スイングし続けて10数年。この川は変わったなぁ、と思うこの頃

ハーミットのホームページは26〜7年前からずっとあるので、色々ググっていくと物凄く古いお話や商品の解説に辿り着いたりします。たまに電話でそれを見て「HPに載っている○○ってまだありますか?」と聞かれたりしますが、1990年代に記載したそんな古いものは流石に残っていません。古い記事はフライ業界の記録としてそのまま残してあるのですが、ちょっと考えものですねぇ。削除したほうが迷惑が掛からず良いのかなぁ、なんて思ったりもします。

このブログを書き始めたのはX(旧ツイッター)からブログに切り替えた訳ですが、遡ると2016年からの書き込み。そしてその数年前からK川から今通っているこの川へ切り替え関東の二尺ヤマメを夢見て通い続けているのですが、もう10数年通っている川になります。

そして今年も本流スイングとマッチ・ザ・ハッチを楽しむ季節がやってきました。10年ひと区切りと良く言いますが、すでに解禁から幾度と訪れて思うことは、今年を最後にこの川の本流釣りは引退しようかと考えるこの頃。決して関東での二尺ヤマメを釣る情熱が冷めた訳では無いのですが、この本流があまりにも生命感が無くなってしまったので、スイングしていても何か虚しさを感じる様になったのです。

この川へ始めて訪れたのは今から40年以上も前のこと。春は緩いプールでライズするヒカリ(一年を経て海へ降るサクラマスの子のこと)がライズし、外道はハヤにオイカワがたくさん掛かったものです。鮎が遡る頃にはサクラマスの跳ねがあったし、秋には鮭の産卵を見に訪れたりしてました。その川が今では雑魚さえも泳いで無いんです。雑魚が激減し始めたのは今から5〜6年前頃からで、それ以降年を追うたびにロッドへの魚信が遠退き、スイングをしていても魚がアタる感覚さえ忘れてしまいそうな位。この10年でどの本流も激変したという話が多々ありますが、流石にワンシーズン通して雑魚も掛からず何も無い年が続いているので、この川を引退というよりは、一旦離れて来年は他に様子を見て回ろうかと考えてます(支流の釣りは続きますので、年券購入は継続予定)。

ということで、今年は大好きなポイントへ通い尽くしてみようという年。この春は出来る限りこの川に訪れて、やり切ってみたいと思います。そして一昨日は本流では何も無いだろうと思い、魚の感触を求めて最上流部へ行って釣果を出してから、良い時間だけ本流を楽しむ事という計画。お暇な方は以下の写真にお付き合いください。

北関東の川
本日の組み立ては温まった午後から本流をやる予定なので、それまでは渓流でヤマメ狙い。まずは水深が比較的浅い水温が温まりやすい支流へ。遠くのお山はまだ雪帽子。例年に比べると桜の開花が少し遅い感じ。そして雪代のせいで水温が低く思っていたようなライズは無し、雑魚も釣れないので即移動。
北関東の川
2本目に選んだ川は本流の上流部で、これが失敗。どうやらダム水を流している様で水量が多く、水が極めて冷たい。プールである筈のポイントは流れが早く釣れそうな気がしないので、こちらもロッドを出さずに即移動。
北関東の川
3本目に選んだ支流は緩い流れでライズしていたが、エサ師が陣取っていた。なので上流を譲ってもらい、少し上へ入る事に。1枚スラブ(岩盤)が続くそのポイントはいつも小型が多いのですが、放流ものでは無いのでとても綺麗なヤマメが釣れる場所。最初は魚っけが全くなかったのですが、時間と共に虫が飛び始めて反応が出始めました。
山女魚
釣れるのはこんなチビっこですが、天然ものは愛おしいです。フライはコンパラダンとパラスピナーなどが良く出ましたヨ。
ヤマメ釣り
しばらく進むと大堰堤が出てきて、上がれなくなるので左右のどちらかを高巻きするのですが、昔はその右岸を登って上がっていたものの、現在は両岸が崩れてこんな感じ。ふと見上げた頭上がこんなだから怖くなってきます。昔は高巻いたこの壁は今では登れる気がしないなぁ・・。
ヤマメ
大堰堤まで釣り上がったところで折り返し元の場所に戻ると、ライズしているポイントのエサ師がお昼休憩。その間にライズを狙ってみれば7.5〜8寸サイズの放流ものがヒット。小型のカゲロウが流下するときだけパタパタっと釣れて、それが終わるとシーンとするの繰り返し。数本釣ったところで午後の本流へ移動のため、この場を切り上げました。
北関東の二尺ヤマメを探す旅
本流スイングはこの暖かさならばヒゲナガが出るだろうと思い、イブニングまでめいいっぱい スイングする予定。そして養殖されたサクラマスを放したという話もあったので、この際放流ものでも良いので、本流でのアタリが恋しくてココへと来た訳です。ロッドはこの川では相性が良いマイクロスペイ。バット折れ修理にて帰ってきたので、ロッドの見た目は新品同様。
本流スイング
長いランをいくつもスイングするのですが、フライはいつもと同じダンケルド。3時半に入渓してどんどん釣り降る私。しかし今回も雑魚さえのアタリも無い。
ヒゲナガカワトビケラ
18時を過ぎた辺りからヒゲナガが多くなり、時間と共に私の風下にヒゲナガ柱ができる。手にとってみれば、今年のサイズはやや小さめ。明るいうちは水面をスケーティングする個体はおらず、闇夜に喰われるのがヒゲナガの宿命。結局真っ暗にまるまでスイングしましたが一度もアタらずに終わりました。唯一やや明るい時間でヒゲナガを喰う個体がいましたが、本流は広いので足場の問題でその場所にはどうやっても届きませんでした。
ヤマメ
結果、本流は全くもって何も無し、ナッシング。釣果は支流のヤマメを数本取ったのみで終わりましたが、ライズの釣りが楽しめただけでもよかったかな。さて、来週はどうしようかと考える間にフライを巻かないとね。

 

2尺ヤマメという言葉が生まれた昭和の時代

商売柄この言葉に翻弄されフィッシング バムになってしまった人を多く見てきた。私もいつしかその一人になってしまったようであるが、まだまだ半人前なのである。

サクラマス
ボイルとともにアドレナリンが駆け巡るソルトウォーターの釣りと双璧にある静の釣り、サクラマス。前触れもなくドンとくる衝撃は心臓に悪い

フライフィッシングの中で何釣りが一番好きか?と、問われれば、釣りのプロセスを総合すればやっぱりヤマメなのだが、尺ヤマメの倍以上もある大きさを一度手にしてしまうと、麻薬的な感動が忘れられずにまた今年も長い竿を振り回すことになるのだろう。

川
こんなゆったりとした大河。一体どこを攻めれば良いか?その答えを何年もかけて見つけてきたつもりだったが、27年前の教科書に既に書いてあった・・。

今年は何か新しいことをやろうと決めた私は、解禁からヤマメ釣りをしながら気もそぞろで大河巡りをして二尺の様子を探っている。いつもと違う川でポイント巡りはとても新鮮なのだが、竿を出さない時間ばかりが過ぎていく。そして昨日は今年初めてのサクラマスのハネを見た。いわゆる馬鹿っ跳ねというやつで、体が痒いんだか機嫌がわるいのだかわからないが、先輩曰く「気持ちいいから跳ねる」のだそうだ。イルカの曲芸のように魚体を大きく持ち上げ水面に落ちたその後、瀬を登り一つ上のプールへ姿を消した。その光景を目の当たりにし、今年の二尺ヤマメスイッチを押されたような気がした。

沢田賢一郎
二尺ヤマメの熱にうなされるようになったのは当時この写真とコピーを見せつけられたから。その熱にうなされ続けている人はまだまだ多い

ふと思い出して読み返したこの昭和64年1月号に記載された沢田氏の記事。自分ではようやく二尺ヤマメの気持ちがわかり始めたような気になっていたが、その答えは既にこの時書かれていたことに、ただ頭がさがるばかり。この27年の月日の間に唯一変わったことはキャスティングの進化だけ。キャスティングが進化してもキャッチ率は変わっていない宝くじのような魚。今年も多くの釣り人を悩ませる事は間違いない。

サクラマス
今年は何人の人から報告がもらえるでしょうか?嬉しさが共有できる魚。お気に入りのタックルは TFO Derr Creek 12’6″ #5/6Hardy Marquis の組み合わせ

そんな再確認をしつつ、今年は早くから『サクラ・サク』の連絡をいただき、お客様と一緒に喜んでいる日々。周期的に当たり年だと思うので、一人でも多くの人の『サクラ・咲く』連絡が来ることを願いつつ、私も1日も早くサクラサクと叫びたい。私のこの釣り、間も無く開幕です。

サクラマス
サクラマスはそのほとんどがメス。そしてヤマメのオスと産卵する個体が多い
サクラマス
たまに顎がしゃくれたオスっぽい個体も釣れるけれど
アングリング昭和64年
沢田賢一郎氏の『二尺ヤマメ』・降旗章氏の『本栖湖ブラウン』・丸橋英三氏の『セールフィッシュ』当時のアングリングには夢が溢れていた。そして、この号に私も先輩たちと一緒に名が連なっていることに感謝。