川の音のこと

遡上魚でなくとも希少な魚を釣る時のチャンスというものは五感で、いや六感で感じる事が多いのだと私は思います。それは木々の彩り(自然の移り変わり)や鳥の飛ぶ高さだったり、虫の飛ぶ量はもちろんのこと、雑魚の活性もしかり。で、私の中では川の音もその一つだったりします。

ウェットフライを流すために荒瀬の頭に入り、ひと流しごとにラインを徐々に伸ばして行く。そして自分の希望するポイントまでの距離が出たところでステップダウン開始。最初は一投すると3ステップダウン(3歩下流へ降る)。足に受ける重い流れが徐々に膝下になり、やがては股下近くになる。その荒い流れの時は複雑な音を立てて水の勢いを耳に伝えてくるのだけれど、釣り下るうちにある場所から突然心地の良い音色に変わるのです。

その音色はチロチロともキュラキュラとも言える、少し金属かガラスの音色を混ぜたような音。この音をどう表現した良いかわらないけれど、この心地よい音が聞こえたら私の場合ここからは1〜2ステップダウンにします。気持ちの上では妄想が止まらず緊張の時間。沈み石頭をフライがスイングする瞬間に魚がフライをひったくる妄想をし、腕から伝わる瞬間を待ち続け少しづつステップダウンして行く。その音色で喰いつかなければ、このランの魚たちは他の要素が当てはまらないのか、もしくはお魚はお留守なのだと私は思うことにしている。ステップダウンし続けると、やがて心地よい音色が終わり重い流れから足が解放され、脱力感が体に重くのしかかるのです。

昨日はまだ結果が出ていない北関東のホームリバーで夜明けからお昼近くまでこんな感じで終了。10時を回った頃から鮎師が多くなってきたこともあり、季節の移り変わりを深く感じ、誰かに労いの気持ちを込めた肩を叩かれたような気持ちになりました。

6月も半ば。川はより鮎師で賑やかになるので、私はそろそろ源流へ向かいます。

昨年秋に折ってしまい、先月末修理から戻ってきたウインストンマイクロスペイ10ft6inch・#3。今年この川での出番はまだ2回。ロッドの機嫌が悪いので、このままこの川で釣れなかったら、どこか別の場所で魚を釣ってやらないと。

田舟でドブ釣りをする様子を見て、季節の速さをしみじみ感じてしまう。そういえば鮎釣りをもう30年以上やってないな。たまにはフライから離れて違う竿でも振ってみる?

遠征

私の釣り好きは幼少の頃に始まり現在に至る。最初は近所の沼や川での身近な釣りから始まり、自転車を乗るようになってからは東京から相模湖あたりまで。さらに遠くの世界を覗きたくて16歳の誕生日の日に原付免許を取得し、その夏には50ccで北海道へ釣りに出かけたのである。さらに翌年は北へ行ったからその反対の南へ行きたくなり、400CCで長崎まで下道で釣りへ行った大バカ者なのです。

そんな長距離移動というかロングドライブが好きな私ですが、今年も東北遠征の旅が始まりました。遠征と言うと聞こえが良いですが、修行と言った方が間違い無いでしょう。

今回はとりあえず川の様子がどのように変化したか見たかった三日間の旅。行く前から先日の大雨で駄目だと知っていても、水辺にいるだけで幸せな私なのです。今回も片道650キロの旅はノンストップでワンタンク(ガソリン)で秋田を満喫してきましたとさ。

3m増水後からここまで回復。ご覧の様に泥濁りにフライを投入。そして左岸のバンクは先日の雨で削られてしまっている塩梅。ウェーディングすると濁りで見えず、ドボンと深みにハマってしまう。おぉ、怖。
奥が本流で釣りたい川。手前がその支流。濁りのない方へ差して来そうですが、この川は水深があまりないんです。
濁りを避ける雑魚1匹。その雑魚からの反応も皆無。仕方ないか・・。
遡上魚が釣れなくともヤマメはいつでも元気。今年は数は釣れるけれどサイズが一回り小さいかも?
河川を見て回る日々。先だっての大雨は最大4m近くの増水だったので、そこら中に河川ゴミ回収の車とユンボが入っています。
ミルキーウォーターにダンケルドを投じて見る。これでも最終日の撮影なので濁りはかなりとれた方なんですが・・。週末以降は良いんだろうな、きっと。
そしてまた川を変えて支流でヤマメ釣り。
最終日に仲間と合流して情報交換。彼も私も、この釣りにドップリとハマった大バカものです。幸せは突然やって来るので、KEEP CAST. 信ずるものは、いつか救われます。