中央道を駆け抜け、富士樹海を通り過ぎた時の外気温は2℃。わずかに明け始めた西空を気にも止めず、ここ数日良い魚が上がり続けているポイントを一路目指した。だが、ポイントへ着く前にすでにその湖畔にライトが見えたので、仕方なく別のポイントを探して落ち着く事に。富士から登るご来光を見ながら冷たい空気を切り裂くキャスティングは、もう素手では辛い季節になってきた。そして明るさと共に冷え込んだ気温は一気に上がり、何一つ聞こえてこない無音の世界が続く。
穏やかな時間は瞬く間に過ぎていき、日差しの角度と共に魚を求めて移動する私。珍しく午前中から風が吹き始めたのでいつもとポイントを変えてはみたものの、湖面に浮かぶカメムシフライはただ気持ちよく浮き続けているばかり。ライズはない。さらに増水によりポイント選択を狭め釣り場探しも一苦労だが、ウェーダーを履いている事で、少し沖目にある岩場で釣りをする事ができた。
丁度風裏になるこの場所は私の目の前に左岸からの吹き込みでできたスカムラインが沖に向かっての帯が伸びている。ここはひとつフライを変えて気分一新しようとフライを結び変えていると、私のロッドのバットガイドから2番目の辺りの視界に動くものが飛び込んできた。
正に今、水面に浮いている虫を喰おうとしているそのヒレピンは、口を半分開けた所で私と目があった。距離にして1mあるかないかである。お互いに「あっ。」と思った刹那の後、およそゴーマルのブルーバックレインボーはエサにはあり付けず一目散に逃げていった。それをみ見て慌ててフライを結び、カメムシフライを投げまくる私。しかし相変わらず水面は穏やかである。
その後はポイントを変えて色々なフライを投げてみたり、引っ張りでウーリーバガーを引いてみたり。夕方になるまで本栖湖一周を色々な場所で攻めてはみたものの、私のフライはただひたすら穏やかな時間が過ぎただけで夕闇を迎えた。
先月は毎週のように雨で各地の悲報を聞き続けたただけに、ただ平和な時間を過ごせる事に至福を感じた昨日。釣り人らしいオデコだった時の言い訳です。