サクラマス遠征の後はファーガスの里帰りの旅

私はマルチアングラーなので、サクラマス遠征に費やす時間は年に5〜7日程度で毎年サクラマスが釣れる訳ではありません。それ以外に関東圏でシーズン中にずっとウェットをスイングしている訳ですが、関東圏のサクラマスは数年に一度掛かれば良い方で、さらに釣れない。またサラマスの価値を下げたくない私は、一つの河川でサクラマスを一本釣るとその翌年までその川では狙わない様にしてまます(日に2本釣ってしまった事もありますが・・)。なので私の人生はどんなに頑張ってもサクラマスはあと10数本釣れるかどうかという稀少な魚なので、釣れた時はつい目頭が熱くなってしまうのです。

今回の遠征最終日にサクラマスをキャッチする数時間前には宿のおじさんに延泊をお願いしていたので、釣れた後は宿に戻ってひとりで祝杯し早めの就寝。そして余った翌日は岩手県へ出向いてファーガスロッドの里帰りをしようというブログ的な企画を考えてました。丁度つり人社から『THE FIBER GLASS FLY RODS』が発刊されているので、タイムリーな話題になるかな?

ファーガスとハーミットの繋がりはファーガスの社長であるNくんが大学生時代にハーミットのお客さんとして来ていた話は、アクティブハイカーのインプレッションに書いた通り。 「サクラマス釣れたら切り上げて、ファーガスに遊びに行くよ。」とメールはしていたのだけれど、前日の電話で工房がお休みにも関わらず快く会社を開けてくれる事となった。遠野で生まれたこのロッドはどんな所で作られ、そして地域にどう馴染んでいるのかを知りたかったのと、そして何よりもお店で話をしたことはあっても一緒に釣りをしたことがないNくんとの釣りを楽しみに岩手へと向かったのです。

ファーガスの工房は北上川水系稗貫川のほとりにあり、森とぶどう園に囲まれた緑豊かなみちのくの地。新しいロッドをテストしたければ、ちょっと車で走ればすぐに釣りができる点は、モンタナ州ツインブリッジにあるウィンストンの工場さながらである。

工房の大きさはウィンストンのバンブーロッド工房のそれと同じぐらいの大きさで10畳ほどのスペースが2部屋あり、マンドレイル(ロッドを巻くための芯金)やグラス素材をカットする作業台、ラッピングマシン、旋盤、塗装台など所狭しと並べてあるが、二人で動くには充分な広さが確保されていた。もちろん工房はとても綺麗に整理整頓されている。

ファーガスは今年5周年でその記念ロッドを製作中という事だが、すでに5ヶ月は過ぎようとしているのにのんびりと制作しているあたりは金儲けというより、より良いロッドを作るために時間を掛けていると言っても過言ではない。ま、本当は宇田さんもNくんも釣りが忙しいだけなんですけれどね(笑)。釣り好きが高じて竿を作るのだから当たり前の事なのです。

真面目な話をひとしきりした後は私の釣りの虫がウズウズ、と言うより私が使っているファーガスロッドが「魚が釣りたい!」というので、Nくんにポイントを案内してもらう事になった。遠野周辺の川は川沿いに集落が開け田畑の隙間を縫う様に流れている小規模な流れ。草木に覆われアップストリームで狙うのだが、両側の草木に阻まれるのを考えながらキャストして狙う。そんな流れに立ち、ファーガスロッドを一振り。浅瀬からは新子のヤマメ、ちょっとした深みから2年生のヤマメが沢山お目見えする。雪代がまだ収まっていないのでこれからがハイシーズンなのであるが、私が釣りを楽しんでいる以上に私のファーガスロッドがこの地で釣りを楽しんでいるかのように思えた、サクラマスとは対照的な穏やかな釣りを堪能しましたとさ。

そんなファーガス周辺の写真は以下の通り。このメーカーのロッド製作の姿勢や意気込みのさらに突っ込んだ話を知りたい方は、つり人社から『THE FIBER GLASS FLY RODS』をご覧くださいまし。

ファーガスロッドの工房の扉
ファーガスロッドが故郷に帰るの図。今回はアクティブハイカーとフォレストバムを持って行ったが、ゆったりとした雰囲気に合っているフォレストバムの7.6フィート3番で岩手の流れを楽しむことに。
ファーガスロッド
左が宇田バンブーの宇田さん。そして右が社長のNくん。将来を見据えてNくんに社長を任せたので、これからも発展しながら成長し続けるでしょう。これからの展開が楽しみです。
グラス素材
グラス素材(プリプレグ)はこんな感じでロールになっているのだが、そのまま放置すると硬くなってしまうので、冷蔵庫にて保管んされる。現在のグラスロッドは弾性率が高く軽くなっているので、昔とは比べ物にならないくらい、細くてもしなやかで張りのあるロッドが生まれる。
マンドレイル
このマンドレルと言われる鉄芯にグラス素材を複合して巻かれることでテーパーのあるロッド素材が作られる。さらにその上にテープで巻いて、それを焼き窯入れてロッドブランクになる。ロッドは巻きつけるグラス素材のカットや他の素材を複合することで、マンドレイルのテーパーと合わさってアクションが生まれるのだが、そのカットデザインは職人の経験によるもの。その前進であるカムパネラから計算すれば26年以上も作り続けている工房なので、フライロッド作りに関してはプロ中のプロなのである。
ファーガスの旋盤
リールシートのフィラーとグリップはこの旋盤で削り出される。ちなみにハーミットでは昔旋盤を売っていた時代があるのですよ。ハーミットで旋盤を購入した方はその後に旋盤の世界にハマってしまい、最終的にフライリールを作っていた方もいました(後ハーミットフライリールの制作者になった)。フライフィッシングは釣りの楽しさはもちろんのこと、フライタイングをはじめ物をクリエイトする集団であるとも言えます。
コルク
重ね合わせたコルクとロッドを焼く為に窯の温度調整するスイッチ。肝心のロッドを焼くロッカーを写すのを忘れましたが、まさしく一般的な会社にあるロッカーで、その中にロッドを吊り下げて焼くのです。ちなみに焼くといっても焦げ目の付かないトースターみたいなもので、たいして高い温度では無いんです。
遠野でフライフィッシング
私のファーガスロッドが釣りをしたいとせがむので、Nくんを急かすように工房を出て、近くの川でフライフィッシング。Nくんはアクティブハイカーを使い、私はフォレストバム。さすがロッド制作者だけあって、自分と一体化したようなキャスティングをしていました。遠野の川はこんな感じの場所が多く、ヤマメがそこらじゅうから飛び出てきます。季節がまだ少し早かったので大物との出会いはなかったけれど、私よりもロッドが岩手の魚とのコンタクトを楽しんでいました。いいな、遠野の釣り
遠野のヤマメ
この日は残念ながらとても寒く魚の反応は弱かった。それでも良さげなポイントからは2年生のヤマメが沢山遊んでくれるのです。こういった豊かな川が関東にもあれば良いのに。
トンボ
ここ数年トンボの数が激減しているので、ウェーダーで休憩するトンボを見て喜ぶ私。たまたま私のフライの横に止まってました。トンボはそこの自然の豊かさのバロメーター。いつまでも河原に沢山トンボが飛び続ける川であって欲しいです。
遠野のヤマメ
かくして、私の東北遠征は幕を閉じました。とはいうもののフライフィッシングシーズンは真っ只中。私は西へ北へとこれからも魚を求めて各地へ奔走いたします。

サクラマスに人生を捧げたNさんが星になった話(東北遠征編)

「行かないと釣れないですよ。」

そんなNさんの言葉に後押しされて私が東北のこの川にサクラマスを追いかけるようになって、早15年の日々が過ぎた。当時サラリーマンだったNさんは毎週末、東北へ向けて車を走らせ土日を釣りしてトンボ帰りするほどの釣り馬鹿であった。その年は解禁した第一週目に1本、翌週に3本、三週目に2本のサクラマスをキャッチしていたのを聞いて、「私でも釣れますかねぇ。」と、言ってみたところ返ってきた言葉が前述のそれで、私はその二日後には東北道を走ってその川に立っていた。

定年が近くなった頃には南国のソルトフライにもハマっていたので、Nさんを連れてハワイのボーンフィッシュを釣りに二人で行ったり、沖縄のマグロなんかも一緒に行っていたっけ。その後定年を迎えたNさんは余生は南の島でのんびりと暮らすよと言って沖縄に家まで購入していたのに、移住先を直前に東北のその川のほとりへと変更し、人生をサクラマスに捧げることにした。なのでこの季節はそこへ行けばいつもの場所でウェットフライをスイングしている筈だ。

先だっての月曜日からいつものようにサクラマス遠征が始まった私。いつもの場所でスイングしていればお昼頃にはNさんが現れるのだが、体の調子でも悪いのか現れなかった。徒労の1日が終わりいつもの常宿へ行くと、宿のおじさんが神妙な顔をしてNさんの訃報を私に告げてきた。聞けば3月に亡くなっていたのを知らず、つい二日前に人から聞いたとのことだった。

晩年、「サクラマスを100本釣るまで死ねない。」と言っていたNさんだが、残念ながらキャッチ数は98本と、あと2本足らず。きっと今頃あの場所であと2本釣るまではと、あの世へ行かずに粘っているのだなぁ。宿のおじさんと宿帳を見ながらNさんの思い出話で酒を呑んだが、彼が56歳にここへ訪れて20年で幕を閉じた事がわかった。

降り続く雨。そして増水。
先輩がまた一人減った事による悲しみが川面に降り注ぐ。
あぁ、今回は釣りに気持ちが入らないな。

予定の日々が何事も無く過ぎて最終日。増水はやや落ち着き、濁りは少しづつ落ち着いてきたけれど条件はまだ厳しいかな。今回は何もないまま終わりそうだと思った最終日は晴れ時々曇り。Nさんと一緒におにぎりを頬張った河原で今日は一人おにぎりを食らう。するとサクラマスに前のめり過ぎて気にも止めなかった周りの景色が一気に私の視界に広がり始めた。滔々と川の流れ、頬を伝う穏やかな風、芽吹く緑、広がる青空、鳥の囀り、大地の香り、のどかな午後。釣り以外の素晴らしさを感じ始めた時、ふと私の後ろにNさんが立っている気がした。

夕方、次のスイングでアタリがなければ延泊しようと思った時、サクラサク。穏やかな風が私の横を通り抜けていった。

くまさん
秋田県では毎日「クマダス」なる熊出没情報がニュースで流れる。前日は十数件あったので、この日は少なめ。今年も遭えるかな、クマさんに・・。
本流スイング
雪代がまだ収まっておらず、水温が低い日が続く。初日は今年の状況を探りに色々な場所を流してみる。
濁り
翌日からはずっとこんな状態。隣りの川まで出向いたり、最上流部へ行ってみたりしたが、どこも駄目。本流が駄目な時はヤマメ釣りに参じるのだが、最終的にはその渓流まで泥濁りになった。今までで一番酷い濁りでした。
稚鮎
良い事を上げるとすると今年は鮎の遡上量はハンパなく、フライをスイングしていると稚鮎がバンバン引っ掛かる。今年の夏は鮎釣り師で賑わう事でしょう。
ヤマメ
本流は泥濁りの日々なので、午後遅くはヤマメ釣りに出掛ける。しかし支流も水が多く水温が低め。と言っても、ヤマメはいくらでも釣れるのです。そしてイワナは少々。
ダブルハンドの釣り
連日、泥水を長い棒で掻き回している日々が続いたが、最終日だけなんとか濁りが取れた。でも水位は高め。ダブハン仲間のFくんは今年も絶好調で、すでに1本キャッチしている。
ダンケルド
最後のひと流しは新しいダンケルドで。この緩い流れのヨレを最後にして駄目だったら宿に帰るかな、とスイング。出るならここらへんと思ったら突然リールが「ギャッ、ギャッ〜。」と泣いた。ロッドが大きくしなり本命がヒット。しかし先週バラした北関東での悪夢が脳裏に過る。
サクラマス
河原が無く足場が高い場所で掛けてしまったので、ランディングするのも一苦労。川に落っこちそうになりながらようやくランディング。しかし水辺がないので仕方なく草むらへ上げて慌ててシャッターを切る私。サクラマスさん、ゴメン。
サクラマス
慌ててフックを外すとフック穴から血が噴き出したので、すぐにネットに入れて川に浸けてリリースを試みる。しかし腹を出してしまったので、今回は仕方なくキープすることに。魚の扱いって難しいですよね。私はいつもはサクラマスをリリースした後に宿のおじさんにサクラマスの塩焼きを夕飯にお願いする偽善者です。もっとも魚のダメージを最小限にするのであればバースレスフックが良いと思いますが、滅多に釣れないサクラマスの場合バーブレス派なんていません。Nさんは常にリリースしろと言っていたので、今頃怒っているだろうなぁ・・。
味噌汁
釣ったサクラマスはその1時間半後には、常宿にてこうなりました。残りの身は味噌漬けにしてもらったので、家で頂きます。かくして今回の東北遠征の旅は幕を閉じました。この後も色々な釣り旅へ行きますが、今年はスイングを楽しむ年になりそうです。

 

カエル顔の君に会いに行く(源流の釣りは先行車で決まる釣り旅)

関東の一般解禁からはや2ヶ月半、季節は一瞬にして過ぎ去って行く。寒かった3月、水量の多い4月から、現在は少しずつ雪代が収まりつつある関東の渓流。とはいうもののここ10年で一番雪が残っているので山頂付近はまだ白い部分が多く、今年の関東周辺の渓流は今のところ渇水の心配はなさそうです。

フライフィッシング歴だけで50年になってしまった私は、あと先を考えて最近は釣りへ行くペースが例年以上に出かけている。5月の半ばにしてヤマメの釣りはもう大分満たされたので、渓流の水量が落ちてくれば必然的にカエル顔を思い出させる、イワナに会いたくなるのです。

しかしながらなぜかゴールデンウィーク明けの林道は車が多い。思うに、「アユのシーズンが始めるまでもう少しあるから、源流へ行ってイワナでも釣るべ!」と考える同じような釣り人が多いのでは?というのが僕らの推測。なので林道を車止めまで走って先行車の車を見つけるとガッカリしてしまい、次のプランをどうするかを考えるのです。

今回最初に向かった川は今シーズン一度入った渓流。上流へ釣り上がればイワナが出るので、それを期待して行ったのですが、案の定入渓点にはすでに車が・・。場所を移動するたびに釣りをする時間が削がれてしまうので焦るのですが、今の季節は10時ごろにならないとお魚の反応が鈍いので、数カ所は探し回れる余裕があります。そして今回辿り着いた川は今シーズン初入渓。気持ちよく晴れた青空の下、林道の車止めから少し歩いてから入渓し、僕らの心を癒してくれるカエル顔のイワナに会いに行ってきました。

昨日の様子は以下の通り。まるで若者のように動き回る僕らは、イブニングは別のかわで過ごす、相変わらずのダブルヘッダーでゴザイマス。お暇な方はご覧くださいまし。

北関東の川
例年に比べると水が多いので、樹木の中を渓流の流れが複数走ってました。私は一旦降って様子を見る為に入渓点から下流へ向かい、見慣れない新たなポイントに手を出しながら上流を目指す事に。こうすることで狭い渓流でも一緒に入った仲間とある程度別々の場所を狙う事ができます。水深が膝ほどの深さを攻めていくと、大なり小なりお魚の反応はある雰囲気のある川なので、私の大好きな河川の一つ。
ヤマメ
虫が飛び始めるまでの小一時間はチビスケヤマメのライズに翻弄されて四苦八苦。コカゲロウが飛び始めてようやくヒットするようになりました。居つきのヤマメなので6〜7寸が中心ですが、油断すると8寸半が出ます。
イワナ
下流部はヤマメとイワナの混生の場所。最近はある程度上流へ行かないとイワナを見なくなったのですが、今年はいきなり9寸半のイワナが出ました。太っちょでいてカエル顔のイワナ。その愛らしいフォルムを見ると、思わず撫で撫でしたくなっちゃいます。
北関東の渓流
2時間半ほどで先行する仲間に追いつくと色々な虫たちがハッチし始めました。散発ながらライズをしている場所を徹底的に狙って上流を目指します。太陽が降り注ぎ気持ちの良い渓流だったのと、お魚のライズが多かったので、いつもよりも遡行スピードが遅かった僕ら。
ヤマメ
魚は思っていた以上に色々な場所から出てきた為に、ポイントを丁寧に攻める。縦長のプールでは仲間が一本釣って後ろへ下がり撮影。すかさず私がロッドを振るのですが、すぐに私のロッドにも掛かります。
ヤマメ
胸鰭と腹鰭がとても綺麗なヤマメたち。いつまでも豊かな川であってほしいと願う。
豊かな川
メマトイやブユが出始めているので、そろそろハッカスプレーサンゲイターは必須アイテム。ついでにグローブもあると嬉しいかな。
メイフライ
お魚にストマックポンプを入れると、マダラカゲロウ類の14番サイズがたっぷりと。それ以外に16番サイズの黒カディスが入ってました。
新緑の川
空の青と新緑のコントラストを見て、つい足が止まってしまい自然の美しさに浸る。マイナスイオンをたっぷり浴びて、穏やかな気持ちになっている自分がわかる。
イワナ
午後に入るとイワナのオンパレードで、立て続けに釣れる僕ら。同行の仲間は釣れすぎてなかなか上流へ上がってこない状態。そんな塩梅で予定していた退渓時間を3時間半オーバーしてしまった。この時点でもう大満足なので普通はもう帰路に着くのでしょうが、僕らはスイング・ブラザーズ。最後は本流でスイングしないと、釣りが終わった気がしないんですね。
ダブルハンドの釣り
源流から本流への移動時間は1時間半。そのおかげで陽はまもなく山並みに消えてしまう時間。雪代が収まっていないので水量は多めで釣れそうな雰囲気がムンムン。と、いつものポジティブシンキング。
チラカゲロウ
日没時間の18時半ごろ。陽が山に隠れて光量が急に落ちた瞬間、突然リールからドラッグが出始めた。”ギャッ 、ギャッ”と音を立てながらリールが反転。心臓バクバクもので掛かった本命は急に本流を登り始め、慌ててリールでラインを回収していた私の左手は追いつかず、テンションが抜けてしまい久しぶりに掛けた本命をバラしてしまいました。あぁ無情。悲しさのあまりに力が抜けて流されそうになった私。本流の石にはチラカゲロウの抜け殻がびっしり付いていた、そんな昨日。「終わりよければ全て良し。」なんて言いますがそれが達成されず、昼間のパラダイスが一気に霞んでしまったイブイニングでした。ふぅ・・・。

サンデーアングラーの釣果を伸ばす方法を考えてみる

ゴールデンウィークのフライフィッシングの時間を、皆さんはどう楽しまれたでしょうか? 私はというと、このゴールデンウィーク中に2回祭日の日が私の休みになったので、普段一緒に釣りが行けなかったサンデーアングラーのお客様たちと祭日の釣りへと出かけたのであります。

私にもサラリーマン時代がありまして、内勤の時はもちろん土日祝日のお休みだったので、人が多い中でどう釣果を伸ばすかを工夫したものです。今回のゴールデンウィーク釣行では、どんな事をして同行のお客様がオデコにならぬようにしたかを、ちょと紹介してみようかと思います。すでに以下の努力をされているサンデーアングラーの皆さんは、サラッと流してお読みください。

情報収集は大切
釣りはどんな時でも情報収集。ネットで集められる情報は、行こうとする場所の漁協が提供する放流情報や放流場所、そして天気予報は雨かどうかだけでなく、外気温の変化に注目したい。川であれば河川の水位で、この時期であれば雪代の状況などを知る(分析する)ことができるのです。

現場でのコミュニケーションは釣果を伸ばす
釣り人は皆仲間。私は例えその人が釣りをしてる人でなくとも釣り場では挨拶をし、前日の天気や川の状況の変化を聞いたりします。別ジャンルの釣りをされている方でも、持っている情報はとても貴重。出会った人がルアーの方であっても、釣れた場所や時間が把握できるし、使ったルアーによって状況分析できる。エサ師であれば川虫を使ったのか市販品であるかで、魚の活性と放流魚の河川への順応がわかるというもの。シャイで他人とのコミュニケーションを取るのが苦手な方は、その時点で情報量は激減してしまうのです。

朝は偵察と状況分析
とかく釣り人は朝イチに良い場所へ入って、最初に釣ってやろう的な輩が多い。でも魚って必ず朝が良いのかな? 実は時期や状況によってはそうとは限らないんです。春先であれば適水温の時間がよく喰う訳だし、虫がハッチ(羽化して流下)しないことには、ドライフライの釣りは成り立ちませんしね。ゴールデンウィーク時期の河川であれば、まだまだ朝方の渓流は寒いのです。絶対に釣れないとは言いませんが、朝の寒い時間帯よりも少し温まった時間帯の方が虫も魚も活性が高い場合がほとんど。なので、釣り場へ早く行っても場所取り合戦するのではなく、ポイントをよく見極めて、虫のハッチが多い時間帯に良い場所へ入渓できるような工夫が大切です。

午後は狙い目
前述に近い話ですが、釣り人は朝が早いために午後にはモチベーションが下がり、サンデーアングラーは高速道路の渋滞を考えて早めに上がってしまう人が多いのです。その為お昼過ぎてしばらくすると人は少なくなり、川は思っている以上に動けるようになります。朝からずっと釣りを続ける体力がない人は、現場には早めに行ってゆっくりと用意して、しっかりと昼飯休憩を挟むこと。午後に体力を残して川を丁寧に釣り上がると、きっと良いことが起きるはずです。

さらにイブニングは誰もいない
最近の傾向としてイブニングライズを狙う方が非常に少ないんですね。特に日曜日や連休最終日は翌日の仕事を考えて、早めに上がるかそもそも釣りに行かない傾向があります。日曜日の18時以降のイブニングは虫のハッチは凄いし、お魚の活性もマシマシ状態。こんな時間にロッドを振っていないなんて、私には信じられません。

釣り方にこだわらない
フライフィッシャーマンはとかくドライフライにこだわり過ぎ(私もです)。でもどうしても釣果が欲しい初心者を連れ立っている場合は、ダブルチャンスシステムを勧めます。この言い方はハーミット的言い回しで、実際にはドライフライとニンフのドロッパーシステムとでもいうのでしょうか。インジケーターの代わりにドライフライを付け、ドライに30センチほどティペットをつけてその下にニンフを付けます。こうすることで水面下と水面上の両方をサーチする事ができます。トラウトがドライへ喰いつくようになったら、ドロッパーのニンフを外してドライの釣りを楽しめば良い訳です。このシステムを使えばアタリは倍増するので、寒くてドライへの反応が少ない時でもこの方法で魚がいるかどうかの確認ができるというもの。

竿抜けは何処?
釣り人が河川に多い場合、または後追いの状況での竿抜けは、人がやりにくい場所だけを選んでキャストしてみること。これは普段のキャスティング練習の有無で決まる事ですが、狭くて小さなポイントほどルアーは投げないし、流れが早い浅瀬などはエサ師も流すことは少ないでしょう。特に放流魚は一ヶ所に過多の放流がされるので、放流魚を狙う場合は必然的に一級ポイントを外れてとんでもない所にいたりします。

また最近の傾向としてルアー師はフライフィッシャーマンよりも若者が多いので、体力があるので最上流部を目指す傾向があります。さらにフライと違って虫の飛ぶ時間に合わせて釣行をしている訳ではないので、朝早くから入渓している方が多いのです。ちなみにフライフィッシャーマンの平均年齢はとても高くなっているので、歩きません(笑)。車を置いて一番近いところから入る傾向があります。よって昨今の渓流は真ん中ら辺が人が少ない傾向で適度に歩いてから入渓した場所が良い、というのが最近の私のスタイル。


書けばキリがないくらい細かな状況判断があるのですが、これ以外に季節による魚の付き場の違いを知るには、やっぱりベテランが付き添って教えるのが一番なんですね。一緒に行ってくれる先輩がいない場合はフライフィッシングガイドを一度使ってみるのも良い選択でしょう。最も全てがこうしてネットに溢れている情報や助言する人が常に隣りにいる状況で釣りをしている人は自分で考える力が身に付かないので、釣りが上達するかどうかは怪しいでしょう。ブログに書いておいてなんですが、皆さんは活字や動画に翻弄される事なく、自分で考えて行動する力を身につけてくださいね。そうすればもっと良い釣りができると思います。

長々書きましたが、今回サンデーアングラーを連れ立って訪ねたのは前回イレグイだった河川。一日中寒い雨という状況での釣りでしたが、そんな時はどうしていたかを知りたい方は、以下をご覧くださいまし。

温泉地に流れる川
天気は一日中シトシト雨で後半は雨が強くなる予報。そして最低気温は8℃で最高気温は14℃ほど。山にはまだ雪があるので水温があまり上がらないだろうから、こんな日は朝早く行ったところで魚が動かず何もない。なので少し早めに行って川を観察してからポイントを決める。漁協の情報ではゴールデンウィーク向けに放流をしているので、お魚のストックは問題ないだろうから、あとはこの寒さがどう出るかだけ。
ヤマメ
前回よりもずっと下流にあるプール状のポイントへ行くとエサ師が陣取っていた。話をすると、魚は見えども釣れないという。諦めて下流へ行くとの事でポイントを譲ってもらうと、時折ライズする大ヤマメさん。しかし見えるヤマメはフライに目もくれず、虫が流れ始めてもほとんど捕食しない。1時間以上粘ってもダメだったので、見えヤマメを諦めて全く違う流れの早いポイントへ。こんな所はエサ師は手を出さないだろうなぁ、という場所へフライを流したら一発で出た尺もの。大きいですが放流ものでゴザイマス・・・。
菜の花が咲く時期
それにしても寒さでドライフライへの反応が悪すぎるので、ダブルチャンスシステムに変更して、瀬や肩や渕などを手当たり次第流してみることにした。
ヤマメ
川を横断しないとならない対岸近くのポイントからポツポツとヤマメの反応が。しかしドライへの反応は少なく、ニンフにヒット。午後になればいくらか水温が上がるかなぁ、と思いながら雨で見えにくいドライフライをインジケーター代わりして各所を流しまくる。
うぐい(ハヤ)
ニンフには外道のウグイにカワムツが掛かるけれど、決して活性は高くなく数釣りはできない。そのままずっと叩き上がると堰堤下の流れでライズするヤマメを発見。どうせ釣るのならばドライで釣りたいので、それを集中的に攻める戦法に変えた。
フライフィッシング
今回もロッドはウィンストンのピュア2・834/4を使用。フライラインは新しくエアフロ スーパーフロ タクティカルを入れてみた。
ヤマメ
堰堤下の釣りは見事にマッチ・ザ・ハッチがハマり、同行の方々は良いペースで釣ってました。フライは16番のアダムスやコンパラダンで、特にディアヘアの少ないスカスカのコンパラダンがヤマメに高反応。
レインボートラウト
午後は雨が強くなる予報だったので、ビショビショになりながら皆さんがめげるまでフライフィッシングを楽しみましたとさ。結果、最後の方にはレインボートラウトも釣れて、サイズも揃い満足のいく釣行となりました。雨の日はお魚さんには水温低下と濁りというマイナス面があっても、人間さえやる気があれば釣り人のプレッシャーも少なく釣れるということを証明してくれた日でした。今回は震え上がるほど寒かったので、早上がりして日帰り温泉へ入って帰りました。皆さんも雨の日は暖かい格好でフライフィッシングを楽しんでください。