FAGUS Fast Flit(ファスト フリット) のインプレッション

こちらの商品は2022年12月末ごろからのデリバリーになる新製品ですが、メーカーさんからサンプルロッドをお借りしたので、近所の土手にて試し振りしてきました。本当は朝霞ガーデンにでも持って行って実釣をしようかとも思いましたが、今日は土曜日で混雑が予想され周りの方にご迷惑になるかなと思いまして、ゴルフの打ちっぱなし練習場が見える場所で同じように練習デス。

もうだいぶ皆様にも認知されてきた岩手のロッドメーカーであるファーガス。バンブーとグラスロッドをブランクから作るロッドメーカーさんですが、このファストフリットは今まであったフォレストバムとファインループとは一味違ったSグラスを使用したプログレッシブなアクションです。

昨今はメジャーになったSグラスですが、昔のグラスロッドと何が違うの? と問われそうなので簡単に説明すると、まずはグラス素材の強度が1.8倍強くなったことと昔多かったEグラスとは違いUDのSグラスは縦方向のみ(一般的なSグラスには少量横方向にも使われているそうです)に繊維を揃えて作られており、よりグラファイトに近い弾性を出せるブランクになっています。さらにレジン(その繊維間にある樹脂)の進化でより軽く作れる様になったことで、8フィート台でもトップヘビー(前荷重)にならずに誰にでも扱いやすいグラスロッドになっているのが特徴でしょう。現在ハーミットでSグラスの代表格といえばエピックになりますが、あちらがニュージーランド製で、こちらは純国産のmade in Iwate。

ファーガスの新製品ファストフリット

ラインナップは全4種類で、3〜4番モデルだけがキャップ&リングシートかスクリュー ダウンロックシートが選べます。ロッドのカラーはビスケットカラー(タン)で落ち着いた雰囲気。アクション全体はロッド全体の真ん中らへんの腰がとても強く、ロッドをグッと曲げ込むとバット側が少し曲がり込んできます。

では今朝このロッドを振ってきたそれぞれのアクションをご紹介。
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f-7053FF/7feet 3inch・3weight・4pcsパッと握った時の印象は、ありゃ、グラスなのにグラファイト並みの硬さですな。パワフルなラインデリバリーができるこの3番は、今まで取り扱ってきたファーガスのシリーズとは全く異次元の感覚。もしあなたがグラファイトのパリッとした3番が好きなのであれば、このグラスはとても気にいるかもしれません。

Fine:パリッとした中にグラスの粘りも感じられるので、比較的近距離でも投げやすい感覚。ファインループやフォレストバムが14-18番のフライを中心とした繊細な釣りが得意だとしたら、こちらは10番以上の空気抵抗が大きいフライをピンポイントで流れの隙間へねじ込んでいく、イワナやレインボーを楽しむロッド。ミドルレンジ(10m以下)までは難無くフライを正確にデリバリーする感覚。

Weak:かなり硬めに感じたのでフルキャストに挑戦しましたが、ホールするラインを長めにするとバットの腰が弱く感じ、ラインのデリバリーが少し失速します。またホール無しでのキャスティングではグラス特有のバイブレーションを抜くのが少し難しいかもしれません。ちなみに硬く感じたので4番ラインも乗せてみましたが、結果は同じでフルキャスト時にはパワー不足を少し感じます(といっても3番だからそんな使い方はしません)。

私だったら、源流に近いイワナ狙いに使うかな。ファインループで尺イワナを寄せるのはかなり難儀したけれど、これならばロッドのパワーとグラスの粘り腰に委ねて、難無く寄せられそうです。

ファストフリットの7フィート5インチ3番ロッド
CFOIIIをセットした時のロッドバランスはこの位置。小さめのグリップで一握り、軽快にラインを打ち返すことができます。

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f-7084FF/7feet 8inch・4weight・4pcsエピックの476を彷彿させる軽さとグラファイトっぽい復元力を持つ4番ロッド。パリッとしたアクションがお好きな方の、渓流でオールマイティに使える雰囲気があります。こういったアクションを例える場合に何アクションって言ったら良いんですかねぇ?

Fine:エピックと比べて曲がる点がバット側にあるのが特徴で、ショートレンジでもタイトループでキャスティングができます。ラインの重さが上がることでより空気抵抗が大きいフライやニンフをデリバリーすることができるモデル。ラインスピードは早くテンポ良く打ち込めるので、全体のパワーも増してより大物重視の方に向いてます。快適なキャスティングはショートレンジから15m位まで。

Weak:8フィートに近い4番なのでフルキャストを試みましたがグラファイトと同等の復元力は無いので、残り数メートルを残してフルキャストはできませんでした。腕自慢の方はこのロッドでフラインのフルキャストに挑戦してみてください。ロッドのレンジはショートから20m位までが快適。

私だったら、北海道のドライで狙うレインボーや関東の中流域でシングルハンドのウェットフライを楽しむでしょう。ドライフライのヒゲナガスイングなどもグラスの特性を活かして楽しめるはずです。

ファストフリット7フィート8インチ4番
ロッドバランスはスピードスター-3+を付けた時に3番よりも幾分前になる。もっとも最近のモデルはリールが軽いから、長めのグラスにセットするリールはあまり軽いモデルではない方が良いと思う。

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f-7115FF/7feet 11inch・5weight・4pcs北海道のドライフライフィッシングを楽しむのはもちろんですが、このロッドだとブルーギルや小バス釣りを小さめのポッパーでも楽しみたいなぁ、と感じるのは私だけ?

Fine:距離への欲求を満たし大物狙いのパワーを兼ね備えた、北海道を見据えた大物狙いのドライフライフィッシングに活躍しそうなアクション。ショートレンジでもホールを強く入れることでより大きなフライを早いターンで返すことができるでしょう。また、Sグラスの素材感は5番ぐらいから、今までと違う力強さを感じさせてくれる気がします。

Weak:よりパワフルになった分だけ、繊細な釣りには向かず、ヤマメのドライフライフィッシングに使うことはあまり無いかもしれません。また、極端に近いショートレンジもやや投げにくい感じを受けます。また、上記の3種類まではグリップ長が同じなので、5番でのパワーキャストにはグリップがやや細めで短くも感じます(私的見解)。*追記:発売前だったので、このモデルのグリップ長は8025と同じにしたそうです。

8025よりもやや短い事で、コントロールがそれよりも幾分優れ、ブッシュの多いホソで狙うブラウントラウトフィッシングで大活躍しそうです。そんな事を想像してたら、北海道のとある川を思い出しこのロッドで狙ってみたくなりました。

7フィート11インチ5番モデル
長さがオービスのセブンイレブンと同じで5番ラインというのが、僕らジジイの気持ちをくすぐってくれます。リールはマーキス6をセットしてこの位置に重心がきます。

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f-8025FF/8feet 2inch・5weight・4pcsこのスペックを見た瞬間に私は自分の分を注文しました(笑)遠投に必要な長さと、魚をいなすのが得意であるグラスの特徴を持ってます。

Fine:このモデルだけグリップのコルクリングが1個分だけ長く、グリップを握った時の直径が太く作ってあります。これは8フィート以上という重さからくる前重心をいかに手元へ近づけるかの為であり、遠投を意識した時に握りの遊びがない様にしてあります。また、リールシートがスクリューのダウンロックという事で、リールの重さがより後ろへ寄ることで、ロッドバランスの重心がより手元に近づき、疲れない投げやすさが生まれます。キャスティングレンジは広く極端に短いレンジを除けばフルラインまで楽しめるでしょう。

Weak:極端に短いショートレンジだけはちょっと苦手。また遠投を意識してパワフルに力を込め過ぎるとグラスのしなりが大きくなるので、ループはバウンドしてしまい舟形のループになります。無駄な力を入れず、ゆっくりしたテンポでアークを広げることでスムーズなキャスティングが可能になるでしょう。

私はこのロッドを使い湖のドライフライフィッシングが多くなるかも?北海道の渓流も楽しそうだなぁ。時にはチビバスやブルーギルも楽しめるし、グラスは魚をいなすのが得意なロッドなので、もしかしたら飛んだり跳ねたりが好きなシーバスでも遊んじゃうかもね。

8フィート2インチ5番モデル
他のモデルのグリップ長が153mmに対しこのモデルは165mmでグリップも太め。リールをセットした時のバランスも見た目も良くなります。もちろんグリップが少し太い分だけ、手の遊びが少なくなりより握り込めます。

総括するとこのシリーズはプログレッシブでありながらグラスらしさを残したシャープなモデル。そして個々のロッドバランスを考えリールシートとグリップ長を可変し、どのモデルもグリップのトップ部分に統一された考え抜かれたモデル。グラスロッド=キャスティングが難しい、と思っている人にはまずはこのロッド。少々お高めですが奮発して買って欲しい一本かな。純国産品なので価格はむしろ妥当だと私は思います。

winston Air2 863/4のロッドインプレッション

季節はもうお盆を過ぎて渓流釣りも終盤。ですが長雨とコロナ禍で私は思うように動けず、ブログのネタになるような事も無く日々が過ぎています。タイイングのネタはライブ配信に取っておくとして、なんか無いかなと考えてメーカーさんにサンプルロッドを借りました。まずはその中のエア2 8フィート6インチ・3番・4ピース からインプレッション。お店には同じロッドの在庫があるけれど、実際にラインを通してみないとわからないしね。

ウィンストンは1929年にロバート・ウィンザーさんとルー・ストナーさんが始めた会社。二人の名前を合体させて作った会社名なので、ウィンストンさんという方はいらっしゃいませんのでお間違いなく。会社はすでに90年以上続くフライロッドメーカーですが、そのウィンストン社で現在のハイエンドのフラッグシップモデルがこのエア2シリーズとなります。

昨年まであったエアシリーズがエア2となって何が変わったの?とお客様に聞かれますが、私も??なのです。素材で言えば次世代グラファイトS-2000を採用と書いてあるけれど、そもそもウィンストンロッドは外見がずっと変わらないので、ぱっと見じゃ何が変わったかわからないのです(細かい点で言えば、ティッピングスレッドを変えているモデルがあります)。なので、実際に振ってみない事には、何もわからんのです。

今回は大雨でどこの河川も釣りにはならないので、いつものように朝霞ガーデンで3時間ロッドを変えながらその特徴を見てきました。


Fine:エアシリーズの3番はピュアに比べるとしっかりした張りのあるアクションですが、ロッドティップ(1番セクション)が柔らかいために、ティップだけで振ると結構曲がる感じがあります。ファストアクションではあるけれど、決して跳ねっ返りが強くピンピンしている感じはありませんし、ロッドはブレが無く復元力に優れています。何よりも8フィート6インチという長さなのに重さを感じさせないロッドバランスはさすがエアシリーズ。そしてボロンバットがしっかりと支えてくれます。

0〜5mキャスト:エアシリーズの中で特に3番のこのロッドはティップが柔らかく、少しの長さで得られるラインウェイトにも対応したキャストが可能。特にリーダーキャストでのティップの曲がりでリーダーを返すことができます。コントロールも抜群。

5〜10mキャスト:フライラインのループを綺麗に整えやすいのはこのレンジ。そして誰もが快適に投げれるコントロールの良さを感じます。ロッドティップからセカンドセクションを少し入ったあたりまで曲がり込んで、タイトループが作りやすいのが特徴。それにしても軽いですねぇ。

10〜25mキャスト:ちなみにラインはエアフロのユニバーサルテーパーですが、気張ってフルキャストをしてみましてが、ラインがビシッと伸びることはなく残り2ヤードぐらいがダラとするくらいまでが私のキャスト限界。最もずっと投げ込めば何度かに一度位は綺麗なフルキャストはできるのでしょうけれど、このロッドには必要ないですしね。でも20m以上は確実にキャストできるので、無風の長良川で15m以上のキャストをした場合、この繊細なティップでやりとりするシラメちゃんは面白いだろうなぁ、と想像してしまいます。

Weak:好みの問題ですが、個人的にはもっとバットから曲がるしなやかなロッドの方が好み。私の場合は玄人の部類に入る訳ですから、振りにくい竿を振ってみたくなる性分ですし、掛け心地を楽しむのが好きなのです。なのでロッドの張りがあるだけ小さい魚をかけた時にはロッドは曲がらないので、その点の楽しみは薄いでしょう。しかしながらコントロール性能と中距離のキャスタビリティは秀悦ですので、ロッドの長さを生かしたメンディングを得意とするシチュエーションに向いたロッドだと思います。

もしも私がこのロッドを使うとしたら、魚との距離が10〜15mの地点にライズが多く、ダウンクロスで送り込みのミッジングのシチュエーションでしょう。ラインを置いた後のメンディングやトリックキャストは繊細なロッドティップが機敏に反応してくれます。あとは買う勇気だけかな。残りの人生にお金を余らせても仕方ないので、気になった方は思い切って買っちゃいましょう。買ってしまえば残りの釣り人生はきっと楽しくなる筈です。

Winston Air2 863/4
エア2のロゴはこんな感じ。今まで通りで手描き文字に、ティップングカラーも同じくレッド。見た目だと2が加わっただけ。
エア2 863/4のグリップ周り
グリップとシートフィラーも変更なし。なのでアエシリーズとの違いを遠目でその変化を見極めることはできない。
ウィンストンのバットエンド
バットエンドのロゴも健在。個人的には使い込んでニッケルがくすみ始めて置き傷がついているほうが、やりこんでいる感が出てカッコ良く感じる。
ウィンストンとオービスリール
とりあえずユニバーサルWF3Fを巻いてあるオービスのCFO IIIで距離を変えて投げ分けてみる。近距離はティップが曲がり、中距離はセカンドセクションまで曲がり込む。遠投になるとボロンが入ったバット部分は腰が強いので曲がらず、結果的に3番のセクションもあまり曲がらない。距離を出すほどバットの強さを感じるのが特徴。
ウィンストンのロッドバランス
最近はスピードスターを使うことが多かったけれど、こうしてクラシカルなリールをセットして使うのも雰囲気があり良いですね。