商売柄この言葉に翻弄されフィッシング バムになってしまった人を多く見てきた。私もいつしかその一人になってしまったようであるが、まだまだ半人前なのである。
フライフィッシングの中で何釣りが一番好きか?と、問われれば、釣りのプロセスを総合すればやっぱりヤマメなのだが、尺ヤマメの倍以上もある大きさを一度手にしてしまうと、麻薬的な感動が忘れられずにまた今年も長い竿を振り回すことになるのだろう。
今年は何か新しいことをやろうと決めた私は、解禁からヤマメ釣りをしながら気もそぞろで大河巡りをして二尺の様子を探っている。いつもと違う川でポイント巡りはとても新鮮なのだが、竿を出さない時間ばかりが過ぎていく。そして昨日は今年初めてのサクラマスのハネを見た。いわゆる馬鹿っ跳ねというやつで、体が痒いんだか機嫌がわるいのだかわからないが、先輩曰く「気持ちいいから跳ねる」のだそうだ。イルカの曲芸のように魚体を大きく持ち上げ水面に落ちたその後、瀬を登り一つ上のプールへ姿を消した。その光景を目の当たりにし、今年の二尺ヤマメスイッチを押されたような気がした。
ふと思い出して読み返したこの昭和64年1月号に記載された沢田氏の記事。自分ではようやく二尺ヤマメの気持ちがわかり始めたような気になっていたが、その答えは既にこの時書かれていたことに、ただ頭がさがるばかり。この27年の月日の間に唯一変わったことはキャスティングの進化だけ。キャスティングが進化してもキャッチ率は変わっていない宝くじのような魚。今年も多くの釣り人を悩ませる事は間違いない。
そんな再確認をしつつ、今年は早くから『サクラ・サク』の連絡をいただき、お客様と一緒に喜んでいる日々。周期的に当たり年だと思うので、一人でも多くの人の『サクラ・咲く』連絡が来ることを願いつつ、私も1日も早くサクラサクと叫びたい。私のこの釣り、間も無く開幕です。