トラディショナルとロマン

季節の移りゆくスピードは早いもので、全国一般解禁まであと少しというところ。僕らフライフィッシャーマンの渓流解禁といえば、日中に広がるライズリングを求めてのライズハント。それが自分の中ではそれがトラディショナルな釣り。魚の観察、キャストのスキル、フライの出来栄え、その流し方など、その全てがうまい具合に行った時だけシラメやヒカリはフライを咥えて、してやったりという気持ちになるものである。

でも最近の解禁風景は少しずつ変わりつつあるようで、ラインを沈めて引っ張る方が多く見受けられ、ミッジのドライフィッシングをする人は少なくなった感があります。それともフライ業界の平均年齢も影響しているのかな? 私とて24番のミッジにティペットを通すことがかなり厄介になっているので、諸先輩に「今更、我慢大会のような釣りはできない。」と言われても仕方ないのかもね。

フライフィッシングの楽しみ方は人それぞれですが、最近思うのはロマンが感じられる釣り方がどんどん薄れている様な気がするのです。キャスティングを学びたくない、毛ばりを巻きたくない、でも釣りたい、そういった願望は初心者ならば同感です。簡単に沢山釣る方法を選択して楽しむのは当然のこと。しかしいつまでも同じ事を繰り返し続けていればやがては飽きてしまうのではないでしょうか。私の場合は難しさ(出来ない悔しさ)の中に面白さを見つける事が楽しい人であり、このとても面倒臭いフライフィッシングの世界が好きなのです。ま、釣具屋の私だからスタイルを変化して貰わにゃ困ると言う発想かもしれません。

関東の解禁まであと少しあるので、解禁の早い西の方へ行ってきて、ふと感じた事でした。あなたは釣りにどんなロマンを求めていますか?

ふと思い立った様にPCに検索ワードとして「渓流・解禁・2020・○○県」と入れて見た。その検索ワードに引っ掛かった一番上に出てきた川へ行ってきた次第。無謀とも思える冒険です(笑)。目的の川の名前をマトリックス川としておきましょう。自宅を出発して数時間後に事故による通行止めに遭い、現地までの所要時間7時間、ヒョエ〜。着いた時はすでにもう釣る時間がほとんどなく漁協のお姉さんに「東京からわざわざ来るほどの川ではない。」と言われました(笑)。ま、せっかくきたので竿を出してみることに。
結果、増水も伴って何もありません。日帰りの距離ではないので、これまた慌てて宿を探して宿泊し、翌日は別の川へ行くことに。何度か来た事があるここビールリバー(仮名)はすでにスレッスレという情報は聞いていた。そしてピーカン無風。9時ごろまでライズは全くなしでゴザイマス。
何も出来ない時間帯がマッタリと流れていきます。やがて対岸のコンクリートの上を歩く鳥の動きが機敏になりライズが始りました。そこからはじっと我慢、水中に刺さった一本の杭になります。
ピーカン無風の時は10X(0.15号)のティペットでも魚はUターンする始末。ミッジフライをほとんど巻いてこなかったのが悔やまれる瞬間。しばらくゴミの様な昨年の余り物フライでローテーション。最終的にボックスの隅にあったフローティングニンフ#20を結ぶと、波っけのある時間帯だけようやく魚が勢い良く飛び出る様になった。
今回の教訓:フライの数は心の余裕。原稿の締め切り間近で追い詰められてやる仕事と同じで、慌てて巻いたフライは良い結果を産まない、という事かな。さてと、時間を見つけてフライタイイングに精進いたします。