理想と現実

理想はこうだった。

昨年の反省点を踏まえ巻いてきたいつもよりも地味目のフォームビートルを巻いて出撃。これならば実際に落ちているビートルにも近いし、迷うなど食うだろう。タックルをセットして目指すは昨年と同様のブルーバックレインボーポイント。熊笹を掻き分けてバンク側へ立ち、しばらく湖面の様子を覗き込む。何事もなければ左右のどちらかへ移動し、サイトフィッシングで魚を探して釣るハンティングスタイル。私はソレが好きなんです。

音を立てぬ様に熊笹の隙間から20m先を見据えると、湖岸にできたスカムラインを上目を使いに水面をついばみながらブルーバックがその泡に沿ってこちらへやってくる。射程内に入り身をかがめた状態で、レインボーの鼻先1m手前にフライをそっとプレゼンテーション。デリケートに落とされたその波紋に気づき、何の躊躇もなく大きな口を開けてフライを吸い込む。刹那の沈黙の後に水飛沫を上げて走り出すライン、そして湖の遥か彼方で先ほどの大きなレインボーがジャンプする姿が見える頃、私は人気のないその場所で一人雄叫びをあげるのである。

しかし、現実は以下の写真の通り。
う〜む、釣りも人生も思い通りに行きませんなぁ・・。

夜明けと共にスタートするために家を出たのが朝1時過ぎ。八ツ場(やんば)ダムを横目に六合村(くにむら)を過ぎた頃には外気温10℃の中、夜が白々と開け始めた。うむむ、時間を誤った。仕方なく手前の朝ライズ打ちをすぐに打ち切り、野反湖の奥深くへと歩き進んだのであった。左に見えるのが野反湖で、その周囲をこんな感じの林道で囲まれている。
風裏のスカムラインができるポイントを探し、暫し熊笹に隠れて待機。するとその泡に沿ってブルーバックレインボーが私に近づいてくる。ここまでは理想通り。そしてドンピシャのタイミングで投げ込むと、そいつが口を開ける前に一年生のレインボーがこの大きなフライにフッキングしやがった、ガッデム。
理想では次々とサイトフィッシングで魚を見つける予定が2本のブルーバックのみ。もう一匹のレインボーは気持ちが前のめり、熊笹から顔を出し過ぎた途端に見つかってしまい逃げて行ったとさ。その後サイトフィッシングでは魚が見つからず、とある岬で引っ張りにチェンジ。と言ってもフライを車に忘れた。手元にはサクラマス 用の大きなサーモンフライしかないので、仕方なくそれを結んで引っ張ると40センチ弱のレインボーがヒット。しかし、手前に走られて残念ながら外れちゃいました・・。この時点で湖を半周近くしています。
天気が悪い予報だったので、今回はキャンプなしのバンガロー泊まり。ひと休憩して再出撃すると、そこは一面霧の中。周りは全然見えません。そんな中それぞれの好みのポイントへ散っていく仲間たち。あ、同じ格好していますが、これは私の後ろ姿ではありません(笑)
歩き疲れた私は昨年取り逃した近くのポイントへGO! 霧が立ち込める中に第一投。スイッチロッドの先に8フィートスローシンクをつけたタックルでカウント10。車にあった本栖湖用に巻いたゾンカーを引っ張り始めると、すぐに根掛り? あれ、ここはそんなに浅かったかな? と思ったら、レインボーでした。とりあえず釣れてくれて一安心。
その後は連チャンするかと思いきや何も無し。寒くなってきたので明日に備えて飲んだくれるだけであります。今回摂取したアルコールはビール5本、缶酎ハイ3本、日本酒四号瓶、さらに焼酎瓶半分。久しぶりによく飲んだなぁ。
雨音はショパンの調べではなく恐怖の音。明け方は道路封鎖になるのではと思う雨音に起こされ、こりゃ駄目だと判断した私たちは爆睡。バンガローチェックアウトの後にロッドを少し振り回しましたが、アタリを貰えどヒットする事がなく終わりました。ノゾリキスゲも何だか寒そうですね。
釣りはいつも理想とはかけ離れている事が多いけれど、それを柔軟に受け止めれば釣果へと結び付けられるもの。それには理想の事前準備の他に、最悪の事態も想定してタックルを持って行きましょう。今回巻いたビートルたちは次回に役立てますヨ!そして未来のあるちびっこレインボーがたくさん生息しているので、この湖の将来は明るいでしょう。