ハーディ150周年を祝うハーミットはその1/6

今更ですが、一週間前のご報告。

ハーディは1872年創業のフィッシングメーカーで今年150周年。今年から販売代理店になるC&Fさんと合同でそのお祝いとして『ハーディ150周年を祝う会』を先日ベースキャンプで行いました。ハーディ社は1872年にウイリアム・ハーディが銃の鍛冶屋を始めたのがその始まり。その弟ジェームス・ハーディと一緒に釣具を販売し始めたのが1874年だそうです。

私のお気に入りのハーディといえばマーキスシリーズかな。一番小さいモデルは持っていませんが、それ以外のサイズは大体持っています。特徴は甲高いクリック音で大物が掛かって走った時に、周囲にいる仲間に掛かった事を知らせる役目としてその音があるので、ランディングを手伝ってもらえたりするのです。今でも現役で使っている私のマーキスはもう40年近く使ってますが、どこも壊れる事がなくずっと現役。品質の良い品物は一生使えるので、多少高くてもその価値は間違いなくあるでしょう。

それにしても150年は凄いですな。その頃の日本は明治4年だそうで私の爺ちゃんでさえ生まれていません。その年の主だった記事を斜め読みすると、1972年3月1日に世界で最初の国立公園としてイエローストーン国立公園が指定され、1978年には世界遺産に登録されたそうな。僕らはそんな事も知らず知らずハーディと共に釣りをしていた事にちょっとビックリ。ハーディはこの150年という歴史の中で様々なリールが生み出されましたが、僕らファンがいる限り今後もウイリアムとジェームスの思いをのせて作り続けられるのでしょう。

ちなみにハーミットもそれなりに歳を重ねまして、実をいうと今年の4月10日を持って満25歳(25周年)、26年目へ突入です。私の釣具屋人生はすでに40年以上なので、業界の生き字引的扱いをされております(笑)。ハーミットは代替りする事はなさそうなので、あと何年続けられるかは私の健康次第って事になるかな。ま、少なくともあと10年は続けられるようにガンバリマス。

以下は150周年パーティの様子などなどです。お暇な方はご覧あれ。

水道橋BASECAMP
ハーミットからベースキャンプまでは歩いて5分ほど。水道橋駅北側で神田川沿いにあります。
水道橋BASECAMP内
コロナ禍という事を考えてお店のキャパいっぱいにせず、15名ほどに絞りました。それでもこの人数が集まるのはもう2年ぶり以上の事。皆さんの笑顔が見れてなんかホッとしましたヨ。
ハーディ150周年を祝う
料理はお任せで飲みながら食べながらハーディの話を交えながら最近の釣り談義。
ハーディリール
C&Fさんに今年取り扱うハーディリールを持ってきて頂き、皆さんの購買意欲をくすぐる作戦(笑)。ビンテージリールも良いですが、最近のラージアーバーの進化もかなり進んできた感じを受けます。
ハーディ フェザーウェイト
皆さんお待ちかねの150周年記念モデルである、LW(ライトウェイトシリーズ)はもう間も無く一部入荷する予定。写真はフェザーウェイト。ワインディングチェックに150Anvの刻印がされてました。昔も今もサイズの変更は無いので、古いスプールも合うそうな。
ULTRACLICK UCL Series
こちらも間も無く入荷する予定のウルトラクリックUCLです。ラージアーバーのクリックタイプリールで、今年はこのモデルが多分一番売れるような気がします。
Hardy priest
料理のメインはこの塩釜焼きのお肉。それを割るのに懐かしのハーディのプリーストを使用(笑)。本来はお魚を絞める為にぶん殴る真鍮の小さな棒です。
150周年
参加された皆様には150周年記念キャップと記念ピンバッチ、それと特別なカタログが皆様に配られました。
Edward Von Hofe Newyork 1932
私の手元にあるエドワード・ボンホフ1932年通販カタログによると当時のセントジョージは$19しかしません。といっても当時の月給がどれくらいか知らないので、かなり高級なリールだったのかなぁ。
Alan B. Vare
これは普通に皆さん知ってるかな?1980年後半から1990年代前半頃に売っていた結び方の本で、普通に販売していたので私にはビンテージ感はありません。
Hardy Zane Grey Big Game
ハーディ社はフライフィッシングのメーカーだと思っている方が多いと思いますが、当初はスピニングリールやベイトリールも作っていましたよ。このトローリングリールも前職場で売っていた記憶が。100万円くらいしてたかと思います。
ハーミット25周年
ハーミット創業25年。ハーディの歴史には到底及ばないけれど、今後も皆さんのお力になれるよう努力して参りますデス。あと何年続けられるかなぁ・・。

 

スピードスター新旧比べ

2020年モデルとしてウォーターワークス・ラムソン は今までの表示方法を全て改めたため、全品がマイナーあるいはフルモデルチェンジとなってしまい、総入れ替えで泣きが入っているハーミットでございます。メーカーさんの入れ替え保証なんてありませんから、ホント死にそうな支払いでゴザイマス。

さて、そんなウォーターワークス・ラムソンの中で私のお気に入りであるスピードスター(英語の意味は「スピード狂」) がフルモデルチェンジしました。なので手元にある旧タイプと新タイプの何が違うのかを比べてみました。

今までサイズは細かく6種類あったのですが、それを簡素化し4種類に。よってスピードスターという名前なのに小くて巻取りが決して早く無かったモデル1は廃止。7〜9番サイズが2サイズもいらないのでワンサイズにまとめられた、という感じです。

さて、それ以外ではどんなところが違うか、写真と共に紹介していきましょう。今回比べているのは旧タイプ1.5と新タイプのー3+です。

この二つを比べて分かるのですが、やっぱり明らかに肉抜きが進んでますよね。旧タイプの重量が111gに対し新タイプはなんと91.2gと、100グラムを切ってきました。なので上のグレードであるライトスピードよりも軽いのです。
スプールを外すと分かるのは、パッと見はリールの幅。前のモデルに比べるとやや横幅がある様に見えますが、実際のカタログ値は同じ幅22mm。ドラッグが入る芯のオレンジ部分が少しでも軽くするために段が入っている努力が伺えます。フットを支えるボディ部分も約30%ぐらい肉が削ぎ落とされていますね。
同じサイズでも高さが少し変わり、旧タイプ89mmに対して新タイプは83mmです。でもラインキャパシティは変わらないので、スプールが若干深溝になったのでしょう。リールサイズは小さくなったので、見た目は日本人好みのサイズです。もう一つの特徴は矢印の部分。パッと見た感じ肉抜きを忘れたみたいですが、実はこの部分はバランサーウェイトです。昔のリールには必ずハンドルの対極にブレ防止のオモリがありましたよね、あの役目をココがなしています。
リールフット部分も軽くするために単純な丸穴から強度計算された丸みを帯びた四角形になりました。ほんの数グラムの違いなのでしょうが、こうやって不要な部分から肉を抜くのですね。昨今のロッドの軽さに合わせた努力です。
スピードスターはアルマイトタイプ2加工で傷がつきにくくなっています。一番硬いアルマイトはラムソン ではハードアロックス加工ですが、現在は一番上のフォースシリーズのみ施されています。また今まで良くティペットやランニングラインが引っ掛かっていたドラッグノブですが、丸になったので、今までの様な挟み込みがなくなりました。
旧モデルのデザインも個性的で好きでしたが、2020モデルのフロントマスクは車のホイールを思わせるデザインで個人的には好きです。ポスシェのスピードスターが約3,200万円ですから、ラムソンのスピードスター は超安く感じます(そんな筈ないか・・)。
カラーはミッドナイト(ブルー)とエンバー(オレンジ)の二色展開。私は3と5をミッドナイト、7をエンバーを購入しました。これからの釣りで活躍する事を願ってます。

ティボーリールのメンテ

私のパジェロくんは8年が過ぎ現在17万キロ突破にて色々な部品が怪しくなってきました。なんとか25万キロくらいまで少しずつパーツを交換しつつ乗り続けたいと思っているこの頃。考えてみれば自分の心臓も50年以上も鼓動を打ち続けている訳だから、そろそろメンテが必要なんじゃないかと、考えてみたりもします(どんなメンテが必要なのでしょう?)。

話は変わり年月が経ったリールメンテのお話。写真を撮ってみたらフェイスブックで紹介するには写真が多いので、ブログにアップ。ティボーリールのメンテです。よく「ソルトリールはメンテしなくても大丈夫なんですよね?」と聞かれますが、そんなことはありません。メンテしないとやっぱり駄目になっちゃいますので、1〜2年に一度ぐらいはフルメンテする事をお勧めします。

今回出てくるリールは私のではありません。お客様からお預かりし、遠征のために急遽フルメンテが必要になったティボーのガルフストリームくん。症状はドラッグの固着とスプールリリースの不可です。

まずはドラッグの固着の原因は流水で流して綺麗にはしてあったようですが、その後リールを何年にも渡り回す事がなく、グリースが固まってしまいドラッグ板から離れなくなってました。なので、一旦完全分解して古いグリースを除去し、新たに全てのグリース類を差す作業が必要です。

スプールリリースの不可は厄介で、今まで経験した事がない固着。リールは回るのにスプールが外れないその原因はセンターシャフト。海水の侵入でセンターシャフトのどこかが錆びてしまい、接触部分が錆により膨らみ固着していると推測。

このスプールが外れない現象は初めてなので、バラし方を変えてメインシャフトを先に外し、ドラッグ板とスプールとセンターシャフトが付いた状態で、反対側からラバーハンマーで叩いて取るという手法。

バラした結果、やっぱりメインシャフトの一番下にあるベアリング付近が少し錆びてました。そこが膨らみ引っ掛かり抜けなくなっていたようです。まずは軽く2000番の耐水ペーパーで磨き、その後ピカールで磨いて表面のある程度滑らかに。ベアリングはかなりゴロゴロ言っていたので交換した方が良さそうでしたが、これは釣りへ行かない時にメインシャフトと共に大工事するという事で、そのままリールに収めました。

さて、その様子の後にどこへ油を差したかは以下の通り。ティボーリールに必要な工具はベアリング交換などの作業がない限り、どなたでも出来ますので自分でやってみてください。ただし細かなパーツは無くさないようにご注意を。

みなさんリールはメンテしてますか? おっと、自分のリールがまだだった(笑)

*ハーミットでご購入いただいたティボーリールのメンテナンスは責任を持ってお受けいたしますが、費用と時間が掛かりますのでご相談ください。また、分解後にパーツ交換が必要なケースはパーツの取り寄せになるため、かなりのお時間を要します。あるいは古いモデルはパーツは入手不可にてメンテできない場合があります。

他店でお買い上げしたものや中古品購入のメンテやパーツ取り寄せは行なっておりません。その理由は古いモデルは取り寄せパーツが合わないケースがあり、メーカーが合うと判断したパーツも合わないケースがあります。その場合返品できないのでその費用を持っていただけない等のトラブルを受けた事が数件あるため、残念ながらお受けしておりません。

メインシャフトまで外すのは久しぶりの事。ティボーはほぼ完全分解できる、珍しいリール。なので、比較的どなたでもリールメンテできます。バラバラにしたらパーツクリーナーで全ての汚れを落とし、オイルとグリースの入れ直しです。
メインシャフトはボディの反対側からプラスネジ3本で固定。今回の錆びたのはこの根元付近。金属同士が触れ合う場所が錆びやすいので、ここにはオールパーパスグリースを差して、シャフト全体には潤滑オイルを差します。
ドラッグの要であるコルク版の上には黒い色をしたグラファイトルーブを塗ります。粘度の高いグリースはグラファイトを混ぜたもので、摩擦を大きくして幅広い粘りのあるドラッグの効果を生みます。塗りすぎると粘りすぎてむしろドラッグが効き過ぎてしまうのでご注意。
ドラッグ番には直接手でヌリヌリするのが私のやり方。満遍なく塗り込み、コルク板にも染み込みます。
通常のメンテで唯一変わった工具が必要とするならば、このCクリップ外し。メインシャフトからドラッグ番が外れないようにCクリップで止まっています。根元付近にあり通常はグラファイトグリースに埋もれて見えません。
クラッチの構造を見るとABUアンバサダーを思い出しますが、ビリーペイトと違い銅板の抑えがありません。その代わり左右反転がT字のクラッチの向きとバネの置き換えで簡単にできます。クラッチバネは小さくなくなりやすいパーツなので、注意が必要。
スプール側にあるセンターシャフト内スプリングはオールパーパスグリースで油まみれにしておきましょう。そうすれば錆びません。この中は触ることがほとんどありません。
ドラッグの調整クリックであるボール部分にはオールパーパスグリースを塗って、金属の減り留めと錆び止めをしましょう。一度パーツクリーナーで全て洗い流した後に、爪楊枝で塗れば簡単。
ドラッグノブを支える小さなネジは一円玉で止める事をお勧めします。そうする事でネジに傷がつきにくくなります。また、力を入れすぎて止めると一円玉が変形しますので、それよりも緩い力で止めましょう。このパーツを何度も無くした事がある人は、市販のネジロック(接着材みたいなもの)で止めましょう。
ハンドル部分にはCRC556などの潤滑剤を塗りフルメンテ完成。これでまた大物とのやりとりに活躍してくれます。あなたはティボーの反転音を聞いた事がありますか?なければ相模湾に出てメーターオーバーのシイラを掛けてください。私が言う「上品な音色」が聞こえてくるはずです。