私は根っからの釣り好きで、昔から色々な釣りを楽しんでいる。そう、僕らの世代は少年マガジンで釣りキチ三平くんが活躍する時代だったので、釣り好き男子はきっと多かったと思う。小学校高学年ごろのマイブームは流行り始めたルアーで狙う、ブラックバスが脚光を浴び始めたころ。当時は芦ノ湖や相模湖にしかいないと思っていたブラックバスだが、ルアーを初めた翌年に釣り雑誌で雄蛇ヶ池のブラックバスが紹介されていた。それを見て友達と一緒に電車を乗り継いで雄蛇ヶ池に行った時に初めてフライフィッシングと出会った。
当時の雄蛇ヶ池はその大半を睡蓮と菱藻などに覆われたヘビーカバーで、主にルアーはフロッグで狙っていたけれど釣れるのは雷魚ばかり。お目当のブラックバスなんて滅多に釣れることはなかった。そんな中、長いタコ紐のような糸をブンブン飛ばし、1キャストごとに魚を釣っているオジサンがいた。ウェーディングしているそのおじさんは藻穴にキャストを繰り返し、ブルーギルを次々と釣っていく。その入れ食いの釣りを見て自分でもやって見たくなったのだけれど、おじさんに話しかける勇気もなく、後日釣り雑誌で調べてそれがフライフィッシングであることがわかった。
そしてお年玉で買ったのはシェイクスピアのフライフィッシングセットで、確か¥9,800ぐらいだったと思う。道具を手に入れたものの、当時は入門書なんてものは全くないので、テキトーに振り回していた次第。何よりも都会っ子の私は家の近所に川などないから、雨が降るとアスファルトの上でロールキャストの練習をしたいた。そしてその年の初夏にブルーギルデビューを果たし、ついでに小バスを釣って大喜びしていたのが遠い思い出。
千葉県の東金に寄った時は今でも必ず雄蛇ヶ池に顔を出すが、当時の象徴だった睡蓮は今はどこにもない。それでも、水面を見つめながら昔の記憶を辿るのは好きである。