ツキを呼ぶ黄色いエクストレイルを追いかけた東北遠征

「サクラツレマシタ。」とNくんからの報告。

彼は一つの釣りにハマるとのめり込むタイプで、このダブルハンドの世界へ入る前はフライフィッシングを離れて鮎釣りに専念している時期があった。鮎の友釣りはそれこそ九州から北海道の朱太川まで釣り場があるけれど、鮎が釣れる有名河川は本流に魚が付く石が多く、サクラマス同様に海から鮎はやってくるのである。

鮎釣りをしたことがある人だと経験があるかと思うけれど、意外に鮎釣りでサクラマスが掛かるんですよ。そもそも生息域は同じだし、大きなサクラマスは大きな石から石へとポイントを少しずつ上流へ移している遡上魚。時に雨で降ったり、秋になって慌てて登ったり。鮭と違って母川回帰率は低いので、必ずしも生まれ故郷に帰るわけでもない。

そんな訳で私はどんな場所を探すかといえば、サクラマスが着きそうな石が点在する場所を探すのです。そして話はNくんの話に戻るのですが、彼はこの川でも鮎をやっていたので、上流部から下流部まで動かない石がある場所を知っているんですね。それも鮎の場合ウェットタイツで釣るので流されるのは当たり前だから、腰高の水深を気にもせずに普通の人が渡らない中洲で釣りをするんですな。そして人よりもフライが水面に付いている時間が長く、多くのポイントを探る。結果的に費やした時間に魚は比例して釣れ、彼の場合それを効率よくやってのけるのだ。

今年の私はというと、到着日にNくんに会うと、「サクラツレマシタ。」と立派なサクラマスを見せられて、おめでとう!と一言。彼は今、黄色いエクストレイルに乗っており、その車に変えてからかなり運が向いている。私は彼に二匹目のドジョウならぬそのポイントを教えてもらい、翌日からその場所へ通うこととなったのでアリマス。

サクラマスは単体で遡上するのではなく、幾らかの群れになって上がってくるのだけれど、一つのポイントで食べるために持って行ったとしても、魚が全くいなくなるという事はない。そもそも私は今までどうやって釣ってきたかという話をすれば、実はサクラマスのハネを見つけてそれを狙っていたので、常にバカっ跳ねありきのフライフィッシングでありハンティングに近い。私の個人的な解釈をすれば、サクラマスが跳ねると、それは良い場所を見つけた合図。翌日から数日はそこで過ごし、渇水になり始めるとその瀬頭のほうへ移動して次の雨を待ち遡上する、というイメージ。大水が出た時は下がる時もたまにありき。しかし、ここ3〜4年はこのハネが全くといって良いほどなくなったのである。

釣れたという場所は何の変哲もない場所。ヨレが僅かに起きているけれど、はっきりココがポイントと思える場所がわからない。なので、私はとりあえず上から順にステップダウンしながら釣り下がる。彼が釣れた時間と重なる頃、疑心暗鬼で投げていた私の真横で全身をあらわにした立派なサクラマスがバカっ跳ねをした。本当に久しぶりの出来事。これは釣れてしまうなと思い、緊張しながらそのポイントを何度も狙い続けるが、その日は何もなし。

翌日はそのポイントに集中し水温が上がり始める時間を狙って、あまりしつこく流さず、ココぞという時だけにキャストすることに決めた。虫が飛び始め水温がいくらか上がり始めた頃にスイングを開始。何投目だったろうか、ロッドティップを僅かに抑えるような感触。念のためロッドを止めてその感触を確かめると、ガツンと首を3度振るサクラマスのアタリ。リールは逆転して幾らか下流へ魚が降ったが、その後スッと抜けてしまった。掛かりが浅かったのはおそらく、完全にくわえ込む前にロッドを引いてしまった為にフライはカンヌキに刺さらず口の先っちょに掛かってしまったのである。バラす時って大体鼻先に掛かっているのだけれど、それさえ確認できずに終わってしまった。ま、これがサクラマスの釣りですな。

結果的に今回の旅はその一度だけで、雑魚や外道もなく何にも無いという徒労の5日間。雑魚さえ掛からないのは関東のサクラマス狙いと同じで、現在の本流は日本全国どこへ行っても田園が広がる下流部は虫や雑魚が一切居らず、川が死んでいると感じます。ホタルやトンボなどは全く見なくなりました。昨今言われている農薬(ネオニコチノイド)が原因かどうかは現段階で私には判断できませんが、この10年は年を追っておかしくなっているのは間違いないです。皆さんはどう思いますか?

森を歩くとクマさんに遭う。
車を止めてから川へ出るまで、結構な距離を藪漕ぎします。コレが怖いんだな。実は最終日は川へ入ると対岸に人影が見えたので、挨拶でもしようかと思ったら、人ではなく熊さんで、お互いにビックリ。するとクマさんは何を思ったか私の方へ泳いで来やがって、仕方なく車に戻ったという経緯がありました。年に一度はクマさんにお会いするのが常になってきましたが、このペースだと年に2回くらい会うかもしれませんな。
流れを下る
人気のポイントは皆さんにお任せして、私はひたすら今年の良い石を探してステップダウン。一番良い時間だけ、Nくんの釣った場所でステップダウンしてました。
ダンケルド
今シーズンも相変わらすダンケルド。問題は手持ちのジャングルコックが少なくなってしまったので、古いフライを壊してジャングルコックだけ再利用。
ダブルハンドロッド
今回の一番の敗因は、ロッドがスコットとGルーミスなのに、帽子はウィンストンキャップをかぶっていたことでしょう(笑)。きっとロッドがスネたのです。
本流は増水
東京が大雨だった後、東北もまとまった雨が降ったために50センチ増。昨日まで見えていた石は全く見えず濁りがひどいので、こういう日は気分を変えて支流へヤマメ釣り。でも今回は朝から晩までずっと本流で投げていたので、渓流に分け入ったのは一日のみです。
ヤマメ釣り
そもそもが例年に比べて渇水だったので、支流へ入ったところで雨の影響は全くなく、むしろ平水。どこへ投げても釣れる川なので、何も心配せずに適当に入渓。
ヤマメ
相変わらずヤマメはよく釣れる川ですが、今年は育ちが悪く例年よりも一回り小さい感じ。
ヤマメ
支流は田園がほぼないので、虫はたくさん飛んでいます。今回はアカマダラカゲロウが沢山飛んでいましたヨ。都会のヤマメと違いおおらかなので、どんなフライでも飛びついてくれます。おかげでエンプティボックスの片隅にある、ゴミ見たいなフライでも遊んでくれるので助かります。
堰堤
いかにもいそうな堰堤や大場所には魚がいません。ってか、いないというよりは分かりやすいポイントなのでスレていて、浮いている魚はいないんです。数釣りはいつもくるぶし程の瀬から飛び出てくるヤマメ狙い。
東北の魚
半日も釣り上がるとゲップが出る位釣れちゃうので、適当にフライを変えながらゆっくりした歩みで楽しみます。上流では時にイワナがお目見え。
ヤマメ
渓流は文句なしの東北の旅。しかし本流は関東と同じ、死の川。見た目をよくするために清掃活動をした所で、雑魚が住めない綺麗な河川なんて、私にはピンとこないかな。皆さんも現在の本流の姿を見て何か思うことがあれば、教えてください。

サクラサク・東北でサクラマスをフライフィッシングで狙う旅

受験シーズンはこの言葉で合格の可否を伝えるのは皆さんもご周知の通り。そして釣り業界では遡上するサクラマスを追いかける釣り人たちが、その結果を伝えるために使う言葉。中には強運で簡単に釣る人もいらしゃるでしょうが、それはジャンボ宝くじに当たるようなもの。ほとんどの人は通った日数に見合うことがない世界。シーズン中にうまくキャッチできる確率は、どこぞの有名大学を受験して受かるようなものかもしれない。ほとんどの人が旅の終わりに『サクラチル』と友達へメールする日々なのですよ、それは本当。

前回の三日間はご報告の通り何もナッシングの泥濁り。今回は初日に馬鹿っ跳ねを3本見てやる気全開モード。二日目はそれを狙わず保険の魚を探しに下流部へ行き、全体を見てやるべきポイントとそうでない場所を選別しました。三日目に絞り込んだ場所に集中することにして、なんとかキャッチすることができた次第。と言っても現実は容易いものではなく、渋いアタリを何とか掛けることができたと言う感じで運が相当左右したように感じます。今年はこれでようやく渓流釣りに専念できます?

一度始めると止められないこの釣り。費やした時間に比例してキャッチした時の感動は増幅します。手が震え心が揺すられる世界、あなたも経験して見ませんか?いつかやって見たいでは、いつまで経っても釣れませんので、まずは行動を。

サクラマスの釣りはスティールヘッドやアトランティックサーモンと同じ。同じ川に1週間立ち続ける余裕がある人は、その1週間のサイクルのうちの何処かで出会うチャンスが来ます。それがものにできるかどうかだと私は思います。なので、地元にその環境がある人はチャンスがたくさんあります。
今回は東さんと一緒に行ったので、ファイトシーンの写真を撮ってもらいました。アタリは渋く、最初はウグイが来たかと思ったほど。その後グイグイと引っ張り、徐々にリールが悲鳴を上げるのです。
年に一度のご対面。ラインはレージコンパクトの360グレインポリリーダーはインターミディエイト10ft、ティペットは4号が50cm。緩めの流れでスイングの真ん中ぐらいでヌボ〜っと持っていく感じのシブシブ。
フライの結びは動きをよくするためにループノットにしています。フライは相変わらずD フックで巻いたダンケルド#6。ってか、バカの一つ覚え。掛かり所を見る限り、本当に喰いが渋いのが分かります。
そしてサクラマスを狙った後のイブニングは毎日渓流で癒されます。サイズはそこそこですが、狙ったポイントからは必ず魚が出てくるのが、東北の良いところ。
Hさんはアタリを二発貰いましたが、食いが渋く最初のローリングで外されちゃいました、残念無念。
彼が東京の大学へ出て来た時からの長い付き合いの釣り友達。同い年だから釣りキチ三平世代なんですな。フライフィッシングを中心に釣りはなんでも好きなのは一緒。毎晩酒を飲みながら昔話を楽しみましたヨ。そして私なんかとは比べ物にならないくらいキャスティングが上手だから、後ろから見て手本にするんです。
1尾の価値を二人は十分わかっているから、夜は大声あげて祝杯でした。次回は二人揃って『サクラサク』の報告できるように精進いたします。

遠征

私の釣り好きは幼少の頃に始まり現在に至る。最初は近所の沼や川での身近な釣りから始まり、自転車を乗るようになってからは東京から相模湖あたりまで。さらに遠くの世界を覗きたくて16歳の誕生日の日に原付免許を取得し、その夏には50ccで北海道へ釣りに出かけたのである。さらに翌年は北へ行ったからその反対の南へ行きたくなり、400CCで長崎まで下道で釣りへ行った大バカ者なのです。

そんな長距離移動というかロングドライブが好きな私ですが、今年も東北遠征の旅が始まりました。遠征と言うと聞こえが良いですが、修行と言った方が間違い無いでしょう。

今回はとりあえず川の様子がどのように変化したか見たかった三日間の旅。行く前から先日の大雨で駄目だと知っていても、水辺にいるだけで幸せな私なのです。今回も片道650キロの旅はノンストップでワンタンク(ガソリン)で秋田を満喫してきましたとさ。

3m増水後からここまで回復。ご覧の様に泥濁りにフライを投入。そして左岸のバンクは先日の雨で削られてしまっている塩梅。ウェーディングすると濁りで見えず、ドボンと深みにハマってしまう。おぉ、怖。
奥が本流で釣りたい川。手前がその支流。濁りのない方へ差して来そうですが、この川は水深があまりないんです。
濁りを避ける雑魚1匹。その雑魚からの反応も皆無。仕方ないか・・。
遡上魚が釣れなくともヤマメはいつでも元気。今年は数は釣れるけれどサイズが一回り小さいかも?
河川を見て回る日々。先だっての大雨は最大4m近くの増水だったので、そこら中に河川ゴミ回収の車とユンボが入っています。
ミルキーウォーターにダンケルドを投じて見る。これでも最終日の撮影なので濁りはかなりとれた方なんですが・・。週末以降は良いんだろうな、きっと。
そしてまた川を変えて支流でヤマメ釣り。
最終日に仲間と合流して情報交換。彼も私も、この釣りにドップリとハマった大バカものです。幸せは突然やって来るので、KEEP CAST. 信ずるものは、いつか救われます。