の洪水警報で流れちゃったのかなぁ・・。
エビちゃんは活躍せず
ブラインドフィッシングはひたすら投げまくって底をとり、エビに似せて動かすのみ。深い場所はタイプ7まで使い、ウィードガード付きのフライでトレースするのだけれど、他の魚さえ掛かりません。浜ではインタミ〜タイプ3まで使って、後輩が一度アタったのみで、私にはピクリともきませんでした。
色々なポイント探り
潮止まりの時間を利用して、新たなポイントを探る為に数箇所の確認を行いました。前回から導き出した仮説があるので、川エビがたくさん獲れるのが有名な川の河口部を中心に色々と行ってみたのだけれど、「川エビ+雨=流される」という条件なので、ピーカンが続く渇水の河口部にはエビちゃんは全くいないのです。読みが甘かったなぁ・・。
カニさんは何処?
カニ穴が沢山あるエリアはやっぱり川の河口付近なので、そう考えるとエビ(海エビが多い場所もあります)を中心に考えるよりもカニを中心に考えたほうが良いのかもしれません。砂浜が絡む場所ではカニかヤドカリが歩いた跡があり、その干潟が穴だらけであれば、色々な魚がそのアトール(環礁)に集まるのです。
穏やかな漁港の朝
朝は4時半に起床し、ポイントには5時前に入りスタート。朝焼けの中でナブラが起きるかと思いましたが、堤防の下を走るGTやブルーフィンを見ただけ。ロッドから伝わる振動は根掛かりの流木ばかり。フライを何個無くしたことか・・。島民に会えば釣況を聞いてみるのだけれど、皆が口を揃えて「潮が悪いね。」だって。潮色は幾分濁りがある黄色味がかった潮で、透明度は微妙な感じ。
足元を泳ぐ小さなカニ
潮が下がればまた同じように環礁と川がつながる場所で魚を待つも魚の気配が何も無し。しょうがないので足元のカニさんを観察。後ろ足を見るとワタリガニの仲間? 逃げる時に片方の鋏を真横に伸ばしてダッシュする姿は、まるで平たいエビの様。大きさにして3センチほどで、逃げる時は5センチほど。
ミーバイ
サイトフィッシングは何も無い時間が過ぎてしまい暑さで休憩していると、少し遠めのポイントでブルーフィンらしき魚影がベイトを追っていた。今回はボーン以外は狙わないと決めたのですが、ブルーフィンならばとフライをクラウザーミノーに変えて、ジャストのタイミングでフライを投げ込んだつもりですが、コイツが掛かりました、あ〜ぁ。
強い陽射し
潮が上げ始めたので凪でいるビーチへ行き、ひたすら遠投する作業はオオニベ仕込みで鍛えてあります。投げ続けていると私よりも後ろにボラがおり、穏やかなのでビーチはフラット状態になりスケスケでお魚丸見え状態。その中に明らかに尾鰭がボラと違う魚種を泡の中に発見。最初に見つけた時はビックリしたのですが、ライトブラウンカラーにお口の先っちょが少し濃く、縞々が入っている、あのゴースト(亡霊)。慌ててスイッチロッドをシングルハンドに持ち替えて、浅瀬の波頭にそのゴーズトを探す私。すると15m先の方から3本が私に向かって泳いでくるので、すかさずキャスト。その魚たちはフライを追うのですが、あと一歩という所で喰いません。そしてスプーク(怯えて逃げる)。
ツバメコノシロ
波がブレイクするとその泡の中から突如として現れる魚たち。そんな中、尾鰭が大きく割れていはいるものの、さっきの魚と違い縦縞が無い魚が単体でやって来た。しかし、この魚はフライを追いはするもののフライへの興味が薄い。前回の記憶を思い出しもしかして?と、フライサイズを8番まで落としてみる。ブレイクする泡づたいに浜辺を並行して歩くと、また泡の中からその魚影が現れた。タイミング良くキャストが決まると、フックを小さくした効果がありソヤツがパクりと喰いついた。ヒット!! と叫びたかったけれど、掛けた瞬間にわかるボーンフィッシュとはまるで違う引きで、その引きはクロダイと同じくらいか、やや劣る感じ。上がってきたのは、私の妄想が膨らみ恋焦がれていたモイ(ツバメコノシロ)、初めて釣りました。しかし、夢描いたその引きとは全く異なり、50センチはある大きさなのに、ボーンと比べたら似て非なるもの。とはいうものの、この魚のサイトフィッシングは確立できたので、その釣り方は皆さんに伝授できます。
環礁のゴーストを求めて・・。
かくして三日に渡り爆投し続けて、帰りの飛行機までの時間いっぱい投げ続けましたが、その努力が報われる事はありませんでした。思えば今の私は先急いでいる訳でも無いのに色々な夢を追いかけ過ぎて、一つの夢に集中せずあれこれ手を出している事に気付かされます。メーターオーバーのシーバス、メーターオーバーのイトウ、さらに未だ手応さえ感じられないオオニベ。サクラマスなどは歳を取るごとに釣れる感触が薄くなっている気がします。あまりにもポジティブに考え過ぎた日々が反省され、珍しくとっても落ち込んでおり、虚しさ(寂しさ)まで感じている始末。いつも熱く語っている私ですが、立ち直るまでしばらく時間が掛かりそう。少し釣りを休もうかなぁ・・。