コロナウィルスの影響でGWの東京は鳥の囀りが響き渡るほどの静けさ。ロッドを握ることなく粛々と仕事を続けている事も少し飽きてきた頃、「お荷物お届けにまいりました〜。」と大きな段ボール箱が届けられた。その伝票はヤマトや佐川ではなく、福山と書かれている。足早に去る配達員を見送り受け取った荷物を開封しようとすると、何やらいつもと違う様子に気づいた。箱が少し動いていおり、中から生態反応が感じられる。
段ボールをそっと開けて驚いた、そこには尺、いやもっと大きいヤマメがひしめき合っているではないか。段ボールの影に隠れていたヤマメは私が覗き込んだことで少し驚いたようで、私を横目で見て警戒をし列をなしている。暫くすると落ち着きを取り戻し、段ボールの中を所狭しと泳ぎ始めた。こんな狭い空間に大きなヤマメがいるなんて、こんなチャンスは二度とない。
私は姿勢を低くしてそっとその場を離れ、慌てて自分のタックルを取りに行き即座に用意。ヤマメの大きさはざっとみて50アップ。ヤマメというよりはサクラマスサイズだが、見事なパーマークが箱の中からチラチラと覗いて見えるそれは、他の造形物と融合し見事なカモフラージュカラーと化していた。
取り出したタックルはウィンストン・エアの8フィート6インチ4番に、最初は大きめのドライフライを結んでトライ。距離を詰めてお店のカウンターの影から障害物をかわしそっとプレゼンテーション。そのキャストで一番先頭にいるヤマメの鼻をかすめるが、見向きもしない。数投してみたがドライには無反応である。どうやら水面直下の何かを食べているようだ。
大ヤマメの行動をつぶさに観察し、出した答えはダンケルド。今度はリールウィンドウの影に隠れてダンクロスでアプローチ。すると先頭の大ヤマメがすっと寄ってきて少し疑いながらもフライを加え込んだ。一呼吸おいて軽くアワセを入れると、ロッドには思いの外軽い衝撃。それもそのはず、逃げ惑うのは1メートル四方のその狭い空間であり、ジャンプを繰り返すか下へ向かって首を横に振り回す以外ないのである。ヤマメの抵抗は数分で終わり、慌てて持ってきた小さめのランディングネット におさまった見事な魚体。60は無かったが今年釣った初めての尺ヤマメである。
ガッチリと咥えたダンケルドを外し、店内へそっとリリース。すると私に水しぶきを掛けて、店の角へと隠れて行った。
こんな妄想の釣りでお仕事楽しんでます。あ〜ぁ、釣りへ行きたい・・・。